統合失調症と歯科医診療

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歯科診療における注意点

統合失調症患者は、「自分自身が病気である」という自覚が乏しかったり、そもそも病院を受診しておらず病気が発覚していなかったりすることがあります。歯科医院に来院した患者の発言・行動が不可解な場合は、医院全体で情報共有し待合室や歯科治療中の様子に注意を払いましょう。

患者から自身が統合失調症であるという話や、精神障害者保健福祉手帳の提出などがあった場合は、統合失調症で通院している病院を確認しましょう。またおくすり手帳を確認し、服用している薬を必ず確認します。統合失調症患者は、症状の改善や再発予防のために抗精神病薬を服用していることが多いです。その他抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗パーキンソン病薬、便秘薬が併用されることもあります。服用薬によっては歯科に関連する症状・副作用が出ることがあるため、状況に応じて医科との連携が必要になります。

統合失調症薬の歯科に関連する副作用

統合失調症薬により、口腔内に影響が出たり歯科治療の妨げになる症状が現れたりすることがあります。

分類 主な薬剤名 歯科に関連する副作用
抗精神病薬
(フェノチアジン系)
クロルプロマジン、
レボメプロマジン
唾液分泌抑制による口腔乾燥、錐体外路症状
抗精神病薬
(ブチロフェノン系)
ハロペリドール、
スピペロン
錐体外路症状
抗うつ薬
(三環系)
トリプタノール、アナフラニール、トフラニール 唾液分泌抑制による口腔乾燥

錐体外路症状とは手足が震える、筋肉が硬くなる、表情が乏しくなるなどといった症状です。薬が脳内物質であるドーパミンを抑制することから、脳内機能が低下しこれらの症状が起こります。

錐体外路症状には以下のような種類に分けられ、いずれの症状も歯科治療中や移動の際に注意が必要です。

● アカシジア:座ったままじっとしていられない、そわそわ動き回る
● ジストニア:筋肉がこわばる、うねるような動きをする、姿勢異常
● パーキンソニズム:手足の震え、動作が遅くなる、小刻みな歩行
● ジスキネジア:身体の一部が無意識に不規則な動きをする

錐体外路症状の中でも、特に口腔内へ影響を及ぼすのが口・舌・顎・唇に力が入り動く「口腔ジスキネジア」です。具体的には口をもぐもぐさせる、唇をすぼめる、舌を突き出すなどがみられます。これにより咬耗、歯や義歯の破折、咬傷、咀嚼・嚥下障害といった症状が引き起こされます。筋緊張が咬筋や外側翼突筋に起こった場合、顎のずれや痛みとなって現れることもあります。

統合失調症患者の口腔ケアと対応

統合失調症患者は、気分の不調や自己管理能力の低下から口腔ケアへの意識が低く、口腔衛生状態が不良なケースが多くみられます。また統合失調症は治療が長期に渡ることが多いため、患者の高齢化や身体機能の低下からますます口腔環境は悪化することが考えられます。

そこで歯科衛生士はセルフケアの重要性を伝え、口腔衛生状態の改善と口腔乾燥症や誤嚥性肺炎の予防などを目指すべきでしょう。意思の疎通が困難であったり不可解な行動がみられたりと対応が難しい場合は、患者の訴えに深く耳を傾けできる限り十分な対話を心がけることが大切です。簡潔でわかりやすい説明をし、長期的なケアプランを立てて無理のないように進めましょう。

患者の日常やセルフケアの状況把握が困難な場合は、家族との連携も必要です。歯科衛生士と家族で本人をサポートすることで、口腔内環境の改善を目指します。セルフケアを促しながら必要に応じてプロフェッショナルケアを行うことは、患者のQOLの維持や今後の生活においても重要と言えるでしょう。

歯科衛生士ライター okahata

北海道の歯科衛生士専門学校を卒業後、一般歯科で勤務。現在は歯科衛生士の経験をもとにした記事を執筆するライター活動を行っている。

【校正】浜崎 実穂(歯科衛生士ライター)

プロフィール:
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後は「歯科衛生士ライター」として活動しながら、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。
自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。
大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。2児の母。

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