歯科治療で最も困難な治療?ポスト除去

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デンタルハック
日々の治療で最も難しく、気が進まない治療は、感染根管治療におけるポスト除去ではないでしょうか。レントゲンを頼りに少しずつ歯牙とポストを切削して除去する診療行為の難しさは経験された先生ならば、納得していただけることと思います。
ポスト除去の基本
ポスト除去
ポストを除去する際に使用する切削器具ですが、エアータービンよりも切削時のトルクが強い増速コントラを使用すると効率良く金属の切削を行うことができます。また、当院でクラウンや金属ポストを除去する際には、新品のカーバイトバー(No.330)を使用しています。除去用のバー(No.1557)は、切削効率は高いかもですが、バーの振動による歯根膜への影響を考えると、細いバーで切削する方が、切削量の少なさと歯根膜のダメージを最小にすることが可能となります。
ポスト除去時の操作
ポスト除去
ポスト除去の際には、一般的にはくさび状にマージン部分を削合し、雑用エキスカを用いて梃子の応用で、ポスト浮かせて除去することが多いと思います。
短いコアであったり、セメント層の厚い症例であれば、この方法で簡単に除去できますが、長いポストや複数根の症例であれば、大変です。
ポスト除去鉗子の使用
ポストと歯牙のマージン部にくさび状の切断面を入れたのちに、ポスト除去鉗子でそっと掴むと除去することができます。歯牙の動揺を確認しながら、ポストの動きがなければ、もう一度くさび状の切れ込みを大きくします。
この操作を繰り返すと、簡単にポストを除去することができます。
  • ポスト除去
    右上切歯と左上切歯の感染根管治療のために前装冠とポストの除去が必要。
  • ポスト除去
    新品のNo.330のカーバイトバーを使用し、増速コントラを用いて除冠する。
  • ポスト除去
    除冠後の口腔内の状態。
  • ポスト除去
    ポストの歯頸部にくさび状の切断を入れKAKOプライヤーでポストを掴む。
  • ポスト除去
    除去したポスト。
注意
ポストを除去する際には、ポストと歯牙に無理な力がかかっていないか細心の注意を払わないと、歯牙の破切を起こすので注意が必要である。

クラウンやポストの除去という治療項目が入ると、どうしてもチェアータイムが長くなる傾向があります。この点数が低いにもかかわらず、感染根管処置、麻酔抜髄処置が不採算と言われる所以と思われます。
時間が掛かるというドクターサイドへのストレスとともに、患者さんは金属を切削する際に発生する不快な音と切削時の振動に耐えなくてはなりません。この切削時の振動は、歯根膜へダメージを与えていることは明らかで、術後の打診痛の原因にもなります。
今回ご紹介したように、金属の除去には、新品のカーバイトバーとポストの除去には、KAKOプライヤーのようなポスト除去の鉗子を使用することで大きくチェアータイムを軽減することとができ、術者と患者さんのストレスを大きく軽減することができます。(セラミック、ジルコニアといったマテリアルの除去に関しては、ダイヤモンドバーを使用する方が、早く確実に除冠を行うことができます。)

内田昌德

プロフィール

内田 昌德(うちだ よしのり)
医療法人鶴翔会 内田歯科医院
長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業
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