男女比:2対5 女性に多い顎関節症
筋痛・顎関節痛によって下顎位が偏位し、咬合も変化
日本臨床矯正歯科医会の平成21年度2月例会が2月17、18の東京・丸の内の東京ステーションコンファレンスサピアタワーで開かれた。
今回の例会では、埼玉医科大学の依田哲也教授の特別講演「顎関節症診断のガイドラインと咀嚼筋腱巻く過形成症の話」や北海道医療大学の安彦善裕教授の心療内科と矯正歯科治療の接点である「矯正歯科治療に考慮すべき、患者の精神医学・心理学的背景」の教育講演が行われた。
また、社会医療委員会からレセプトオンライン化について、広報委員会から外部から見た特別広報事業についての講演があった。
会員発表、症例展示なども行われた。
◎特別講演<要旨>
「顎関節症診断のガイドラインと咀嚼筋腱膜過形成症の話」
埼玉医科大学の依田哲也教授
顎関節症とは顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名。
その病態にはⅠ型:咀嚼筋障害、Ⅱ型:関節包・靭帯障害、Ⅲ型:関節円板障害、Ⅳ型:変形性関節症などがある。
したがって顎関節症という総括的診断のみでスプリントなどの治療を選択してはいけない。
顎関節症Ⅰ型咀嚼筋障害と診断したかたこのスプリントとする。
もし顎関節症Ⅲb型:非復位性円板前方転移(クローズドロック)と診断すればマニピュレーション等で円板の復位を検討することになる。
このように症型毎に異なった治療法を選択することが必然であり、症型診断は不可決。
また、顎関節症の発症については、内在性外傷やパラファンクション、心理的要因の関与が唱えられており、咬合異常については、発症の直接的原因とする科学的根拠が得られないのが現状。
したがって顎関節症は歯の位置や形を変える治療法だけでは治せない疾患であることを、歯科医師は認識する必要がある。
ところで、我々の施設に顎関節症の診断で開業歯科医師から紹介された患者の20%弱は誤診であり、顎関節症以外の疾患であった。
その内訳は、身体表現性障害といった心身症が最も頻度の高いものいであった。
次いで多かったのが咀嚼筋腱膜過形成症。
こんも疾患は側頭筋や咬筋の腱膜が過形成することで筋の伸展が制限された開口障害をきたす疾患。
この数年間で非常に注目を浴びるようになった。
両側性で思春期から徐々に発症する。
これには、腱、腱膜の切除で劇的に改善する。
そこで、けして珍しい疾患ではなく、疫学的に1%程度の頻度はあるのではないかと推測している。
自覚の契機
歯科治療時に指摘:60・4%
自分で気づいた:6・0%
家族等の指摘:4・4%
その他:1%
不明:27・6%
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