第22回日本口腔筋機能療法学会学術大会レポート
第22回日本口腔筋機能療法 (MFT) 学会学術大会が2024年10月16日から17日にかけて、有楽町朝日ホールで開催されました。
この学術大会は、「MFTの基本を再考する」というテーマのもと、MFTに関する最新の知見と技術を共有し、参加者間の意見交換を促進する重要な機会となりました。
大会1日目は、高橋未哉子先生(東京都・高橋矯正歯科クリニック)による教育講演「Back to the basics MFTの効果を再考する」で幕を開けました。
高橋先生は本邦におけるMFTの第一人者です。
<第1日>10月16日(水) 14:40-16:10
Back to the basics-MFT の効果を再考する-
高橋未哉子先生(高橋矯正歯科クリニック/東京都世田谷区)
近年「口腔機能発達不全症」 という疾患名が誕生し、口腔機能が正常に獲得されていない小児への支援がより求められるようになってきています。
咀嚼・発音などの口腔と関連した機能は、歯列・咬合・小帯などの形態と密接な関係があるため、術者の考え方の相違によって、さまざまなアプローチが試みられています。
例えば、口唇閉鎖不全(お口ぽかん) がみられる患者に対して、口唇力を強化するトレーニングを使うのか、あるいは口唇にテープを貼って閉鎖を促すのか、咀嚼・嚥下・発音などの改善を図る訓練を行うのか、またはこれらのいくつかを組み合わせるのかなどという選択のバリエーションがあります。
また歯列拡大は、術者によって異なる方向性が示されることが多い問題です。
すなわち、「拡大装置によってあごを広げながら筋肉のトレーニングをするのがよい」として早期に積極的に介入していく考えと、「咀嚼・嚥下・発音・呼吸・姿勢などの機能の正常化を図るが拡大はあまりしない」という考えなどが混在しています。
物事には絶対に一方が正しいということはありませんが、これは「あまりよくなかったかもしれない」というアプローチ法について、メリットとデメリットを考えたいと思います。
※プログラム・抄録集より引用
そして高橋先生は、MFTを行う際にやるべきことについて徹底することを述べられました。
1-1.MFTを行う際にやるべきこと
・ビデオを撮ること(診療前後)
・家庭で鏡を持ってトレーニング+診療の際の録音を聞いてもらう
・口腔内写真で記録しておく
1-2.ビデオを撮ったのちに確認すること
・食べ物のかじり取り
・咀嚼中の舌と口唇の動き
・咀嚼部位
・嚥下時の口唇の動き
・姿勢(頭や肩の位置)
・唇の形でポカンしている様子
1-3.患者様と保護者への説明
高橋先生は、MFTが継続してできない、MFTを行う目的が分からない方には、「歯は道具です」「MFTを行うことで歯・お口をより上手な使い方を学ぶ」「歯(道具)は手入れと使い方次第で長持ちになる」そして、「所作を美しくすることにつながる」とお話しされているそうです。
今年は新企画「MFTフリーディスカッション」が行われ、森下格先生と坂本紗有見先生がコーディネーターを務めました。
フリーディスカッションとは、MFTの疑問点を質問して、経験年数のある歯科医師や歯科衛生士が答えてくださる企画です。
以下では実際にフリーディスカッションで議論された内容をピックアップしてご紹介いたします。
【質問】患者様のモチベーション維持、料金設定、およびMFTのゴール設定に関する対処法
【回答】患者様のモチベーションについて
MFTにおいて、患者様のモチベーションが続かない原因を探ることが重要です。例えば、学校や受験勉強、習い事などで忙しかった場合、自宅でのMFTが難しかった可能性があります。このような場合、日常生活に取り入れやすい簡単な内容からスタートすることが効果的です。例えば、スポットの位置を確認するなどの簡単なトレーニングから始めると良いでしょう。
また、来院時には毎回ビデオを撮影し、小さな変化も患者様やそのご家族と一緒に確認し、喜びを共有することでモチベーションを高めることができます。
【回答】料金設定について
料金設定に関しては、料金を設定することで、術者も患者様もやる気が高まることが多いです。
MFTを自費としているクリニックは矯正専門歯科が多く、一方で保険適用としているクリニックは小児歯科専門歯科が多い傾向にあります。
【回答】途中で脱落する場合の対処法
患者様が途中でMFTを続けることが難しくなる場合、MFTの目的や目標を明確に設定し、患者様と毎回共有することが重要です。進捗状況を確認し、できたことを褒めることで、患者様のモチベーションを維持することができます。また、術者と患者様が進捗を共に理解することが大切であり、明確な線引きを行うことも必要です。
【回答】患者にあったトレーニング計画
患者様の悪習癖に合わせたトレーニングメニューを計画することが重要です。その都度、進行具合と目標・目的を患者様に見せることで、患者様自身が自分の進捗を把握しやすくなります。
以上の対処法を実施することで、患者様のモチベーションを維持し、MFTの効果を最大化することが期待されます。
このように、第22回日本口腔筋機能療法学会学術大会は、MFTと口腔機能発達不全症に関する最新の知識と技術を学び、意見交換を通じてさらなる発展を図る場として、非常に重要な意義を持っています。
参加者一人一人がこの機会を最大限に活用し、互いに学び合い、共有することで、MFTの未来をより豊かに、患者様にも理解いただけるような診療時間を提供できるようになるでしょう。
日本口腔機能療法学会
第23回日本口腔機能療法学会学術大会
日時:2025年10月8日(水)、9日(木)
会場:有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11・12F)
歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。
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