歯科麻酔認定資格・講習会について
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日本歯周病学会が「浸潤麻酔を含む歯科衛生士の活動を支援すべく、情報発信や教育機会の提供に尽力する」という旨の声明を発表しました。日本で歯科衛生士が麻酔を行えることを知らない方は多いのではないでしょうか。今回は歯科衛生士が取得できる歯科麻酔の認定資格について解説します。
歯科衛生士による歯科麻酔の認定資格には設立法人によって下記の2つがあり、概要や資格の取得方法、費用などが異なります。
- 日本歯科麻酔学会認定歯科衛生士(一般社団法人 日本歯科麻酔学会)
- 臨床歯科麻酔認定歯科衛生士(一般社団法人 日本歯科医学振興機構)
それぞれについて解説します。
まず一般社団法人 日本歯科麻酔学会が設立・認定した、日本歯科麻酔認定歯科衛生士について解説します。
歯科衛生士が地域社会の歯科医療における、安全性の向上に貢献できることを目指して設立されました。歯科診療中の全身管理において、知識・技能を有する歯科衛生士を育成する目的で認定が行われます。
認定歯科衛生士の資格を取得した際に、可能になる業務は以下の通りです。
- 全身麻酔や鎮静時の診療補助
- 有病者歯科治療時の全身管理の補助
- 全身的偶発症発生時の救急処置の補助
各種麻酔についてはもちろん、歯科治療時の全身管理、救急処置に関する知識や技術も習得することができます。
- 日本の歯科衛生士免許を有する者
- 学会が認める講習カリキュラムに従い歯科麻酔の講習を受けた者
- 全身的偶発症発生時の救急処置の補助
認定資格の申請に必要な条件は以下の通りです。
- 日本の歯科衛生士免許を有する者
- 学会が認める講習カリキュラムに従い歯科麻酔の講習を受けた者
- 学会認定医が認定歯科衛生士の申請を認めた者
- 申請の時点で継続して1年以上日本歯科麻酔学会会員である者
- 学会が開催する学術集会、講習会、または学会認定関連団体が開催する学術集会に学会入会以後、申請日までに1回以上出席していること
認定資格を取得するため、事前に受ける必要がある講習カリキュラムは以下の通りです。
- 患者の全身状態の評価と管理の補助について
- 歯科診療時のバイタルサインの評価
- モニタリングの方法
- 救急蘇生法
認定資格を取得するためには、認定申請料10,000円を納付し必要書類を審査委員会に提出します。必要書類には申請書や履歴書をはじめ、講習証明書や救急蘇生講習会受講修了証のコピーなども必要です。
必要書類を提出後に書類審査が行われ、合格者に対して筆記試験と口頭試問が行われます。試験に合格後は登録料10,000円を納付すると認定証が交付されます。
希望すると学会ホームページに所属の都道府県と氏名が掲載され、学会主催の講習会に参加することができます。
認定資格は5年ごとに更新が必要です。認定資格を更新する場合は、申請時と同様審査料10,000円と必要書類を審査委員会に提出します。病気、出産・育児、介護などで更新基準を満たせない場合は、診断書などその証明書を提出すると更新期限の延長を申請できます。
次に一般社団法人 日本歯科医学振興機構が設立・認定した臨床歯科麻酔認定歯科衛生士について解説します。
法の正しい理解と、歯科麻酔学の知識・技術の普及を目指し設立された資格です。一定の条件を満たすことで、歯科診療の補助としての麻酔を行うことが可能となります。
注意が必要なのは、この認定資格は歯科麻酔に関する知識や技術を学び、認定試験に合格したことを証明するものであるということ。麻酔の許可を与えるものではありません。歯科衛生士による麻酔は、知識や技術の習熟度を歯科医師が判断し指示を下した上で行われるものだからです。
認定資格を取得するための講習会を受講する条件は、歯科衛生士免許を取得後2年が経過していることです。なお講習会では同医院の歯科医師が、臨床歯科麻酔管理指導医の資格を取得することも可能です。歯科衛生士による麻酔は歯科医師の判断・指示が必要であることから、講習会は歯科医師と歯科衛生士併せての申し込みが推奨されています。
FAXで講習会の申し込み後、1週間以内に受講料28,000円を入金します。テキスト・願書・受講票などが送られてくるため、願書に必要事項を記入し郵送します。講習・実習を受け試験に合格すると認定資格を取得できます。なお認定登録費として12,000円が必要です。
認定講習・実習の内容は以下の通りです。
- 歯科衛生士による麻酔行為の臨床導入について
- 臨床導入の法的根拠および具備すべき条件
- 歯科麻酔学・歯科治療における偶発症への対応
- 実習(浸潤麻酔・バイタルサイン・救急救命処置・窒息の対応法・酸素吸入)
講師や講習会場によって、講習内容は変更になる可能性があります。
認定の登録から3年で更新が必要です。認定資格の更新には手数料10,000円の支払いと、日本歯科医学振興機構が開催するwebセミナーの受講(2回)が必要です。
高齢、有病、寝たきりの患者が増える中、歯科衛生士による口腔と全身の健康管理の重要性は高まってきています。歯科麻酔の認定資格では麻酔に関してはもちろん、全身管理や救急処置の知識・技術も習得することができます。歯科麻酔の認定資格取得を通じて、これからの社会のニーズに合った歯科衛生士を目指しましょう。
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