東日本大震災による遺体の身元確認に力を尽くす人々を取材しました。
フジニュースネットワークから引用
年の瀬を迎えたものの、東日本大震災の被災地では、いまだに多くの遺体の身元がわからないままとなっています。
「1人でも多くの家族のもとに返したい」と、遺体の身元確認に力を尽くす人々の姿を取材しました。
たくさんのおもちゃに囲まれているのは、宮城・山元町の寺「明光院」で供養されている男の子のものとみられる遺骨。
まだ身元が判明しておらず、「遺体番号906(きゅーまるろく)」と呼ばれている。
明光院の宮部龍真副住職は「ずいぶん軽いなと思いましたね。
906番とはなっていますけれども、できることなら、一刻も早く名前を知っている方に、名前を呼んでいただくことがいいかなとは思う」と語った。
こうした身元のわからない遺体は12月21日現在、646体ある(警察庁調べ)。
時間がたつにつれ、外見や着衣などから身元を特定することは、困難になっている。
そんな中、継続的に効果を挙げているのが、歯を使った身元確認だった。
警察歯科医の江澤庸博さんは、震災直後から、遺体の歯のデータを集め続けてきた。
身元確認班の班長・江澤さんは「われわれだって、そんなに(多い)遺体を見たことがないわけですから。
やっぱり、無我夢中だったとしか言いようがないと思いますね」と語った。
江澤さんは、混乱の続く中、全国から集まった歯科医師らに、歯の情報を詳細に記録するよう指示した。
この時の記録が、現在、歯からの身元確認のもとになっている。
震災後、東北大学では、遺体と生前の歯の治療記録を照合するシステムを開発した。
身元確認作業の効率を飛躍的に上げたのがこのシステムで、32本ある歯の状態を、健全な場合を「1」、歯がない場合を「4」などと、1から5までの数字で表すことで、数千件のデータの中から、似た特徴を持つ候補者を素早く絞り込むことが、日本で初めて可能となった。
開発を手がけた東北大学情報科学研究科・青木孝文教授は、「家族は必死になって捜すわけですよね。
1,000人ぐらいのご遺体を、毎日のように探して歩く方もおられます」と語った。
青木教授は、宮城・石巻市出身で、震災後、無数の遺体の中から身内を探す人々の姿に胸を痛め、「遺族の苦労を減らしたい」という気持ちが、このシステムの開発につながったという。
宮城県警では、このシステムで絞り出された候補者と遺体が、同一人物かどうかを最終的に判定する作業が、歯科医師と鑑識課警察官らによって、今も続けられている。
例えば、今回初めて報道陣に公開された、9月に身元が判明したケースでは、候補者の生前のカルテと遺体のデータを比べると、左下奥歯にあたる3本の歯が、どちらも「部分入れ歯」だったことがわかった。
こうして矛盾点がないかどうかが確認されたあと、最終的に「同一人物である」と判定された。
宮城県警鑑識課の伊東哲男機動鑑識隊長は「今まで発見されたご遺体全てを、ご家族のもとにお返ししたい」と語った。
こうして、歯から身元が確認された遺体は12月13日現在、宮城県内で801体(警察庁調べ)。
しかし、津波でカルテなど生前の資料が流出し、照合できないケースも多く、歯の情報をデータベース化する必要性が指摘されている。
青木教授は、「実際にご自身の歯の情報をとっておくのは、残された家族のため。(歯の)情報が津波のような災害で失われないように保存をする、そういった法整備が絶対に必要であると感じます」と語った。
全ての遺体が家族のもとに返される日を願い、身元確認作業は続けられている。
日本歯科医師会では、大規模災害や事故に備えて、国と協力して国民の歯のデータベース化を進めていきたいとしていて、すでに検討を始めている。
(12/26 12:24)
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