私立医科大学病院 3億6000万円の消費税を負担

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市民公開セミナー「医療と消費税」

8月21日 日比谷公会堂

基調講演の一部から

(敬称略)

今村聡(日本医師会常任理事 東京・板橋開業)

 

 

日本医師会のアンケートで、国民、患者さんに医療機関に消費税がかかっているかどうかを聞いた。

実は課税されていることを正確に知っているのは、ほぼ4分の1だった。

よく分からない、知らないが4の分3であった。

つまり、国民は事実をしらない。

国民の側からは、税の仕組が分からない。

消費税が平成元年に導入された時に、保険証を使っている医療、教育、埋葬、火葬、学校の授業料、アパートの家賃などが免税となった。

では、医療に起こっている問題は、他にも起こっているのかというと、これが大きな違いがある。

保険証を使っている医療は、公定価格といって私たちが値段を決めることができない。

今村医院の今村聡が自分の診察料を決めることはできない。

私たちは、公定価格の中で診療をしているので、消費税の問題を解消できない。

公定価格であることは大切なことだ。

アメリカのように医療費を自由価格にすると、どんどん医療費は高くなっていく。

日本は公定価格であるがゆえに、日本の国民は誰でも、日本中どこでも保険証1枚持っていけば、同じ値段で、それも安価な値段で何時でも公平に医療を受けることができる。

その意味で、公定価格は意味のあることだ。

しかし、公定価格であるがゆえに、消費税の問題が発生している。

病院、診療所、歯科診療所、薬局では、患者さんから消費税はいただいていない。

したがって、国にも税金を納めていない。

しかし、医療を行ううえで、医療機関は様々なものを購入したり、設備投資をしており、その度に消費税を払っている。

医薬品の会社や医療機器の業者、設備業者に消費税を払っている。

例えば今、東日本大震災があったので、今後、耐震改修をする。

あるいは、患者さんのために病室を広くする。

病棟が古くなったので、病棟を新しくする。

これには、何億円もかかる場合もある。

あるいは、何十億円もかかるかもしれない。

そうすると、その病院は10億円の病棟を新築すると、5000万円の消費税を払う。

今、医療がどんどん高度化されている。

最近の医療器械、MRI、CTなどを購入する。

1億、2億、数億円する医療器械もある。

その都度、消費税を業者に払っている。

また、日々の医療を行っていくうえで、医薬品を購入し、医療材料を購入している。

これには全部5%の消費税を払っている。

あるいは、給食、清掃、電気、ガス、水道など、これは一般家庭の方も同じであるが、これらにも消費税がかかっている。

事業者は消費税の性格から、プラス、マイナスゼロになり仕組である。

つまり、いただいた消費税と払った消費税をプラス、マイナスして国に収めるか、返してもらうかできる。

事業者にとって負担のない税金が消費税となる。

しかし、医療機関は一般の事業者と違って、消費税を負担している。

平成元年からこのようなことが放置されてきたが、実は消費税導入の当初からこういう問題が発生することは分かっていたことだ。

では、その中で何がなされたのか。

消費税が導入された平成元年と消費税が5%になった平成9年に、医療費の中に医療機関が負担している消費税の分を上乗せして改定する仕組ができた。

実はこの話をすると、極めて専門的なことなってしまうので、2部の方でご議論していただければいいと思う。

私が1例だけお話をさせていただきたい。

財務省や厚生労働省は、消費税の問題はもう折り込んであって解決ずみであると言い続けている。

実は実態は全く違っている。

例えば消費税が5%になった時、どうなったかと言えば、全身麻酔の料金に3000円消費税分を上乗せします、と処理された。

ところが、局所麻酔にはこのような上乗せはない。

何が起こるかと言うと、国民の側からあるいは患者さん側からは、全身麻酔では3000円の負担を負っていることになる。

あるいは医療機関の側から言うと、全身麻酔を行っている医療機関には消費税の補填があるが、局所麻酔の医療機関は全く補填がない。

国民から見ても医療機関から見ても不整合である。

今までは国民、患者さんが知らない中で、このような色々なことが行われてきた。

患者さんからは消費税は預からない。

しかし、医療機関は税金を払っている。

例えばある私立医科大学附属病院では、3億6000万円、毎年、消費税を負担している。

今、医療崩壊とされ、勤務医が忙しい中で勤務医を手伝う医療秘書を300万円で雇ったとしたら100人以上は雇うことができる金額を毎年、医療機関が税金として納めている。

5%の消費が10%になったら、どのようなことが起きるのか。

設備を新しくできないし、病院を維持することも困難になる。

医療は後退をする。

これは医療機関だけの問題ではなく、結局、医療機関が崩壊すると国民の側、患者さんの側にとって不幸なことになる。

日本の医療制度は、国民の宝だ、守っていかなければならない。

しかし、こんな税金の問題で医療が崩壊するようなことがあってはならない、と考えている。

医療費財源のために、税制を改正すると医療崩壊を加速させてしまう。

今日、参加された方たちと、どうしたらいいかを一緒に考えていきたい、と思っている。

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