産経新聞 2013年12月30日(月)7時55分
■女子長距離2冠「みなさん、びっくりしたと思う」
頬が緩んでいた。女子5000メートルを制し、前日の3000メートルと「2冠」を達成した藤村は「目標にしていた。すごくうれしい」と笑った。そして「みなさん、びっくりしたと思う」とも。自ら認める伏兵が、女子長距離の新女王に躍り出た。
抜群の安定感だった。終始1周400メートルを33~34秒台で滑りきった。圧巻は最後の1周。ライバルたちが35~36秒台に落とす中、33秒台にギアを上げてみせた。
「最後まで我慢できるのが強み」と言い切る強靱(きょうじん)さを証明した。
苦労人だ。白樺学園高時代にW杯代表入りし期待されたが、日体大進学以降は結果が出ず、卒業後も所属先が見つからなかった。
高校時代に指導を受けた小竹直喜コーチを頼り帰郷。
北海道音更(おとふけ)町の歯科医院で「オフシーズンは受け付けをして」競技を続ける。
154センチの小さな体で短いストライドを小気味よく刻む。12分間全力で滑り続ける練習などで持久力を磨いてきた。
「できるまで頑張る才能がある」とは小竹コーチ。本人も「ソチ五輪でもしっかり滑りたい」。これまで積み重ねてきた時間をすべてぶつける。(榊輝朗)
◆スピードスケート ソチ冬季五輪代表選考会第2日
報知新聞 (28日・長野市エムウエーブ)
男女4種目を行い、道産子の“初五輪当確”が相次いだ。女子3000メートルでは藤村祥子(26)=宝来中央歯科=が4分9秒55で優勝、派遣標準記録も更新し、初の五輪代表入りを確実とした。
同500メートルでも、4年前の選考会で転倒し涙をのんだ辻麻希(28)=開西病院=が合計1分16秒79で2位に入り、2本とも派遣標準を突破した。
男子5000メートルでは、浦河町出身のウィリアムソン・師円(山形中央高3年―浦河第二中)が6分34秒54で制し、日本男子で22年ぶりの高校生五輪代表を確実にした。
身長154センチの“伏兵”が、強豪たちを一気に出し抜き、夢舞台切符を確実にした。藤村は「最後まで粘り強く滑ることができました。正直、この結果はビックリです」と会心レースに笑顔を弾ませた。
前半は同走・菊池(富士急)に先行されたが、中盤は32秒台の安定したラップを刻み、最後2周も33秒台でまとめ、唯一4分10秒を切った。派遣標準記録も低地(4分15秒)はもちろん、高地(4分10秒74)もクリアする快走だった。
白樺学園高時代は3年の高校総体1500メートル、3000メートル2冠、世界ジュニア代表にもなったが日体大進学後、低迷。
大学卒業時、スケートを続けるかどうか悩んだ末「4年後のソチ五輪を目指したいので、指導をお願いします」と高校時代のコーチで音更町で農業を営む小竹直喜さん(43)に嘆願。
情熱に感銘した小竹さんが地元スポンサーを募り「宝来中央歯科」が3年前にチーム登録、小竹さんが監督となり二人三脚の指導を実践。小竹さんが出荷する小豆の納入メーカー、京都銘菓「おたべ」もユニホームスポンサーになってくれた。夏場も、小竹さんと親交のあるJR北海道スキー部クロカンチームの陸トレに参加、旭岳での往復5時間走などハード練習で心肺機能を鍛えた。
今季はW杯前半戦メンバーから漏れたが、今回の大会一本に絞り調整。コーナーで空けり気味だったキックを、氷面を長く押すように修正、記録向上につなげた。
高校3年で主将を務めた年に、白樺学園を名門に育てた坂井俊行監督(享年62歳)が病気で他界。「頂点を目指すには人と同じことをやっていてはダメ」という教えが今も心の糧になっている。藤村は「五輪代表が決まれば、今までお世話になった人たちの恩返しのつもりで、人生最高の滑りをしたい」と初の夢舞台へ視線を向けた。
◆藤村 祥子(ふじむら・しょうこ)
1987年4月26日、美幌町出身。26歳。スケートは小学1年から。美幌中で全国中学3位、日体大1、3年でユニバーシアード出場。卒業後1年間、群馬県スケート連盟に所属、3年前から宝来中央歯科(音更町)に所属。154センチ、50キロ。血液型A。家族は両親と妹。
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