第47回 「すべての疲労は脳が原因 著者:梶本修身」を読んで

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昨日、札幌に来た。愛知学院大学歯学部歯学会・北海道支部会学術講演会の講師で招聘されたからである。 今回の講演テーマは、「歯科再生医療の現状と今後の展望」であり、具体的には、「歯髄幹細胞が再生医療にどのように応用されようとしているのか」を概説するために、「歯髄組織の組織学と機能、歯髄幹細胞の基礎的知識、再生医学の概念、歯髄幹細胞の疾患への効果および同種移植の可能性」についてわかりやすく(のつもりです)話をした。今から、セントレア中部国際空港に帰るところである。 新千歳空港のJ社のSラウンジのWCの手洗い場にダイソン製が設置してあり、画期的であったので紹介したい。写真を見ていただくと、飛行機のウイングのように左右に伸びています。向かって、右からは水が出て、左のウイングから手を乾燥させるための温風が出てくる。 「歯髄細胞を用いた再生医療」も先生方の手元に届ける時には、先生方に「これば便利!」と思われるような治療システムが必要だなと感じた。
「KAROSHI」という言葉が英語圏で使われるぐらい日本は「疲労大国」と言われ、半年以上疲労が続いて悩んでいる人も多いと聞く。しかし、疲労の原因についての知識はほとんどない。そんな時に、本屋さんで見つけたのが、今回紹介する「すべての疲労は脳が原因」。実際に読んでみると、これは知っておいた方が良いなと思う点が多いことから、このコラムで紹介しようと思いついた。 誌面の都合上、私が気になった点のみをピックアップしますので、興味を持たれた方は購入していただき、全文を読まれることをお勧めする。すでに多くの先生がご存知であるであろうと想像はしますが、その点はご容赦ください。
1.科学的な根拠のない話
「運動でストレスを発散すると疲れもすっきりとれる」「ニンニク料理、うなぎ、焼肉栄養ドリンクで疲れは軽減する」「休日に温泉地でたっぷりお風呂に入って、疲れをとる」「残業の疲れは楽しくお酒を飲めばリセットできる」これらは、疲労を悪化させるリスクもあるという。
2.疲労とは?
疲労が起きる原因の一つとして、体内で活性酸素が過剰に発生すると酸化ストレスが発生し、細胞がこの酸化ストレスにさらされると、細胞の機能が維持できなくなって疲労が起きる。
3.体の中で最も疲れやすいのは「脳の自律神経の中枢」
運動した時の筋肉ではないようである。その理由を以下に述べる。 長時間のジョギングをすると、数秒後に心拍数が上がり、呼吸が速くなり、体温を抑えるために発汗する。これを制御しているのが脳の自律神経の中枢と呼ばれる「視床下部や前帯状回」で、運動が激しくなると、ここでの処理が増加して脳の細胞で活性酸素が発生し、酸化ストレスの状態に細胞がさらされて細胞がさびつき、本来の自律神経の機能が果たせなくなり、脳が「疲労」し、「体が疲れた」という信号を眼窩前頭野に送り、人は「疲労感」として、自覚する。 したがって、「疲労」と「疲労感」は異なる部位で起きている。
4.過労死をするのは「人間」だけ
疲労感は生体アラームの1つと考えられる。人間の前頭野がほかの動物と比較して驚くほど発達しているので、「仕事への意欲」や「仕事の達成感」などで、中枢で起こった「疲労」を隠せてしまうようだ。 一つの例として、前頭野が小さいライオンは、獲物を追いかける時にどれだけ空腹であっても疲労感を眼窩前頭野で自覚したらアラームに従って追いかけるのを止めてしまう。人間だけが疲労感を隠せてしまうので、無理をしてさらに働いて、結果的に過労死するという。進化が過労死の原因と考えると何とも言えない。 この本の著者らの研究では、日ごろから仕事にやりがいや達成感があるときや昇進や報酬が期待できて楽しく仕事しているときほど、過労死のリスクが高いことも分かっている。なぜなら、これらの時に「疲労感なき疲労」が蓄積されやすいからだ。よく聞く言葉に「ランナーズ・ハイ」がある。これは、長距離を走るトレーニングを続けていると、あるポイントを超えると、それまでのつらさが消え高揚感に代わる現象である。高揚感を感じる時には、脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィンやカンナビノイドが分泌されて疲労感や痛みを消してしまい多幸感や快感に似た感覚が引き起こされる。したがって、疲労感がマスキングされたまま激しい運動を続けていると脳にも心臓にも疲労が蓄積して、大変危険な状態となる。
5.「飽きた」は疲労の最初のサイン
「飽きた」は脳が発する最初の疲労のアラームなので、飽きたら休息をとり、気分転換をはかることが良い。例えば、高速道路の運転時に「飽きた」と感じたらすぐにサービスエリアで休息した方が良い。 「飽きた、疲れる、眠くなる」は脳疲労の3大サインである。
6.終業後のスポーツクラブは疲労が蓄積される
7.土日の早朝ゴルフは危険
仕事で脳に疲労がたまっているところに、運動でさらに自律神経に疲労を溜めたら疲れもストレスも倍増する。 運動することで、「エンドルフィンやカンナビノイド」が分泌されて「疲労感」が隠されているので、休息をとらない限り、脳疲労はリセットされないままとなる。前日の夜遅くまで残業して疲れきった状態での休日の早朝ゴルフは、危険だ。 朝、ゴルフ場に向かい、ボールがフェアウェイを外れて右左に走りながらグリーンに上がり、息を止めてパターをするとき心拍と血圧は乱れ、自律神経の疲労はピークに達し、破たんし、心筋梗塞や脳出血が起きることが多い。
8.疲労の原因物質とは?
乳酸は疲労物質では無いことがわかってきた。疲労の原因は「活性酸素」である。 活性酸素とは、「呼吸で取り入れた酸素が体内で変化して、ほかの物質を酸化させる力が強くなった酸素の総称」を言う。活性酸素には、「スーパーオキサイド」「ヒドロキシラジカル」「過酸化水素」「一重項酸素」の4種類がある。 この活性酸素が体を作る細胞や遺伝子などを酸化させて老化・がんおよび生活習慣病などの引き金になっている。
9.体内にある活性酸素の作用を抑制する装置について
呼吸をしている限り活性酸素の発生は止められないので「抗酸化酵素」が活性酸素による酸化をブロックしている。 この抗酸化酵素には「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンぺルオキシダーゼ」などがある。この抗酸化酵素によって活性酸素が除去されるが、加齢とともに、抗酸化酵素の働きは低下してくる。 一方で、仕事や運動などの疲れを感じる活動で活性酸素が大量に発生すると細胞や遺伝子が傷つけられる。
10.ミトコンドリアが活性酸素の攻撃を受けやすい
ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場なので、ミトコンドリアが傷つくと細胞はエネルギー不足になり疲れやすくなる。 最も影響を受けるのは、筋肉や自律神経の細胞である。
11.サングラスで紫外線による疲労を最小限にとどめる
紫外線をたくさん浴びると活性酸素を大量に発生させて疲れのもとになる。 海に出かけたときに、泳がないで太陽の光を浴びるだけでもぐったり疲れることがあるのは、紫外線が原因。目から紫外線が入ると、角膜で炎症反応が起きて疲労が蓄積されるからである。マラソンランナーがサングラスをしているのは、紫外線による疲れを防止している目的もある。
12.日常的な疲労の原因はいびきにあった
呼吸はかなりの運動負荷になっている。特に、いびきをかいている状態では、気道が狭小化しているので肺に空気を入れるにはさらにエネルギー負荷がかかることになる。 つまり、十分な空気を吸うことができず、低酸素呼吸状態に陥り、自律神経は心拍を速くし、血圧を上げて酸素供給量を維持しようとする。その結果、もっとも睡眠中に休息が必要な自律神経を睡眠中に酷使することになり、さらに疲労を蓄積させることになる。
13.疲労回復成分「イミダペプチド」
この成分は鳥の胸肉、マグロやカツオに含まれている。一日あたり200㎎のイミダペプチドを取ると抗疲労効果に有効であり、鳥の胸肉を100g食べるのが良い。サプリであれば「イミダペプチド確証マーク」がついていれば品質には間違いがない。
14.疲労回復成分「クエン酸」
クエン酸はレモン、グレープフルーツ、梅干し、酢など「酸っぱさ」を覚える酸味を持つ食品に豊富に含まれている。クエン酸はミトコンドリアでのエネルギーを生む反応に重要な役割を果たしている。 細胞が酸化ストレスでエネルギー不足になると、クエン酸を増やして、クエン酸回路を活性化させるとエネルギーが産出されて疲労が軽減する。最も効果的な抗疲労法は「イミダペプチドとクエン酸を適量、組み合わせて摂取すること」。
15.「ゆらぎ」のある生活で脳疲労は軽減する
この本の第5章に詳細が書かれています。
16.脳疲労を軽減するためのワーキングメモリを鍛える
この本の第6章に詳細が書かれています。 9月になり、少しだけ過ごしやすくなってきたので、これから年末にかけて仕事の効率を高める時でもある。 2016年も残り3ヶ月足らず、悔いの残らない年にしたいものであるが、みなさん、「疲労には注意」しましょう。
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