インタビュー:歯科医療における商業主義と過剰治療の増加

インタビュー:歯科医療における商業主義と過剰治療の増加

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過剰治療とはその言葉が示すように、不正行為や経営陣からの圧力、金銭的な利益など、様々な理由で患者に提供される過剰または不必要な治療のことをいいます。最近のインタビュー内でデンタルトリビューンインターナショナルは、公衆衛生歯科学の専門家であり、シドニー大学の上級講師であるアレクサンダーC.L.ホールデン博士と上記の内容について議論する機会を得ました。ホールデン氏は、オーストラリアの民間歯科医療における過剰治療を調査した研究を共同執筆しました。ホールデン博士は、歯科専門家の中で商業主義を知らない人はおらず、利益を追求することで必要以上の歯科治療を行うことが多いと言及しています。

[ホールデン博士は何故このテーマに興味を持つようになったのでしょうか、また研究で取り上げたいと思った主な論点は何だったのでしょうか?]

-私が英国で新たに資格を取得した際、自身は専門的な文化が全て間違っている診療所で働いていました。臨床医は皆、財務的な目標や活動的な目標を達成する事に集中するよう、診療所の経営陣から圧力をかけられていました。診療所で長くは働けませんでしたがその経験は私の心に強く残り、それ以来私のキャリアの方向性を形成してきました。学術的なキャリアに移行後、商業的な圧力が臨床医の行動にどのような影響を与えるかという問題の調査に至りましたが、これは以前から興味のあった分野です。-

[調査結果に基づいて、この研究に参加した歯科医療従事者はどのような要因で過大治療に従事するようになったのでしょうか?]

-参加者の中で過大治療に従事したと報告した者はおらず、同僚の診療でこの現象によく遭遇したと報告していました。一部の参加者は、より大きな金銭的利益と利益成長の追求が同僚の行動に大きな影響を与えていると感じていると示唆していました。治療を「売り込む」という文化や、歯科医師の受け入れ率を高める方法を教えることを目的としたコースの普及もまた、彼らの専門的な行動に影響を与えていました。

参加者からは、より多くの治療を売り込むために積極的に治療を探している同僚がいることに気づいたとの報告もありました。更には、患者が頼んでもいない美容医療を受けるよう提案する事で、患者の為に追加のニーズやウォンツを生み出そうとした事もありました。-

[あなたの研究では、歯科医療におけるプロフェッショナリズムと商業主義との関連性について話しています。歯科の商業化がプロフェッショナリズムにどのような影響を与えるのか、詳しく説明していただけますか?]

-歯科医療における商業主義の高まりは、必ずしも社会の中で孤立した現象ではないことを認識することが重要であろうと思います。それにもかかわらず臨床医は、一般的に治療医と同じ知識と技術を持たず、自分の状態が把握できない脆弱な患者を扱うため、医療の場と歯科は特別な地位を占めています。-

「歯科医療における商業主義の高まりは、必ずしも社会的に孤立した現象ではない」

-歯科医師と患者の関係は、専門家としての義務を損なうような影響に対して耐性を持つ必要があり、歯科医師は金銭的な利益よりも患者の利益を優先する必要があります。私たちが他の商品やサービスを購入する際には、取引相手には公正な価格を提示したり、購入について十分な情報に基づいた選択ができるようにする義務がないことを知っています。しかし歯科は違います。歯科医師と患者の関係という、熟練した人たちのプロ集団であるために必要不可欠な特別な性質を守るために、専門職は頑健でなければなりません。-

[その場合、過剰な扱いはプロ意識を害すると思いますか?]

-絶対にそうであると思います。歯科医師は国民の信頼に大きく依存しており、過大な治療が証明されたり疑われたりすると、歯科医師という職業全体が汚されてしまいます。私たちは、歯科医療で発生している過剰治療から国民を守るためにはどうすれば良いかについて、真摯で成熟した会話を交わすべきです。現在、診断に関するデータが不足しているだけでなく、リンクされたデータシステムも不足しているため、過大治療がどれほど重要な問題であるかを全体的に理解することができません。私たちの研究が提供するのは、問題の本質を理解することです。-

「歯科医は国民の信頼に大きく依存しており、過大な治療が証明されたり疑われたりすると歯科医という職業全体が汚されてしまう」

[歯科医療の商業化は、どのようにして患者が歯科医療に辿り着くことができるのでしょうか?]

-歯科医療の商業化は、競争を強化することで患者に大きな選択肢を提供し、専門職の自主規制の強化を促す可能性があるります。競争の激しい市場では、非倫理的な行動は同僚や一般の人々の目に触れるようになります。商業化の増加は、競争による選択肢の拡大と低コスト化という表面的な約束を一般の人々に提供するかもしれませんが、この利益は患者が「買い手に気をつけろ」という態度をとる必要がない歯科医師と患者の関係を維持することによってのみ実現することができます。-

編集後記:「オーストラリアの民間歯科医院における倫理的ジレンマとしての過剰治療。定性的調査」と題するこの研究は、2020年11月1日に地域歯科医療と口腔疫学誌のオンライン版に掲載されました。

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ライター

Iveta Ramonaite, Dental Tribune International

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