覚えておこう!小児歯科と関連が深い感染症

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全身と口腔の関連が強いもの

小児歯科では、口腔との関連が強い全身の感染症が多くあります。特に以下の用語について理解しておきましょう。

●ヘルパンギーナ
●手足口病
●麻疹(はしか)
●風疹(三日はしか)
●流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
●川崎病(急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)

㉓ヘルパンギーナ

主にコクサッキーウイルスAが原因で起こる、乳幼児に多く見られるウイルス性疾患です。ヘルパンギーナでは以下のような症状が現れます。

●38℃以上の高熱
●喉が赤く腫れる
●口腔内、喉に水疱や潰瘍
●食欲低下

喉の痛みが強く食事や飲み物を受け付けなくなり、脱水症状を起こすこともあります。対症療法により1週間程度で治癒します。

㉔手足口病

コクサッキーウイルスAとエンテロウイルスによる、乳幼児ウイルス性疾患です。好発年齢は1~3歳の乳幼児で、夏季に多発します。手足口病では以下のような症状が現れます。

●発熱
●全身倦怠
●頭痛
●食欲不振
●発疹

1~2日で下熱後、口腔粘膜や手のひら、足の裏、手の指などに3~7㎜の水疱性の発疹が現れ1週間程度で消失します。

㉕麻疹(はしか)

麻疹ウイルスによるもので、小児期の罹患が多く一度麻疹に感染するとそれ以降は感染しません。潜伏期間は10~12日で、症状の出方はおおむね以下の流れです。

1. 感染約10日後に発熱や咳、鼻水など風邪に似た症状が現れる
2. 2~3日熱が続いた後、38℃以上の高熱と口腔内にコプリック斑(麻疹特有の白い斑点)が見られる
3. 合併症がなければ7~10日で回復する

皮膚よりも先に口腔内に症状が現れるため、歯科の受診は早期診断に役立ちます。感染経路は空気・飛沫・接触感染で、妊婦が麻疹に感染すると重症化しやすく注意が必要です。また30~40%の確率で流産・早産につながるとされています。

㉖風疹(三日はしか)

風疹ウイルスによって起こる感染症です。感染すると約2~3週間後に発熱が見られ、口腔粘膜や手足に発疹、リンパ節の腫れといった症状が現れます。

麻疹と似た症状が現れるものの、麻疹よりも短い期間で治ることから「三日はしか」とも呼ばれています。発疹の出る前後およそ1週間は他人に感染する可能性があり、主な感染経路は飛沫感染です。

妊娠20週頃までの女性が風疹ウイルスに感染すると、眼や心臓、耳などに障害を持った子どもの生まれることがあります(先天性風疹症候群)。

㉗流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

6~8歳の小児に好発し、多くは唾液に含まれるムンプスウイルスの飛沫感染により起こります。潜伏期間は2~3週間で、症状としては発熱と同時に耳下腺の腫脹が見られます。片方の耳下腺のみ腫れることもあれば、 左右両側の耳下腺が腫れることもあります。なお顎下腺が腫れることもあり、症状は3日から1週間ほど続いた後に消失します。

㉘川崎病(急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)

川崎病には以下6つの主症状があります。

●発熱
●目の充血
●唇は赤くなり、舌が苺のように赤くブツブツとしている
●発疹
●手足が赤く腫れて指先の皮がむける
●リンパ節が腫れる

これらのうち5つ以上、もしくは4つの症状と経過中に心臓の血管の一部にコブ状の腫れが確認された場合に川崎病と診断されます。川崎病は全身の血管に炎症が起きる原因不明の病気で、発症は1歳がピークとされています。なお4歳未満が発症の80%を占め、男児に多いとも言われています。

おわりに

全身と口腔に関する病気などは、歯科医院での早期診断が役立つこともあります。それぞれの略語や専門用語を理解するだけでなく説明もできるようになると、さらに自信を持って臨床に携わることができるでしょう。

SHIIKA

島根県出身・岡山県の専門学校卒業。日本歯科衛生士会長賞受賞。
6年間岡山県の一般歯科、6年間島根県の一般歯科いずれの歯科医院でもチーフとして勤務。
歯科衛生士としてもっと幅広く活動したいという思いから退職し、2021年7月からフリーの歯科衛生士に転身。
現在は「子どもから指名を受ける歯科衛生士」として子どもの口育講座などを行う。

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