診療の結果で余命が延長しQOLが改善される (上)

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日本臨床矯正歯科医会6月例会特別講演から

 

日本臨床矯正歯科医会(平木建史会長)の平成22年度6月例会は6月24日、東京・千代田区九段北の住友不動産ビルのベルサール九段で開かれた。

症例展示、会員発表(平成21年ど例会アンコール受賞者発表)、特別講演1「口腔機能療法」、委員会プログラム(社会保険委員会)「平成22年度診療報酬改定について」、特別講演2「医療の質を測定し改善する:聖路加国際病院の試み」福井次矢さん(聖路加国際病院院長)が行われた。

昼食後に総会、会員協議会も行われた。

なお、スタッフプログラムでは、歯科衛生士の武田全代さんが、「筋機能療法を応用した口腔機能改善」と題して講演した。

来年の2月例会は、「雪まつり」期間に合わせて、2月9、10両日、北海道・札幌で開くと発表され、スライドを用いて参加を呼びかけた。

また、終了後、会場の隣の部屋で懇親会が行われた。

特別講演2「医療の質を測定し改善する:聖路加国際病院の試み」を以下、紹介する。

  

「医療の質を測定し改善する:聖路加国際病院の試み」(概要)

  

 福井次矢さん(聖路加国際病院院長、京都大学名誉教授)

巷にはびこる「病院ランキング」には、根拠がない。

病院の職員たちの慢心を誘導しているとしか思われない。

電子カルテは、本来、何のための導入なのか?

二次利用が乏しいと思われる。

電子カルテの導入で、医療の質は果たして上がっているのだろか?

EBM (evidence-based medicine:根拠に基づいた)が日常診療で、どれくらいやられているのか?

医療サービスの現場では、本来やるべきことがやられているのか?

EBMにどれくらいの効果があるのか?

医療現場では、医療従事者が責任をもってやっているのか?

以上の疑問の上で、福井次矢院長は、臨床疫学サービスを作るこことした。

それが、『ヘルス・サービス・リサーチ』。

ヘルス・サービス・リサーチの視点でも、EBMの検証に興味があったのである。

チーム医療であるので、医療従事者が同じ目標、同じ視点、同じ立場で、医療費の質、医療サービスの向上を目指していく。

福井次矢院長の個人的な興味から出発した『ヘルス・サービス・リサーチ』であった。

医療の質を向上させるには、そのプロセスが非常に重要だと強調していた。

つまり、医療の質を向上のために何をしたのか、その実践が問題。

『ヘルス・サービス・リサーチ』を支えるスタッフが、診療情報管理士。

医療の質は、1)施設の構造(ストラクチャー)、2)診療の過程(プロセス)、3)診療の結果(アウトカム)という3つの側面から評価される。

そのなかで、最も重要なのがアウトカム。

診療の結果では、余命が延長し、QOLが改善される。

そして、このアウトカムを最良のもの9とするためには、医療従事者が「適切な診療」を行うことが必要である。

「適切な診療」とは、つまるところ、「これまで行われてきた研究の成果・エビデンス」。

つまり、最も信頼性の高い・質の高いエビデンスを医療従事者が知っているかどうかである。

個々の患者に特有の病状、意向・個別性がある。

また、医療現場の様々な状況に配慮しながら行う診療は、エビデンスに基づいて行われなければならない。

したがって、個々の医療施設や医師がEBMをどの程度実践しているかを知ることが必要である。

すなわち、医療の現状評価なくして、医療の質の改善はありえない。

医療の質を評価することで初めて、改善の余地を認識できる。

つまり、医療の質の評価とは、エビデンスと実際に行われている診療の乖離を認識することだ。

そして、認識させたら、改善に向けて強く動機付けをさせられる。

エビデンスと診療との乖離の有無・程度を示す指標を質指標(Quality Indicator: QI)という。

聖路加国際病院では、電子カルテ・システムの導入後、2004年以降の診療データを用いてQIを算出し、公開してきた。

例えば、降圧薬を処方されている65歳以上の高血圧患者のうち血圧140/90㎜Hg以下になっている患者の割合、3か月以上当院の医師から血糖降下薬を処方されている糖尿病患者のうちHbAlcが7.0%未満の患者の割合である。

QIの算出と公開が多くの職員の行動変容につながり、当院の医療の質の改善に大きく貢献している。

(以下、後日、掲載)

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