新型コロナウイルス:次世代の歯科医師・歯科衛生士の障害となる?

新型コロナウイルス:次世代の歯科医師・歯科衛生士の障害となる?

リッチモンド(米国バージニア州):現在進行中の新型コロナウイルスパンデミックは、世界中に不安を生み出し続けています。アメリカのバージニア・コモンウェルス大学歯学部に在籍する歯科・歯科衛生士の学生を対象に、卒業後のキャリアプランがパンデミックの影響を受けているかどうかを調査したところ、過半数以上の学生がパンデミックの影響を受けていると回答しています。また大多数の学生が、現在の状況は歯科専門職の安全性に対する不安と懸念を引き起こしていると述べています。

新型コロナウイルスのパンデミックとそれに伴う歯科医療の混乱は、歯科教育とトレーニングに大きな影響を与えました。教室での指導の代わりとして、学術的な歯科機関はオンライン形式に移行し一時的に診療所を閉鎖しました。Dental Tribune International(DTI)が報じた通り、これにより歯科学生の間では重要なスキルが不足しているのではないかとの懸念が生じています。また、パンデミック時に歯科医療を提供する為の歯科学生の準備が整っているかどうかも懸念されています。

オンライン調査は、人口統計学、予想される教育負債、卒業後のキャリアプラン、臨床実習やレジデンシーに入る準備ができているか、学生のウェルネス、パンデミックの間に学生のキャリアプランがどのように変化したかを網羅した81項目の質問から構成されています。調査は2020年の4月末から5月中旬にかけて実施され、同大学の歯科・歯科衛生士の学生436人に電子メールを送信しました。

アンケートには252名の学生が回答しました。そのうち、10%以上の学生が、新型コロナウイルスの発生後、将来の歯科診療の計画が変わったと報告しています。研究者らは、キャリアプランを変更する意思を表明した学生は、キャリア変更を報告しなかった学生に比べ、ストレスと不安のスコアが高く、レジリエンスのスコアが低いことを明らかにしました。

歯科は最近、米国で最も働きがいのある仕事10選に選ばれましたが、調査参加者は、パンデミックの影響で雇用機会が限られている事や歯科医師の長期的な安定性について懸念を表明しました。また、臨床教育や免許試験の中断、診療所閉鎖中に診療所のオーナーとコミュニケーションが取れないことが不安の理由として挙げられました。しかしこの調査が行われた当時、米国では定期的に診療を行っている歯科医院はわずか3%に過ぎなかったことを考えると、最後の点は驚くに値しないと研究の著者は指摘しています。

「新型コロナウイルスのパンデミックがまだ進行中であることを考えると、歯科および歯科衛生士の学生のキャリアプラン、ひいては将来の歯科医療の提供に及ぼす長期的な影響については、現在のところ不明である。」-バージニア・コモンウェルス大学、ディナ・タマル・ガルシア博士より

卒業後の進路変更を報告したアンケートでは、卒業後に希望する就職先が確保できず、特にそれは最終学年の歯科・歯科衛生士の学生(4割)に多く見られました。3年生は「パンデミックの影響で、歯学部も歯科医院も採用しないのではないかと心配していた」と話していました。「就職先が見つからないかもしれないし、歯科診療を続けるためにはレジデントプログラムを見つける必要があるかもしれません。学生ローンの借金をさらに背負うことになるでしょう。」と彼女は話しています。

他の学生は、歯科医院の患者数が減少した結果、歯学部のローンを返済できるかどうかを心配していました。「最大の懸念は、患者数の減少、治療費の増加、歯科医師の雇用の減少です」と1年生の男子学生は話しています。

また、歯科医師の安定性に関する全体的な不安も報告されました。ある1年生は、「歯科医師は雇用の安定性が高いと信じていたが、長期に渡って廃業しなければならない理由があるとは思っていなかった」と話しています。「新型コロナウイルスの発生が落ち着いた時に、将来の『普通』がどうなるのかわからないことは、行先を少し不安にさせ、自分の将来の計画が思っている程安全なのか、もっとやるべきことがあるのかと疑問を抱かせています」と明かしました。

DTIは、この研究の主著者であるディナ・タマル・ガルシア博士(同大学健康行動・政策学部助教授)に連絡を取り、歯科・歯科衛生士の学生が卒業後の計画を変更することで、将来的に歯科医療の提供に悪影響を及ぼす可能性があるかどうかを尋ねました。彼女は、「新型コロナウイルスのパンデミックがまだ進行中であることを考えると、歯科および歯科衛生士の学生のキャリアプラン、ひいては将来の歯科医療の提供に及ぼす長期的な影響は現在のところわかりません。今回のパンデミックのようなキャリアショック的な出来事は、長期的なものと短期的なものではキャリアに与える影響が異なります。」と答えています。

パンデミックは不平等をより顕著にする

また、人種的にマイノリティの学生(黒人31%、ラテン系19%)は、白人学生(7%)よりもキャリアプランの変更を報告する可能性が高く、不利な結果となりました。研究の著者らはこの結果を踏まえ、「教育における根底にある不平等と、少数民族の学生が経験するより広範な社会政治的文脈を反映している可能性がある」と述べています。

少数派出身の歯科医師や歯科衛生士の数が減少すると、十分なサービスを受けていない地域社会での歯科医療の提供に悪影響を及ぼす可能性があります。

マイノリティの学生がキャリアプランを変更する場合にはどのように対処し、防ぐことができるかという質問に対してガルシア氏は、「新型コロナウイルスと人種的不正の二大流行は、先住民や有色人種のコミュニティの間で長年続いてきた人種的トラウマ(人種に基づくストレスの一形態)をさらに増幅させました。教育機関には、学生の指導や研修、教員の育成、カリキュラムの開発、改訂、評価など、日常業務のあらゆる側面において人種的トラウマに関する情報と回復力を促進する実践を統合し、学生を支援する責任があります。」と述べました。

彼女は続けてこう述べました。「多様で弾力性のある歯科労働力を育成するというコミットメントには、歯学前から教育の連続体に沿ったパスウェイ、採用、維持プログラムへの意図的且つ持続的な投資も含まれています。」

積極的になるべき時がきた

研究の著者は、この困難な時期に歯科および歯科衛生士の学生をサポートするために実施すべき特定の対策を強調しています。レジリエンスの実践とウェルネスの介入を取り入れることに加え、カウンセリングサービスは学生のニーズを理解する上で大きな助けとなると同時に、「歯科学生のメンタルヘルスのニーズにより敏感で受容的な環境を作ること」が挙げられています。

ガルシア氏は、歯学部は将来の破壊的な出来事とその学生への影響に対応するための準備ができている学術研修機関と歯科職場を作るために積極的でなければならないと付け加えました。「これは、学生のウェルネスプログラムやイニシアチブが単なる追加やオプションのリソースではなく、トレーニングカリキュラムの中に完全に統合されているような機関変革の機会を提供しています」と彼女は述べています。

結果として未来の方が良いかもしれない

研究者らは、調査の結果かなりマイナスイメージを示したが、調査が行われた頃とは状況が大きく変化しており、例として最近の研究では、米国の歯科医師や患者の新型コロナウイルスへの感染率が低いことが示されていると強調しています。世界的な危機は現在も続いており、今後も学生のキャリア志向がどのように変化していくのか、縦断的な評価を行っていく必要があります。

「新型コロナウイルスのパンデミックが歯科および歯科衛生学生のキャリアプランに与える影響は、将来の歯科労働力に悪影響を及ぼす可能性があります。」と、国際歯科研究協会のプレスリリースでJDR臨床・トランスレーショナルリサーチ編集長ジョセリン・S・フィーネ教授は述べています。「私たちは、公衆衛生上の危機が長期化したり予測されていなかった場合の歯科医療従事者への短期的・長期的な影響についての理解が不足しています。これらの問題に適切に対処できるよう、情報を提供するためにはより多くの研究が必要です」と彼女は付け加えました。

「新型コロナウイルスと歯科・歯科衛生士学生のキャリアプラン」と題された本研究は、JDR臨床・トランスレーショナルリサーチ誌の2021年1月6日号に掲載されました。

記事提供

© Dental Tribune

ライター

Franziska Beier, Dental Tribune International

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