予防歯科から健康な生活へ- 日本ヘルスケア歯科学会が目指す歯科医療の新たなステージ‐
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日本ヘルスケア歯科学会は,下記の設立趣旨を掲げ,1998年に設立されました。「日本の予防歯科の草分け」と言われたりすることもあります。発足して25年をこえる活動を続けてきた学会になります。日本ヘルスケア歯科学会を知るためにも,まずはこの設立趣旨に目を通してください。
医療は、いつの時代にあっても、常に医療を受ける人々の利益となることを第一義とし、人々の健康で快適な生活に貢献するものでなければならない。その社会背景や科学の進歩に応じて、医療の役割は変遷を遂げてきたが、いつの時代にも脈々と流れる社会貢献の精神が、医療人を支えてきた。しかしながら、現在の医療、とくに歯科医療について語ろうとするとき、果たして私たちは、胸を張って社会に貢献していると言えるだろうか。
近代歯科医学は、科学の進歩とともに大きな発展を遂げたが、私たちは口腔疾患をこの地上からなくすという高邁な理想を忘れ、傷病による破壊の跡を人工的に修復することに大きな精力を注いできた。今日では、あたかも精緻で審美的な修復・補綴を究めることが、歯科医療の目標であるかのように誤解する人々すら生まれている。また、大学のなかには、臨床から遠く隔たって研究を細分化するものが多く、その教育においてさえ社会貢献の精神が十分に貫かれているとは言いがたい。国の医療政策もまた、医療人を疾病の事後処理に固執させ、疾病を未然に防ぎ再発を予防することに何等のインセンティブも与えていない。
このような現実に、問題を感じている歯科医療人、研究者は少なくない。そして経済的な成熟と高齢化・少子化の進展によって、人々の健康に対する関心はかつてない高まりを見せている。
では、私たちは何をするべきだろうか。何よりも重大なことに、疾病を未然に防ぐことが容易であるという歯科医療の可能性が、人々の目から隠されている。そのような事実を明らかにしたとき、果たして現実の歯科医療は受け皿になり得るだろうか。
幸いなことに、ヘルスケアの先進国では、従来の修復・補綴に重きを置いた歯科医療から、健康な歯列を守り育て生涯にわたって人々の健康のパートナーとなる歯科医療へと、その転換が始まっている。まず私たちは、これまでに蓄積された多くの研究の成果を臨床的な観点から取捨・統合し、臨床に役立つ情報として整理することから始めたい。歯科疾患を未然に防ぎ、すでに発症した疾患については、原因療法を怠ることなく効果的に治癒させ、また修復においても生物学的な因子に配慮して再発を防止し、生涯にわたって健康な歯列を維持するための歯科医療を実現することは、すでに手の届くところにある。
疾患に関与する因子は多く、従来の病因論のパラダイムで疾病が解明し尽くされているわけではないが、ヘルスケア・プログラムを実践するための知識や技術は、齲蝕や歯周病に関する限り、すでに共有しうる段階にある。そこで、これまでに積み上げられた成果を学ぶと同時に、臨床において生じた疑問や困難をひとつひとつ解決し、互いに確かめ共有するための協同作業に着手したい。そのために私たちは、臨床研究やその報告の新しいかたちを模索しなければならないだろう。広く臨床家や研究者、教育者が協力して、より現実的で予知性の高い方法を生みだし、人々に提供するように努力したい。
こうした知識や技術を、臨床に携わる多くの歯科医療関係者が共有し、広く普及させるために、本会を設立する。
この趣旨に賛同する多くの研究者や歯科医療関係者、そしてそのような医療の展開を期待する人々の協力を得て、ヘルスケア・マネージメントに関する情報を発信し、また人々に新しいヘルスケアのメッセージを届けたい。同時に、臨床の現場でこのような医療を実践できる歯科医師や歯科衛生士を養成し、またヘルスプロモーションのリーダーとなる歯科医療人を育てたい。そして、その日常の活動から生まれた成果を歯科医療・歯科保健関係者に広めることにより、社会環境の整備にも影響を与えたい。
人々が生涯にわたって快適な咀嚼と自由な会話と若さと尊厳に満ちた微笑みを維持することができるように、私たちは自らの足もとから医療のありかたを改めるために力を合わせることにした。
以上が設立趣旨全文になります。
その中でも大切な部分を補足します。
医療を受ける人(患者であり,国民)を第一に考えて,臨床に取り組む
私達は,医療を受ける人(患者であり,国民)を第一に考えて,臨床に取り組むことを大切にしています。予防歯科は,医院経営のために大事なものとされる論調もありますが,我々はそうではありません。まず医療を受ける人のことを考えて行動することを旨としています。基本的なことですが,とても大切にしているところです。
疾病を未然に防ぐことの重要性
歯科は予防が大事ということは,今や皆が認識しています。でも,じゃあ疾病を未然に防いでいる実例をたくさん見せて下さい。といって見せることができる医院がどれくらいあるでしょうか。日本ヘルスケア歯科学会は,実践例を見せることが出来る学会です。臨床家の集まりなので,日本の臨床現場で,保険診療の中で実際にどうやっているか?を伝えることができます。
診療室を作るノウハウを教え合う文化がある
また,予防歯科に関する実践のノウハウを包み隠さず伝えているのも,特徴でしょう。それは,日本ヘルスケア歯科学会主催のセミナーに参加してもらえたら,分かります。今回のデントウェーブさんによるオンラインセミナーも時間の限り,皆が多くのことを伝えてくれると思います。ただ,実際に診療室で実践するのは,より詳細なことを学ぶ必要が出来てくると思います。
リーダーとなる歯科医療人の育成
我々の課題として,リーダーとなる歯科医療人の育成がまだ不十分な状況にあります。デントウェーブのWEBセミナーを通じて,将来活躍する歯科医療人が生まれるきっかけになると嬉しい限りです。ぜひ,日本ヘルスケア歯科学会の臨床に取り組んで下さい。実践する医院は,大歓迎です。
また本会では、様々な活動を行っていますのでご紹介致します。
是非本会を通じて医院の成長と経営の安定を図ることで、来院者の生活をより豊かなものにして行きましょう。
①ヘルスケアミーティング
学術講演会を定期的に開催しています。この講演会は会員の役に立つだけではなく、出版物とともにわが国の歯科医学界の研究者・教育者・行政に大きな刺激と影響を与え続けています。健康を守り育てるために、是非医院単位でご参加下さい。
②ワンデーセミナー
ヘルスケア歯科診療を知りたい、実践してみたい方に向けて一緒に考えられる一日になることを目的にセミナーを行っています。医院単位での参加が効果的ですが、まずは一人での参加でもお待ちしております。
③歯科衛生士育成プログラム
基礎コース:「健康を守り育てる歯科医療」=ヘルスケア歯科診療を実践していくにあたり、必要とされる知識・技術・コミュニケーションスキルを備え、歯科衛生士業務を完遂できる、そのようなヘルスケア歯科衛生士が不可欠です。インストラクターが手とり足とりサポートします。
学会認定歯科衛生士:検定コースを設けています。プロフェッショナル歯科衛生士を目指す方のためにおすすめです。
④認証ミーティング
この“健康を守り育てる診療所認証”は、学会が「健康を守り育てる」ために必要な一定条件を満たす診療所をおおやけに認証する制度です。日本ヘルスケア歯科学会には、いま流行の認定医や専門医の資格制度はありません。患者さんの健康の維持と慢性的な病気の治療にとって重要なのは、歯科医師個人の技倆だけではなく、医療機関としての明確なポリシーとシステム、トレーニングの質、診療情報の蓄積と振り返り、健康の維持を長い目でみる姿勢、そうした全体によって裏付けられる医療機関の医療の質だからです。認証はあくまでも手段であり目的ではありません。認証制度を活用し、医院の現状を見直し、スタッフとともに一段一段ステップを上がっていくことで医院を成長させましょう。
⑤ニュースレター
会員相互の情報交換を軸にした、本会活動のベースになる情報媒体です。臨床疫学報告や学術情報のほか、講習会、研修会のスケジュールを掲載しています。
⑥会誌の発行
自分たちの臨床データの積み重ねを報告し、それを根拠に臨床を見直すことを一歩一歩進めましょう。発症前治療、侵襲の小さな治療、合理的な定期管理、健康づくり、それを支える科学的根拠やマネジメントの報告を掲載しています。
⑦予防歯科関連ツール
本会では様々なツールを会員に頒布しています。予防することの大切さを来院者にお伝えするのに便利なツールを揃えています。
⑧プロジェクト・フォーラム
本会には各種プロジェクト、フォーラムがあります。学会員は興味のある所に入って同じことに興味を持ったメンバーと活動することが出来ます。
⑨実践セミナー
これからヘルスケア診療に取り組むことにした本学会歯科医師会員、非会員の方は入会を前向きに検討している方を対象に,少し先を行く先輩たちが真剣に向き合います。同じ思いの仲間と繋がることで医院を前進させて行きましょう。
⑩Webセミナー
ヘルスケア歯科診療に必要なことをWebセミナーで学ぶことが出来ます。
⑪日本ヘルスケア歯科学会公認団体(公認支部)
各地域で学会公認支部があります。それぞれヘルスケア歯科診療を行うために必要なことを企画しています。
日本ヘルスケア歯科学会は,このようなコンセプトの会になります。興味をもってもらえる方は,ぜひセミナーを視聴してもらえたらと思います。日本の臨床現場で活用できる具体的な事例がたくさんあると思います。皆さんの医院が,日々より良い診療が出来るヒントがあれば,嬉しい限りです。

【ご略歴】
・1994年:北海道医療大学歯学部卒業
・1999年:広島大学大学院歯学研究科修了(歯科補綴学第一)
・2000年:医局OBの医院で副院長として4年間勤務
・2004年:愛媛県南宇和郡愛南町にて開業
・2023年~:日本ヘルスケア歯科学会代表理事
【ご所属】
日本ヘルスケア歯科学会認証診療所
日本口腔インプラント学会専門医

【ご略歴】
・2002年:東京歯科大学卒業
・2003年:東京歯科大学 有床義歯補綴学講座入局
・2006年:医療法人社団 博山会 勤務
・2017年:島野デンタルオフィス開業
【ご所属】
日本ヘルスケア歯科学会 オピニオンメンバー
日本ヘルスケア歯科学会 認証診療所
記事提供
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