顎顔面口腔外傷の安全と安全意識の向上

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寝たきりの原因 転倒骨折と咬合の確立

 

 健康スポーツ歯科全国指導者講習会から(中)

  

 健康スポーツ歯科全国指導者講習会は既報のとおり、

1月28日、歯科医師会館7階会議室で開かれた。

明海大学歯学部の安井利一教授は講演で、

健康スポーツ歯科医がどのようなものであるかを総論で述べ、

「健康スポーツ歯科医という人がいるのではなく、

先生方一人ひとりが健康スポーツ歯科の理念をもって、

診療にあたっていただくということである」と理解を求めた。

以下概要を紹介する。

<基調講演の要旨>

安井利一・明海大学歯学部教授

「何かスポーツをしていますか?」

「ジョギングでは、バランスがとれて走れていますか?」

と聞くことでスタートする。

歯科医療とスポーツが関係することを歯科診療所のなかで啓発する。

各論では、スポーツ歯科とはなにかを述べる。

具体的には、3つの目的をもっている。

咬合関係の維持。

寝たきりとなるのは、

転倒して骨折することが原因でもある。

転倒外傷によって13%〜15%が

寝たきりになるとされている。

何のために義歯を入れるのかの理由として、

重心動揺、身体のバランスをとることも重要な要素となる。

階段や縁側を下りるときに、つまずいて転倒をする、

骨折を起こす。

それを予防するためには、カラダのバランスをとっていかなければならない。

まず、そのためには咬合の確立が重要である。

国民は転倒する原因については、

よもや咬合と関連しているとは思っていない。

実はここにQOLの向上、健康寿命の延伸が大きなポイントになるのも事実である。

患者さんにも『転倒防止』が歯科できることを分かってもらう。

また、顎顔面口腔外傷の安全と安全意識の向上については、

教育を通じて啓発をする。

ぜひ、教育の面で先生方に関わっていただきたい。

マウスガードは重要な安全具である。

さらに、スポーツ歯科を通じて、

スポーツ競技力の維持・向上に寄与することである。

口腔内装置(スプリントなど)による競技力の変化、

咬合関係の保持そのものが重要な要素となる。

生涯スポーツでは、健康寿命の延伸が目的であり、

健康スポーツ歯科から支援をする。

国の健康指針には、運動、栄養、休養とある。

日本歯科医師会の大久保満男会長は、

口から食べることの大切さの話をされている。

口から食べないと元気の源にならない。

食べることと同時に運動、生涯スポーツであるならば、

まず咬合の確立(維持・向上)を考えていく。

口腔のケアをしながら筋トレをしていくことが、

身体にもいい影響を与えていく。

住民の運動に対する各種のイベントが行われているが、

ぜひそのなかに先生方も加わっていただき、噛むこと、

咬合の確立が運動にも関係していることを伝えていただきたいと思う。

例えば、片足立ちも、ガムを必死になって噛むと咬合によって、

活性化される。

三叉神経を通じて、運動野が刺激され色々な神経に影響を与える。

また、スポーツ歯科と歯科医師の役割では、

サポートが基本であり、

競技チームへのサポートの機会をつかまえてほしい。

市町村などの体育協会との交わりがあるときには、

ぜひ積極的にアプローチをしていただきたいと考えている。

歯科的健康管理では、メディカルサポートは、

1)スポーツ継続のためのデンタルチェック、

2)歯科疾患および歯科的問題点に対する診断・治療・予防、

3)スポーツ歯科外傷に対する安全対策、の3つである。

スポーツの特性を考えていただきたいと思う。

重心動揺は、足はとまって動かないでいるが、

実は頭の動きが重要である。

これには咬合をきちんと確立してあげることによって、

本当に重心動揺は変化をする。

静止運動には特に、顎運動と咬合の調整に

気をつかってあげることが大事だと思っている。

クラウン、インレー一つでも『カラダのバランス』に

影響を与えていないかどうか、

それくらいの注意がスポーツ選手にとっては重要である。

口腔疾患の予防についてであるが、

運動・スポーツ時の多量汗により、

脱水や口の渇きが生じる。

唾液の分泌量の減少で口の渇きが生じる場合もある。

スポーツ選手は昔、合宿へ行くのでとりあえず、

歯の痛みをとめてもらえばいいという状態で治療、

予防を放置していた。

そこでスポーツ選手との時間を共有することが、

治療、予防には大事である。

競技特性では、ラグビーのようにマウスガードの装着が

高校生が義務化されている競技もある。

顎顔面口腔の外傷をするとあとのトラブルが大きくなって

きているので、コンタクトスポーツでは、

マウスガードの需要が段々増えているところである。

また、咬み合せによって外傷につながることもあるので、

口腔内のチェックが必要である。

できれば、「シーズンオフにチェックをしようね」

と選手と時間を共有する。

スポーツマウスガードについて、

基本のところを確りと押さえていただきたい。

競技によっては、厚さを変えてマウスガードを

作製するケースなどバリエーションもある。

各種のマウスガード作製のための講習会が

行われているので、基礎の部分について

理解をしていただきたいと考えている。

外傷の予防、軽減以外、スポーツ競技力、

運動能力の向上に寄与する、ということなどについても

日本スポーツ歯科医学会で検討をしている。

特に咬合が重要視されているのは、筋力、

重心動揺であり、スポーツをする上で

大きく影響を与える意味である。

スポーツ選手は自分の歯を守って、

きちんと咬合が管理できる状況であることが大事である。

歯の欠損できたら補綴をする。

そして、左右のバランスを失わないようにすることが基本である。

あくまで咬合の確立が重要なので、

歯科医師の先生方にお世話にならざるをえない。

さらに、スポーツ栄養であるが、

各種スポーツ団体は栄養士を雇って栄養管理を行っている。

噛めない、飲めないでは栄養をバランスよく摂取できない

ので、歯科医師が栄養士と協調することが大切である。

また、ドーピングの防止では、検査の対象となる局所麻酔については事前に報告しておく必要もある。

禁止されている薬剤では、選手の健康を害するものもあり、

歯科とは直接関係がないが、スポーツ歯科の理念として、

ドーピングの防止に関心をもっていただきたい。

選手のなかには、『強くなりたい』

とだけしか考えていない選手もいる。

そこで健康スポーツ歯科という理念のなかで、

ドーピングの防止へのよき理解者となっていただければと思う。

スポーツ現場での負傷者に対する救急処置と応急手当がある。

生命の確保(救命処置、心肺蘇生)、

スポーツドクターとの連携である。

スポーツドクターは整形医が主であり組むことが多いが、ほかは内科ある。

歯科医学、歯科医療としての先生方のサポートが、

選手たちや国民にとって大きな力となる。

これまでの話を、都道府県歯科医師会に持ち帰り、

スポーツ歯科の理念を歯科診療所のなかで広めて

いただきたいと思っている。

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