歯科医師向け 開業支援・経営支援コラム Vol.31【人材・教育】教育・研修の必要性について

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前回のコラムでは、労働基準法の遵守と就業規則の必要性について掘り下げて解説させていただきました。今回は院内における教育・研修の必要性についてお話させていただきます。

建物や内装が形となり、院内に医療機器や什器など搬入され徐々に増えてくると、開業がより具体的にイメージできるようになり、気持ちも高まってくると思います。建物・内装・医療機器・設備・システムといったものは、いわゆる「ハード」といわれ、歯科医院を経営する上で無くてはならないものですが、もうひとつなくてはならないものが、そこで働く人材=スタッフです。わざわざ言うまでもありませんが、どんなに立派な建物や医療機器を揃えたとしても、そこで働くスタッフの質やレベルが低ければ、患者さんから信頼してもらえる歯科医院になることはできません。だからこそ「ハード面」を整えるのと並行して、「ソフト面」も整えていく必要があります。

歯科医院を開業するにあたり、一緒に勤務してくれるスタッフを採用することになると思いますが、まず最初に理解しておくべきことがあります。それは「スタッフを採用したからといって、すぐに戦力になるわけではない」ということです。新たに採用したスタッフに戦力として活躍してもらうためには、医院での役割や求められる動き方をしっかりと理解してもらう必要があります。そのためには「教育・研修」が欠かせません。

開業を控えた歯科医院における教育・研修ですが、大きく次の2つにわけられます。

①実務的な研修

実務的な研修は、日々の診療や業務に直結する内容を含みます。具体的には以下の項目が挙げられます。

医院の治療方針・診療メニュー

医院がどのような治療方針でどのような診療メニューを提供しているか理解し、スタッフが一貫した治療を提供できるようにするための研修です。

医療機器やシステムの使い方

歯科医院では様々な医療機器やシステムを使用します。これらの正しい使い方をしっかりと理解してもらうための研修が必要です。

院内のオペレーション

院内での業務の流れや手順を理解してもらう研修です。これにより、スムーズな診療が可能になります。

院内のルール

就業規則や業務上のルールを理解してもらうための研修です。

接遇やコミュニケーション

患者さんとの接し方やスタッフ同士のコミュニケーション方法についての研修です。

②理念や行動指針、チームワーク

もう一つの教育・研修は、医院の理念や行動指針、そしてチームワークに関するものです。具体的には次のようなものが挙げられます。

医院の理念

医院が大切にしている価値観や使命をスタッフ全員と共有することが重要です。

医院の治療方針

①の実務的な研修とも重複しますが、医院の理念を理解してもらった上で、なぜこのような治療方針で診療をおこなうのか理解してもらうことが重要です。

理念に基づく行動指針

理念に基づいた具体的な行動指針を明文化し可視化することが必要です。スタッフが行動指針を理解し、自然と実践できるようにしていくための研修です。

スタッフ同士の相互理解

スタッフ同士の関係性を深め、より良いチームワークを築くための研修です。

「教育・研修に力を入れる」と口で言うのは簡単ですが、それを実践し成果を出すのはとても労力がかかり大変なことです。当たり前のことですが、院長は臨床面=歯科治療においてのプロフェッショナルです。一方で、教育・研修のプロフェッショナルかというと、そうでない場合の方がほとんどです。また開業を控えた院長先生は経営の経験値も浅く、他の準備などに忙殺されて物理的に時間を制約されてしまうため、院長一人ですべての教育・研修をおこなうのには無理があります。そのため、外部の専門家の力も借りることが重要です。

実務的な研修は外部の専門家にも力を借りましょう

【例1】医療機器やシステムの使い方
これらは機器やシステムのメーカーによる研修が効果的です。メーカーの専門知識を活用することで、正確な使用方法を学べます。

【例2】接遇やコミュニケーション
外部の研修講師を招いて行うことで、プロフェッショナルなスキルを身につけることができます。

【例3】院内のルール(就業規則)
社労士に依頼することで、法的に正確なルールをスタッフに伝えることができます。

理念や行動指針の伝達

理念や行動指針については、院長自らが直接スタッフに伝えることが望ましいです。「なぜこの医院を開業したのか」「医院を通じて患者さんやスタッフにどうなってもらいたいのか」など、院長が情熱を込めて自分の言葉で理想や想いを話すことで、スタッフにその理念がしっかりと伝わります。

また、新規開業で集まったスタッフはまだ付き合いが浅く、関係性も築けていないことがほとんどです。良い診療をおこなうためには、院長を含めたスタッフ同士が相互理解を深め、より良いチームワークを築いていくことが重要です。

これらの教育・研修に関しても、院長1人ですべて計画・実行するのはかなりハードルが高いです。ですので、開業コンサルタントやチームビルディングに精通した研修講師の協力を得ながら教育・研修をおこなっていくとよいのではないでしょうか。

まとめ

歯科医院における教育・研修の必要性は非常に高いです。スタッフに1日も早く戦力として活躍してもらうためには、実務的な研修と理念や行動指針、チームワークに関する研修が欠かせません。そして、これらの研修を効率的におこなうためには、外部の専門家の力を借りることが有効です。院長自らが伝えるべき部分と、専門家に任せるべき部分を分けて、効果的な研修を実施することで、医院全体のパフォーマンスを向上させることができます。

今回も最後までコラムをお読みいただきありがとうございました。

1on1スタッフマネジメント型 経営コンサルタント(事務長代行)
ライトアーム代表 
五十嵐 伸好

歯科器材メーカーにて開業担当として200件以上の開業に携わり、大手ディベロッパーや商業施設との交渉により物件獲得、事業計画書の作成、開業資金の融資確保、医院内装のアドバイスなど、機械メーカーの枠を超えて開業までのすべてをとりまとめ、先生の評価をいただく。
その後、医療法人事務長となり多岐にわたる事務長業務(採用、人事、広報、渉外、経営、税務、労務など)を行い法人運営し、就任時から売上400%以上アップを達成する。現在は多忙な院長に代わってスタッフマネジメントを行い、院長が歯科医師として治療に専念できる環境、仕組み、働きやすい職場を構築することで離職率の低下と売上UPを実現。経営コンサルタントとして複数の院長の相談役、経営的右腕として活動している。

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