「改定の議論の場は中医協」、財務省をけん制
m3.com 2013年12月11日
12月11日に開催された中央社会保険医療協議会総会(会長:森田朗・学習院大学法学部教授)で、2014年度診療報酬改定に対する中医協としての意見書を取りまとめ、厚生労働大臣に提出した(資料は、厚労省のホームページに掲載)。
意見書は、社会保障審議会の「2014年度診療報酬改定の基本方針」に従い、医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実を重点課題とするなどの基本認識については、意見の一致をみたとしている(『2014年度改定の基本方針ほぼ了承、医療保険部会』を参照)。一方で、改定率については、支払側からは「診療報酬全体ではマイナス改定とすべき」、診療側からは「消費税率引き上げ対応分を除いた全体(ネット)でプラス改定は必須」とそれぞれ相対する意見が出ていたため、両論併記にとどめている(『“医療崩壊”の悪夢再現、阻止を!』を参照)。
さらに、「今後とも、中医協こそが、責任をもって診療報酬改定の具体的な検討を行う場である」と明記している。この点が今回の特徴で、背景には、財務省が改定率にとどまらず、改定の中身にまで意見を出す構えを見せている現状がある。「診療報酬改定は、本体、薬価および特定保険医療材料価格の改定を一体的に実施することにより、医療費の適切な配分を行うもの」とも記載し、薬価改定財源を診療報酬本体の改定財源に充当する従来のやり方を止めようとする財務当局の動きを、けん制している。
「財務省、大きな方針転換」、中川日医副会長
意見書は、11月27日の中医協総会で、支払側と診療側双方が提出した意見を基に、公益側が取りまとめた内容。双方から意見書そのものには異論が出なかったが、改定に関連した質問が幾つか出た。
「薬価改定財源を、診療報酬本体の改定財源にしなかったことは過去にあるのか」。
厚労省に対して、こう質問したのは、日本医師会副会長の中川俊男氏。
厚労省保険局医療課長の宇都宮啓氏は、「トータルでマイナス改定になった場合には、結果としてそのような場合(薬価改定財源を本体改定財源にしなかった場合)があったということ」と回答。
この答えを不服とする中川氏は、2000年代に社会保障費の自然増が年間2200億円抑制されたことを例に挙げ、2008年度改定でも、薬価・材料費の引き下げ分に伴う国庫負担分960億円は、本体改定財源に充当されたとし、「薬価改定財源が充当されないのは、極めて異例なこと」とし、大きな方向転換を図ろうとしている財務省の動きを問題視した。
日本医師会社会保険診療報酬検討委員会委員長の安達秀樹氏は、意見書の最後に「我が国の医療が抱える様々な問題を解決するには、診療報酬のみならず、幅広い医療施策が講じられることが必要であり、この点についても十分な配慮が行われるよう望む」との一文についてコメント。
「今回の診療報酬改定は、社会保障・税一体改革の中で、消費税率の引き上げも踏まえた改定。増税分は社会保障の充実に充てるとされているが、診療報酬改定の引き上げ分は最低限にして、補助金などの財源にすることで、社会保障への税投入を図ろうとする姿勢が顕著に出ている。だから、この文章には違和感を覚える」。
補助金による医療体制の充実を否定するものではないが、マイナス改定との声もある中、ネットでプラス改定を求める立場としては、補助金への言及は不要というのが安達氏の考え。
そのほか、健康保険組合連合会専務理事の白川修二氏からは、意見書の参考資料として、消費者物価や賃金の動向に関する資料も添付するよう要望が出た。
過去の意見書でも言及していたこと、支払側の主張を裏付ける資料であることなどが理由。今回の中医協の議論では、消費者物価や賃金の動向には言及していない上、「お互いが我慢しながら、ようやく意見書にたどり着いたという認識がある。
資料を付けるなら、我々も資料を付けたい」(中川氏)などの意見も出て、見送られることになった。
(橋本佳子:m3.com編集長)
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