印象採得・印象材に関する略語・専門用語 <後編>

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前回の記事では、歯型を取る際に使用する印象採得・印象材の基本用語、目的に対する専門用語にふれました。
今回は、印象採得・印象材の方法に関する略語・専門用語についてみていきましょう。

印象採得の方法に関する専門用語

印象採得にはさまざまな方法があり、それによって使用する印象材や術式が異なります。

①単純印象

1種類の印象材を使用した簡単な印象採得の方法です。略語では「単imp・S imp」と表されます。

②連合印象

2種類の異なる印象材を組み合わせて行う方法です。略語では「連imp・C imp」と表されます。
連合印象では操作の容易さやコスト面などから、アルジネート印象材と寒天印象材を組み合わせて使用されることが多いです。

③二重同時印象法

種類は同じで流動性の異なる2つの印象材を、同時に練和して印象採得を行う方法です。
ダブルミックス印象法とも呼ばれシリコーンゴム印象材が多く使用されますが、用途に合わせて印象材を使い分ける必要があります。

④咬合印象法

咬合印象用のトレーとシリコーンゴム印象材を用いて、上下一緒に印象採得を行う方法です。
支台歯の印象と同時に、対合印象と咬合関係を記録することができるのが特徴です。

なお咬合印象法は概ね1/3顎までが適応で、咬頭嵌合位が安定していることも必須条件です。
咬頭嵌合位とは、上顎と下顎の歯列が最も多くの位置で接触している状態における下顎位のことです。

印象採得の手技に関するもの

歯科衛生士が印象採得に関わる機会も多いため、印象採得の手技に関する専門用語も覚えておきましょう。

⑤試適

印象採得をする前に患者の口腔内にトレーを挿入し、歯列の大きさ・幅などに合っているかを確認することです。

⑥練和

印象材を混ぜて練り込むことを言います。

⑦混水比

アルジネート印象材の水と粉の理想的な割合のことを言い、これは印象材の種類やメーカーによって異なります。
混水比が変わると操作性や印象物に影響が出るため、粉と水の量は正しく計測しましょう。

⑧歯肉圧排

より精密な印象採得のために、歯と歯肉の境界を明確にする処置です。
圧排糸と呼ばれる糸やペースト状の材料を、歯肉溝に入れ歯肉を排除することで行います。

その他印象採得に関する専門用語

基本的な専門用語や手技に関するもの以外にも、印象採得に関わる上で理解すべき専門用語は多くあります。

⑨硬化

印象材が固まって硬くなることを言います。温度や化学変化によって硬化が起こるため、水温や練和時間などに注意しましょう。

⑩バイト

歯の咬合のことで、補綴物を作る際には咬合関係を確認する必要があります。咬合を記録することを「バイトをとる」と言い、患者にバイト用ワックスを咬んでもらって記録します。

⑪嘔吐反射

口腔内に異物が入ることで、吐き気をもよおしたりえずいたりする症状を言います。
印象採得はトレーや印象材を口腔内に挿入するため、嘔吐反射を引き起こしやすいと考えられます。
嘔吐反射がある患者には、上体を起こして印象採得を行う・鼻でゆっくり呼吸してもらうなど注意を払う必要があります。

⑫マージン

支台歯を形成した際の歯頚部辺縁の形態を言います。
また補綴物の辺縁部分もマージンと呼ばれ、その部分の適合が悪いと二次カリエスや歯周病の原因になります。
適合が良い補綴物を作るためには、マージン部分の精密な印象採得が必要です。

歯科衛生士ライター okahata

北海道の歯科衛生士専門学校を卒業後、一般歯科で勤務。現在は歯科衛生士の経験をもとにした記事を執筆するライター活動を行っている。

【校正】浜崎 実穂(歯科衛生士ライター)

プロフィール:
東京医科歯科大学卒業後、都内歯科大学病院に勤務。退職後は「歯科衛生士ライター」として活動しながら、ライターの指導や教育、ディレクションも行う。
自身で制作・運営を行なっていた歯科メディアは販売を達成。
大学の卒業研究では日本歯科衛生学会の学生研究賞(ライオン歯科衛生研究所賞)を受賞。2児の母。

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