義歯は清潔に手入れが大切

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第4回「介護予防・認知症予防総合フェア」から

東北大学大学院歯学研究科教授・濱田泰三さん

口腔の衛生状況と全身疾患との間には、きわめて相関性が高いことが、さまざまな研究から明らかにされています。

例えば、残っている歯の少ない人ほど、うつ傾向が強く認知症にもかかりやすくなります。

歯の平均残存数は、認知症ではない人が9本であるのに対し、脳血管性認知症6本、アルツハイマー病3本だったというデータがあります。

80歳になっても自分の歯が20本以上ある"8020"達成者は、非達成者に比べて、年間歯科医療費は3655円高いのですが、医療費総額では32万3200円も安くなっているという報告もあります。

歯の残存数が少なくなった人は、義歯を入れ、かむ大切さを忘れないようにすることです。

広島県尾道市の調査では、歯の残存数が8本以下であっても、義歯で回復できている人は、食事、入浴、トイレなど、身の回りのことができる自立生活度(ADL)が、義歯を入れていない人よりも高いという結果でした。

義歯によって、生活の質(QOL)も確保することができます。

しかし、義歯には、はずれる、ゆるい、おちてくる▽汚れる、におう▽かめない▽しゃべりにくい−−などのトラブルがつきまといます。

義歯の調子がおかしくなったら、我慢は禁物です。

ゆるくなった時には、直ちに、歯科医にリライン(裏打ち)をしてもらってください。

大切なことは、手当てを忘れないことです。

ことに下の歯を義歯にした場合は、どうしてもゆるみやすくなります。

その対策として、現在では、インプラント(人工歯根)と入れ歯を組み合わせてつくるというのが世界的な標準治療です。

口腔を清潔にすると、死因4位である肺炎を予防することができます。

米山武義先生や佐々木英忠教授らの研究で、入れ歯の汚れが誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こすことが、明らかになりました。

要介護者の口腔内カンジダ症の要因は入れ歯で、その発生率は、使用していない人の19・3倍も高くなるという報告もあります。

口腔内を清潔に保てば、全身疾患を予防できます。

このことは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの入居者を対象とした多数の研究で明らかにされています。

機能の優れた義歯を入れた時ほど、手入れが重要です。

例えば、やわらかい材料は汚れやすいので、注意しなければなりません。

口腔の天井にあたる口蓋(こうがい)に接する部分をメッシュでつくり、ワインなどの味覚を楽しむことができるよう開発された義歯がありますが、どうしても汚れやすくなりますから、食後に必ず義歯を洗う習慣を身につけたいものです。

口の快適さは、ケアあってのものです。

口腔内の汚れは、口内炎、口角炎を引き起こします。

義歯を作る時には、1マイクロメートルの精度が求められますが、口内炎があると歯肉が浮き上がってしまうので、まずその治療をしなければ、義歯は作れません。

ブラシなどで目に見える汚れを落とし、義歯洗浄剤で清潔にしましょう。洗浄剤は、成分によって、殺菌作用に優れる次亜塩素酸系、毒性が弱く、汚れや着色に対して効果を発揮する過酸化物系、磨きにくい部分の食べカスを分解してくれる酵素系などに分類され、30〜40種類が市販されています。

汚れの種類、義歯の素材にあわせて洗浄剤を選んでください。

汚れ過ぎてから、あわてて強力な洗浄剤を用いるのではなく、そのような不衛生な状態になる前に、常にマイルドなタイプの洗浄剤で洗う習慣をつけたいものです。

また最近では、口の渇き、ドライマウスを訴える患者さんが増えています。歯科受診者の50%が、ドライマウスを訴えている大学病院もあります。

義歯を入れるためには、口腔内が潤っていなければなりません。

専門医の指導に従って、口腔保湿剤や義歯安定剤を用いて、口の渇きに対処してください。

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