毎日新聞 2013年11月23日 18時22分
「『患者のため』として、コンプライアンス(法令順守)を軽視する風潮がまん延していた」。保険適用外(当時)のレーザー装置「Vビーム」を使った治療を巡り、約1500万円の診療報酬の不正請求が明らかになった淀川キリスト教病院(大阪市東淀川区)。
全国有数のホスピス・緩和ケアで知られる病院の関係者は、不正受給の背景をこう指摘した。
一方、報告を受けながら、問題を放置している厚生労働省近畿厚生局の対応には、不可解な点が残る。
「現場ではよくやられていること。不適切な行為が正当化されていた」。
今回の不正を受けて、ある病院関係者は、こう明かした。
関係者によると、今回の不正は、ある職員が「実は」と打ち明けたことが発覚の端緒だったという。さらに、他に不適切な医療行為や手続きがないか、当時の院長が調査を指示。その結果、無届け施設での医療行為の問題が見つかった。
関与した医師や職員らは「患者のためにやったこと」と口をそろえて釈明したという。
「淀川キリスト教病院からうみが出るなら、それが一番いい」。
別の病院関係者は、取材に心境を明かした。
一方、近畿厚生局は指導などに動く様子は見られない。
毎日新聞が入手した内部資料には、同局との面談記録が記されている。
2012年2月、病院側は同局の担当者と面会した。
「当時の指導官から、必要であればこちらから連絡するので待つようにという話だったので、指示を待った」。
病院側が説明すると、同局側はこう答えた。「既に(診療報酬を)返還しているのかと思った」
診療報酬は、健康保険組合が、加盟する企業と従業員から集めた保険料から、医療機関の請求に応じて支払われる。
保険料は従業員の月収で決まるため、不景気で給与水準が下がると組合の財政も悪化する。大阪市の製造業系の健保組合幹部は、診療報酬の不正請求を批判した。
「健保組合の財務状況はどこもギリギリ。不正請求は許し難い」
【杉本修作、吉田卓矢】
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