新型コロナウイルスパンデミック時の歯科治療飛沫の放出制御に関する新たな知見

新型コロナウイルスパンデミック時の歯科治療飛沫の放出制御に関する新たな知見

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ロンドン(英国):通常業務に復帰する際の歯科医療従事者にとっての最大の課題の一つとして、一般的に行われる歯科処置に関連して放出される飛沫を介した新型コロナウイルス感染の固有のリスクが挙げられます。インペリアル・カレッジ・ロンドン、キングス・カレッジ・ロンドン、ガイズ・アンド・セント・トーマスNHS財団信託の研究者による最近の研究では、特定のパラメータを制御する事により現在の危機の中で飛沫の重要な特性を変化させることができると実証されました。

歯科においては回転機器や高周波機器を冷却する為、高速の空気や水の流れを利用することが不可欠です。歯科医院ではいくつかの安全対策が講じられていますが、飛沫によって診療スペースが汚染される可能性が高く、スタッフと患者を保護する為、予約と予約の間に休息時間を設ける必要があります。この制限は歯科医院のオーナーにとって金銭的に困難なものであり、更には患者の歯科治療へのアクセスや提供できる治療の内容を制限することにもなります。

歯科治療飛沫の研究は新規ではありませんが、新型コロナウイルスの感染の可能性に関する重要な情報は十分に文書化されていません。これには液滴サイズの範囲、放出軌道、および液滴寿命に関する情報が含まれています。

デンタル・トリビューン・インターナショナルは、ジャーナル・オブ・デンタル・リサーチの編集長であるニコラス・ヤクボビッチ氏に連絡を取り、研究結果がパンデミック時の歯科診療をどのようにサポートするかを尋ねました。彼は「歯科用器具がエアロゾルや飛散物を発生させることはよく知られていますが、これが感染管理上の大きな問題となっています。この研究は、回転式歯科用器具から液体の飛沫がどのように飛散するかについて、重要な新情報を提供しています。」と返答しました。

「更に著者らは、飛沫の分布を緩和するためのアプローチを評価しました。これは、エアロゾル発生手順を安全に実施するための最適なアプローチを特定する上で歯科診療に役立つ可能性があります」と彼は付け加えています。

研究者らは、高速回転装置を用いて製造された歯科飛沫の特性を高速回転装置を用いて研究し、噴霧化と高速液滴の放出に繋がるメカニズムを明らかにしています。調査された変数には、回転速度、歯と歯の接触、冷却剤のプレミストなどが含まれています。研究チームは、これらの基本的なメカニズムを理解することにより手術室の設定に関係なく、飛沫の軽減を改善するための一般化可能な知見を得る可能性があることを強調しました。

研究チームは、バーに接触する前に冷却水と空気を混合するプレミストを排除する事が、飛沫を減らすために非常に有益であることを発見しました。しかし放射状の噴霧はまだ発生する可能性があり、バーと歯の接触によって変化します。更に、80,000~100,000rpmの回転数を下げると、エアロゾルの形成が抑制されることが示されました。これは切削効率を低下させる結果となりましたが、エナメル質、象牙質および一部の修復材料の加工は歯髄損傷を避けるために十分に冷却すれば達成することができました。

「我々は感染管理のリスクをより効果的に管理し、今回のパンデミックだけでなく将来的にはより「平常時」にも安全且つ効率的に業務を遂行することができるよう期待しています。」

研究の著者らはこれらの対策により、多くの日常的な歯科処置を短期的に行うことが可能になる可能性があり、手術環境を大きく変えることなく実現できる可能性があると結論付けました。しかし彼らはまた、個々のリスク評価、例えば局所感染率を考慮に入れることは常に意思決定プロセスの指針としなければならないことも強調しています。

ヤクボビッチ氏によると、研究実験は管理された条件下でのみ行われた為、緩和処置がエアロゾルや飛散に与える影響についてより多くの研究が必要であるといいます。研究の著者らは、個々の臨床医による歯科器具の配置がエアロゾルの分布に大きく影響するため、歯科処置からの自然な飛沫をモデル化することが難しいことを発見した、と同氏は述べています。

新型コロナウイルスの大流行により、歯科医療における感染制御についての理解を深める必要性が強調されていますが、個人用保護具の強化、休眠時間の短縮、患者の事前スクリーニングなどの措置は、緊急の歯科医療を提供する能力を維持しながら歯科医療従事者と患者の安全を維持する上で非常に効果的に機能しているようです、とヤクボビッチ氏は指摘しています。

「このような研究から得られた新しい情報により、我々はうまくいけば感染制御のリスクをより効果的に管理し、このパンデミックだけでなく将来的にはより多くの「通常」の時代にも安全且つ効率的に仕事をする専門職を維持することができるようになるだろう」と彼は締めくくっています。

「回転式歯科用器具からの霧化のメカニズムとその緩和」と題した本研究は、2020年12月16日にジャーナル・オブ・デンタル・リサーチ誌のオンライン版に掲載され、号外掲載に先駆けて発表されました。

記事提供

© Dental Tribune

ライター

Franziska Beier, Dental Tribune International

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