【これだけは押さえておきたい】子どもの歯並びに関するきほんのき

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歯科衛生士コラム

 子どもの成長は個人差が大きいもの。特に3歳くらいまでの間は一生の中で一番成長が著しく、個人差も現れやすいです。子どもを育てているお母さんは、自分の子の成長が正しいのか、他の子より早いのか遅いのか気にされる方も少なくありません。そのため小児歯科でなくても、お母さんが患者として来院した時に子どもの歯について聞かれることがあります。
今回は子どもの歯列不正について、歯科衛生士が最低限把握しておくと良い内容について解説します。

【これだけは押さえておきたい】子どもの歯並びに関するきほんのき

1.子どもの歯科矯正の種類
2.子どもの歯並びが悪くなる原因

1.子どもの歯科矯正の種類

 子どもの歯科矯正は、始める時期によって大きく2つに分けられます。


第一期治療:永久歯が生えそろう前に行う

 第一期治療の目的は、歯並びの基本となる顎骨の成長を整えることです。永久歯が生えそろう前に行うため、6〜12歳ごろに行います。すでにある歯を動かして整える一般的な歯科矯正と違って、第一期治療では今後生えてくる歯が正しい位置から生えてくるように顎骨を整えます。具体的には歯の萌出スペースが足りないことで叢生が予想されたら、顎骨を広げることで萌出スペースを確保します。

 第一期治療で主に使われる矯正装置には以下のようなものがあります。

  • 拡大床(プレート)
  • 急速拡大装置
  • マウスピース

 拡大床は可撤式装置で、装置の中央にあるスクリューを回して装着します。そのため食事に影響が出にくく清潔も保ちやすいですが、本人や保護者の協力度が矯正効果に反映されます。
 それに対して急速拡大装置は固定式であるため、本人や保護者の協力度に関係無く矯正効果が得られます。ゆえに矯正期間も短いですが、違和感を感じやすかったり発音や食事に影響が出やすかったりといったデメリットもあります。

 第一期治療の矯正装置としてマウスピースもあります。大人のマウスピース矯正装置として有名なインビザラインは、以前まで第二期治療から使用が可能でした。しかし最近では第一期治療から使用できる「インビザライン・ ファースト」が販売され、導入している歯科医院も少なくありません。インビザラインのような柔らかいマウスピース矯正装置であれば、遊び盛りのお子さんでも安心です。もちろん見た目も良いので嫌がらずに付けてくれることも多いでしょう。

 なお第一期治療を行なったことで、将来必ず綺麗な歯列になるとは限りません。ただ第一期治療を行うことで、将来的に歯科矯正が必要になっても短期間で済んだり抜歯しなくて済んだりといったメリットも多くあります。


第二期治療:永久歯が生えそろったら行う

 第二期治療の目的は、すでに起こっている不正歯列を整えることです。つまり一般的な成人の歯科矯正と同じで、すでに生えている歯を動かし歯並びを整えていきます。第一期治療で土台を作り、第二期治療で仕上げを行なっていきますが、来院時の年齢や顎骨の状態によっては第二期治療のみ行うことも少なくありません。

 第二期治療で使われる矯正装置には主に以下のようなものがあります。

  • マルチブラケット装置
  • マウスピース

 マルチブラケット装置は固定式、マウスピースは可撤式です。拡大床などと同様、固定式だと矯正効果を得やすいですが、違和感や汚れが溜まりやすいなどといったデメリットもあります。それに対して可撤式は管理しやすく清潔も保ちやすいですが、矯正効果は本人の頑張り次第となります。なおマルチブラケット装置は見た目が悪いと言われがちですが、白や透明のブラケット・ワイヤーを使えばそれほど目立ちません。

2.子どもの歯並びが悪くなる原因

 子どもの歯列不正には、叢生や上顎前突、反対咬合などがありますが、その原因は遺伝要因あるいは日頃の癖・生活習慣などです。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 指しゃぶり・おしゃぶり
  • 口呼吸
  • うつ伏せ寝
  • 頬杖
  • 舌・口唇癖
  • 柔らかい離乳食ばかり与えること
  • 食事中の姿勢

 指しゃぶりやおしゃぶりは、開咬や上顎前突などの原因となります。上下前歯の間に常に指があることで前歯が上下方向へ押され、開咬が起こります。また指の腹やおしゃぶりにより、上の前歯の口蓋側から唇側方向へ力がかかり続け、上顎前突の起こることがあります。

 口呼吸あるいは口をポカンと開けている癖があると、舌が低位になります。これにより気道が狭くなると、気道を確保するため無意識に下顎を前に出すようになります。その他口腔周囲筋の影響により下顎前突や開咬を招く可能性があります。

 頬杖などにより片方の顎に力がかかり続けることで、顎の発達に左右差の生じることもあります。これは頬杖だけでなく、右側あるいは左側でばかり噛むといった癖も同様です。右側ばかりで噛む癖がある場合、左側で噛むと痛いなど何かしら気になることがあり無意識に左側を避けていることもあります。

 舌で歯を押す癖や唇を噛む癖も、歯に不要な力がかかり続けます。頻回でなければ問題ありませんが、癖になっていると少しずつ歯が動き噛み合わせが悪くなったり叢生になったりすることも。

 赤ちゃんの成長に合わせた食事ではなく、柔らかい離乳食ばかり与え続けることも歯並びに影響します。柔らかい食事は舌や顎をしっかり使う必要が無く、筋肉や骨格の発達に遅れが出ます。これにより叢生や上顎前突などの不正咬合に繋がることがあります。また下を向くような姿勢で食事をすることで口腔周囲筋の発達が遅れ、不正歯列になることもあります。

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浜崎 実穂

東京医科歯科大学卒業後、大学病院に歯科衛生士として勤務。大学の卒業研究では、日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科研究所賞)を受賞。2019年4月からフリーライターに転向し、自身で立ち上げた歯科メディアは売約を達成。現在は「歯科衛生士ライター」として活動し、歯科企業や歯科医院でライティング業務を行う。

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