福島民報 2013年12月24日 08:25
東京電力福島第一原発事故を受け、県歯科医師会は環境省の研究事業として、県内の子どもの乳歯に放射性物質のストロンチウム90が含まれていないかどうかの調査に乗り出す。
大規模な乳歯の調査は初めて。
会員の歯科医療機関で治療の過程で抜歯した乳歯を提供してもらい、東北大と奥羽大と連携して調べる。
県外でも調査し、県内の結果と比較することで、安全性を確かめる。
専門家は「放出量のデータなどから、検出値は限定的と考えられるが、立証されれば、安心材料になる」と注目している。
環境省の「放射線の健康影響に係る研究調査事業」に採択された。対象は5歳から15歳程度までの子どもを想定している。
会員の歯科医療機関で治療の過程で抜歯した乳歯を本人や家族の了解を得て回収し、分析する。結果は全ての家族に説明する。
具体的には、まず1本ごとにセシウムを含めた放射性物質全体の含有量を分析する。
県外の歯科医師会の協力を得て、九州や北海道など本県から離れた地域でも同様の調査をする。県外の結果と比べて含有量が特に多い歯については、1本ごとにストロンチウム90の含有量を詳しく調べる。
それ以外については10本単位でストロンチウム90とセシウムを分析する。
微量のストロンチウム90の含有量を確認するには極度に精度の高い分析作業が必要で、高精度の検査機器とノウハウを持つ東北大が担う。
奥羽大は県内の関連データの収集・整理などに当たる。県歯科医師会は年内にも両大学と調査協力に関する協定を結ぶ。
年明けにもモデル的に調査を始め、乳歯の回収方法や分析態勢などを整える。
来年度は1000人から2000人規模で実施し、その後も継続的に調査する考えだ。
調査の要望が多い場合、年間の調査本数を増やすことも検討する。
原発事故で放出されたストロンチウム90は体内の骨や歯にたまりやすいとされ、県民の一部に内部被ばくを懸念する声がある。
県歯科医師会の海野仁専務理事(52)は「実際の分析データを明らかにすることで、安心材料を届けたい」と調査の意義を説明する。
平成23年9月に文部科学省が公表した県内の環境中の放射性ストロンチウムの測定結果によると、土壌中に含まれる放射性ストロンチウムの濃度は放射性セシウムと比べて平均で100分の1以下と低かった。
放射線の健康影響に詳しい長崎大の高村昇教授(45)は「これまでの放出量のデータなどから見て、検出されたとしても極めて限られていると考えられる。調査によって立証されれば、安心につながる。調査結果は対象者に丁寧に説明してほしい」と話している。
県歯科医師会は調査の仕組みが整い次第、県民からの調査申し込みや問い合わせの窓口を設ける方針。
■県の内部被ばく検査「健康に影響なし」
県は平成23年6月27日から今年10月31日までに16万4142人を対象にホールボディーカウンターによる内部被ばく検査をした。
成人で向こう50年、子どもで70歳になるまでの内部被ばくの累積線量を示す預託実効線量は、99・9%が1ミリシーベルト未満となっている。
このほか、1ミリシーベルトが14人、2ミリシーベルトが10人、3ミリシーベルトが2人で、県は「全員、健康に影響が及ぶ数値ではない」としている。
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