「経営について学んだことはありますか?」 アンケート結果から見えてくる歯科医院経営の課題と成長への道 -経営スキルを磨くためのステップとは?-

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患者さんやスタッフにとって良い医院を実現し、さらに安定した運営を目指すには、医療技術だけでなく経営スキルも重要です。しかし、先生方が抱える経営課題やスキル習得の実情は、まだ見えにくい部分が多くあります。

今回のアンケート結果から、先生方が現場で感じられる課題や経営への関心、そして経営スキル習得への取り組みが浮き彫りになりました。本記事では、Dent Researchのアンケート結果をもとに歯科医院経営における主要な課題と、効果的な経営スキルの身につけ方についてご紹介します。

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アンケート結果のまとめと考察

1. 経営への関心と目標の有無

歯科医師の55.9%が経営を学んだ経験があると答えている一方、44.1%はまだ学んでいないと回答しています。また、54.4%が経営に関する具体的な目標を持っているのに対し、45.6%は目標を持っていません。
目標や課題が明確な先生ほど、経営に対して積極的に学んでいる傾向が見られます。この意識と行動の差が結果としての医院間の差につながっているのではないでしょうか。

2. 総合的な経営教育の必要性

現在、歯科医師の69.7%が本を通じて経営を学んでおり、セミナーを利用する人もいますが、これらの学びは一部のテーマに限定されがちです。経営の全体像を理解し、より包括的に学ぶことで、医院の経営力を飛躍的に向上させることができます。
今後は、総合的経営を学ぶことを意識する必要がありそうです。

3. 人材と利益を両立した医院づくり

アンケートでは、「人材の採用ができない」(26.2%)や「利益が残らない」(23.6%)といった課題が多く挙がりました。これらの背景には、少子高齢化や過疎化による医療の需要と供給のバランスの難しさがあります。また、医院ごとに立地や特性が異なるため、それぞれに合わせた運営が必要です。

しかし、どの医院にも当てはまる「正解」はありません。そのため、変化する環境の中で、院長が自ら医院に合った経営戦略を考えられるかどうかが重要となります。歯科医師が経営スキルを習得する必要性が一層高まっています。

歯科医院経営において経営を学ぶ重要性

1. 地域間・医院間格差への対応

医療業界全体では、地域や医院間の格差が拡大しつつあります。地方では人口減少や高齢化によって医療需要が変化し、都市部では医院間の競争が激化しています。こうした状況において、地域の実情に応じて「ヒト・モノ・カネ」を適切に整えられる経営スキルが重要です。
経営知識を習得することで、このような社会変化に柔軟に対応する力を身につけることができます。

2. 長期的視点での医院運営

経営を学ぶことで、医院を長期的かつ俯瞰的に見る視点が養われます。目先の利益や単発的な施策にとどまらず、持続可能な発展を目指す経営判断が必要とされる中、経営の全体像を理解することで長期的な計画や判断力が高まります。これにより、短期的な解決策に依存せず、安定した医院経営が可能となります。

3. 人材確保と収益改善のバランス

歯科医院にとって重要な「人材」と「利益」という課題にも、経営の視点が役立ちます。少子高齢化により、採用の難しさやスタッフ不足が問題となる一方、安定した収益を確保し、質の高い医療提供を行うためには、バランスの取れた医院づくりが必要です。経営を体系的に学び、戦略的な医院運営を行うことで、人材確保と収益改善においても持続可能なアプローチが可能になります。

歯科医師が経営スキルを磨くためのステップ

忙しい日々の臨床をこなしながら経営も学ぶのは大変ですが、経営スキルの習得は重要であり、これができればライバルとの差をつけられる大きなチャンスになります。

1. 経営の基礎を学ぶ

まずは「経営の基礎」を学び、全体像を把握しましょう。「経営」はいくつかの要素で構成され、それぞれが一貫した方向を向いていなければ成果につながりません。経営を体系的に理解するため、次の分野に目を通すのが効果的です。

・戦略立案(ビジョン・計画)
・ヒト(人材管理:採用・育成・評価・組織づくり)
・モノ(マーケティング、オペレーション、イノベーション)
・カネ(財務管理)

移動時間に動画や音声を聞いたり、入門書や「マンガでわかる…」シリーズなどで、簡単に全体像を把握することから始めるのでOKです。

2. 実践できる学びの場を活用する

自分の医院を実践の場とするようなセミナーや、経営を総合的に学べるカリキュラムのセミナーに参加することも効果的です。実務に活かせる学びを得ると、すぐに医院での改善につなげられます。

3. 実践と振り返り

学んだ内容を医院で実践・改善していきましょう。その際に、同業・異業種の友人や意見をもらえるメンターの存在は貴重です。相談相手がいると視野が広がり、問題解決もスムーズになります。

4. 継続的な学びと成長

学習と実践を続けていくことで自分の経営スキルが磨かれながら、より良い医院が実現していきます。

おわりに

歯科医師が経営スキルを磨くには、まず経営の基礎を理解し、全体像を把握することが重要です。続いて、医院を実践の場とし、セミナーやカリキュラムでの学びを生かして、具体的な改善に取り組みます。また、信頼できる相談相手やメンターがいると、一人で学ぶよりも効果的に成長できます。
学びを継続し、実践と振り返りを通して着実にスキルを磨くことで、より良い医院を実現していきましょう。

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新見 隆行 先生

新見 隆行(しんみ たかゆき)
医療法人幸成会 明治歯科診療所 所長 / MBA

<ご略歴>
1978年生まれ・埼玉県出身。 2003年に日本大学松戸歯学部卒業。
同年に群馬大学医学部付属病院に入職。 病棟管理・外来診療、学生・研修医教育に従事。口腔癌の治療に関わるなかでプライマリーケアの重要性を痛感。
2008年に明治歯科診療所を開設(群馬県北群馬郡吉岡町)、翌年、医療法人幸成会を設立。 「みんながしあわせになる診療所」の理念のもと、患者満足・従業員満足を追求し、地域医療のあるべき姿について模索を開始。そのなかで理想の実現を阻む多くの経営課題に直面し、2019年グロービス経営大学院に進学、2020年修了(MBA)。在学中の研究成果が書籍(共著)として出版される。

産休・育休の取得や子育て支援の充実で離職率の低い職場を実現するものの、少子高齢化・過疎化に直面。地域医療の未来を懸念し、2022年に筑波大学大学院社会工学類(地域創生教育コース)に進学、2024年修了。 現在、診療の傍ら、地域医療の在り方や医療の持続可能性創出についての研究、教育・講演活動を行う。

<ご執筆>
著書「ベストスタイル」ひまわり出版
「人的ネットワークの教科書」グロービス経営大学院著・田久保善彦監修・東洋経済出版(共著)

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