歯科麻酔科医の力を一般開業医で上手に活用するには

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雨宮 啓 先生コラム
『安全で快適な歯科医療』を提供する歯科麻酔科医

 日常の歯科臨床を行っていると、お目にかかる機会の少ない歯科麻酔科医ですが、静脈内鎮静法や全身麻酔法を活用して患者さんが痛みを感じていないか? 循環や呼吸は問題ないのか? 五感を研ぎ澄ませて全身管理を行っています。もしこの状況でアナフィラキシーショックが起きたら・・どの緊急薬品で、どう対応したらよいかと。様々リスクを想定しながら「安全で快適な歯科医療」を提供するために日々研鑽を積んでいます。

 先生方も生活歯の形成や抜歯に際して、麻酔効果を得る必要最小本数のカートリッジを準備する、痛みを和らげるために31Gの針を使うなど、何気なく歯科麻酔学的配慮をされていると思います。その配慮が功を奏せば「先生の注射全く痛くなかったです!」とか、「もう注射したのですか」など、患者さんから絶大な信頼となりますが、時として「手が震えてきました」とか、「息が苦しくなってきました」と、思いがけない事態に遭遇することがあります。これは患者さんにとっての局所麻酔が ①「不安」や「緊張」といった精神的ストレス ②注射による痛みや外科処置による身体的ストレス ③局所麻酔薬や内服薬といった薬物ストレスとして生体に働くことで、患者さんの生体予備力の範囲を逸脱した時に引き起こされる生体反応です。私たち歯科麻酔科医は、この様な偶発症を未然に防ぐために ①術前の適切な診査・診断とリスクファクターの把握 ②適切な局所麻酔薬の選択 ③静脈内鎮静法の活用しながら歯科麻酔学的配慮を行います。

① 術前の診査・診断に大切な生体モニタ

 問診票に高血圧症の記載があっても、内科に通院されて循環コントロールされている患者さんもいれば、収縮期血圧が200に迫っているにもかかわらず自己判断で健康状態に何も記載しない患者さんもいらっしゃるわけで、生体モニタを装着して初めてこれらの数値がわかります。収縮期血圧が180、拡張期血圧が100を超えている場合は歯科治療やインプラント手術を延期して、主治医への診療情報提供依頼書を作成します。その上で、循環器系疾患のコントロールがなされた後に歯科治療を行うといった歯科麻酔学的配慮が大切です。

② 適切な局所麻酔薬の選択(アドレナリンか? フェリプレシンか?)

 歯科で使用される局所麻酔薬は、最も使用頻度の高いリドカイン製剤のほか、プロピトカイン製剤、メピバカイン製剤の3種類があり、どの局所麻酔薬を選択したらよいか悩むと思います。従来、フェリプレシン添加プロピトカイン製剤は循環器系への影響が少ないことから虚血性心疾患患者に対して安全に使用できると考えられていましたが、いくつかの研究により心筋組織酸素分圧を低下させることがわかり、循環への影響を考慮する必要があると考察されています。つまり循環器系疾患患者に対する局所麻酔薬はアドレナリン添加リドカイン製剤を選択して適切な使用量を守ることが大切です。その使用量については、健康成人であれば8本程度、循環器系疾患患者で、頭痛や胸痛がなければ2本、症状を伴う場合では1本までが使用可能な目安となります。

③ 全国のクリニックで活用できる『静脈内鎮静法』

 生体モニタを用いてリスクファクターを把握し、適切な局所麻酔薬を選択したら、あとは歯科治療や手術に際したリスクマネジメントが大切です。緊張や不安を和らげ、眠っている間に歯科医療を提供できる静脈内鎮静法は、患者さんはもちろん、術者にとっても、クリニックにとっても、安全で快適な歯科医療環境となります。そんな安全で快適な歯科医療を届けることのできる静脈内鎮静法ですが、見よう見まねで実施しようとすれば医療事故につながる可能性が高まりますし、知識と技術を身につつけるには大学病院で3年程度の研鑽が必要となります。そこで私たち歯科麻酔科医のグループCDACでは、開業医の先生が『静脈内鎮静法』をより身近に活用できる医療連携サポートhttps://www.cdac-masui.com/)を整えて、歯科麻酔科医とのチーム医療に取り組める環境を作りました。受付で患者さんを目の前にして術者とクリニックの手術できるスケジュールを確認しながら歯科麻酔科医に依頼できるのです。皆さまのクリニックで静脈内鎮静法を活用して頂き、日本中の患者さんに安全で快適な歯科医療を届けるために、全国で活躍するCDACメンバーと共に歯科麻酔科医としての貢献を進めていきます。

雨宮 啓
藤沢歯科ペリオ・インプラント

住所:〒251-0055神奈川県藤沢市南藤沢21-6-4F
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