特別講演「医療の質を測定し改善する」

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日本臨床矯正歯科医会6月例会特別講演から

 

日本臨床矯正歯科医会(平木建史会長)の平成22年度6月例会は6月24日、東京・千代田区九段北の住友不動産ビルのベルサール九段で開かれた。

特別講演「医療の質を測定し改善する:聖路加国際病院の試み」福井次矢さん(聖路加国際病院院長)が行われた。

以下、紹介する。

   

「医療の質を測定し改善する:聖路加国際病院の試み」(概要)

  

福井次矢さん(聖路加国際病院院長、京都大学名誉教授)

どのような病院でありたいのか?

どのような病院をめざすのか?

病院の管理は、常に同じ目標をもって行われるべきだ。

私は年の初めに8項目の運営の基本指針を掲げたが、できるだけ簡潔な文章で表わした。

そして年度末に評価をする。

医療の質を高めるため、みんなで実践して実現する。

例えば、ある薬を処方すると、心筋梗塞を再発する患者が半分になる。

 そういう薬の効果を証明する。

基本はエビデンスをつくることであるが、エビデンスをつくるところまでは、みんなはやる。

しかし、実際にエビデンスがどれくらい行われているのか?

その効果がある、と証明されて薬が実際に患者さんに投与されて、患者さんが利益を受けているのか?

それを病院は責任をもって行っているのか、調べると意外に無頓着である。

エビデンスをつくると、研究者として非常に評価をされるので一生懸命研究はする。

では、そのことを日常臨床で行っても誰も評価はしてくれない。

このためにエビデンスは、これまであまり行われてこなかった。

これまで多く場合、病院の評価には何ら具体的な指標がなかった。

手術件数が多い、でも死亡率が高いでは患者さんの満足は得られない。

また2003年に電子カルテが導入された。

しかし、電子カルテのメリットは目に見えてこなかった。

カルテの電子化で医療の質を何とか向上させたい。

つまり電子カルテの二次利用したいと考えた。

電子カルテの導入で、こんない医療現場では苦労をしているのだから、患者の診療の質がこれだけ上がった、という電子カルテを『医療の質への還元』である二次利用にしたいと考えた。

電子カルテの導入で大量のデータを使えるようになった。

欧米では2000年前後から、電子カルテの二次利用はかなり行われている。

日本はその面では、明らかに遅れているという状況もある。

電子カルテと診療報酬を連動させる。

医療報酬自体、クオリティをクリアしていないと、評価されない仕組となっている国もある。

エビデンスに基づき、診療をしようと言われているが、やったあとの結果の評価はされていない。

けして診療ガイドラインでも、100%ガイドラインどおりにやれということではない。

エビデンスについてみんなが把握した上で、医療の質の改善に努めることが期待されている。

実践の部分の何をしたか、そこの部分が非常に重要だ、と最近の流れではなっている。

その時々の専門知識に合致していることであり、その診療の過程で、どうみてもベストの治療が行われているのかどうか?

医療の質を考えるうえで、診療の結果とともに、診療のプロセスも重要だ。

できるだけ高いエビデンスに則っているのかどうか。

エビデンスに基づいてガイドラインで治療をすると、ICUの在室日数、退院後の回復に大きな有為差がある。

これはがん患者の疼痛管理のガイドラインを使うか使わないかについても、有為差がみられるという論文もある。

診療ガイドラインは、医療の質の向上ではいい方向へ向かっている。

できるだけ、エビデンスレベルの高いものを参考にして、できるだけこのようのした方がいいと実践していけば、方向は間違ってないと思う。

エビデンスに則った診療ガイドラインがあっても、そのとおりにやっていない医師、病院もある。

しかし、医療の質にどれくらいのギャップがあるのかを知ることで、医療の質の改善につながる。

 最近はクオリティギャップとも言われている。

急性心筋梗塞患者のおける退院時処方率については、処方された患者さんは処方されなかった患者さんに比べると、再発率は3分の1に減少した。

また、肺炎患者における来院後4時間以内の抗菌薬投与であるが、特に高齢者の場合、2006年に69.6%が2008年75.4%となった。

エビデンスと診療との乖離の有無・程度を示す指標を質指標(Quality Indicator:QI)という。

測定するQIの方針

1)     できるだけプロセス指標をとりあげる。

2)     欧米の先行例を参考にする。

3)     各部署のヒアリング⇒意向を尊重。

4)     できるだけ多くの職種が関わる指標としる。

5)     測定のために、臨床現場で新たな仕事・負担が発生しない指標とする。

約100項目のQI測定を開始した。

例えば、転倒・転落の発生率を調べた。

病室とトイレ内が23%、ベッド周辺が28%であった。

手摺がないので転倒したことが分かった。

QI委員会は誰でも参加できるオープン委員会とした。

パフォーマンスを公開したが、その意義は、他者に見られる・観察されることでパフォーマンスが向上する。

また、比較されることにより向上する。

これはエビデンスとの比較であり、他の医師、施設との比較となる。

組織として介入する。

個人の問題だけではない、ということだ。

これは医療事故・過誤の経験から、「医療安全」を確保するためには、個人に任せるのではなく、組織としての体系たった対応が必要である、というパラダイムシフトが起こった。

同様のパラダイムシフト(組織としての体系立った対応)が、医療の質確保にも求められる。

オランダでは、QIについて、医療の質検閲が行われている。

フランスでは、保健省内に医療機関の質と安全局があり、QIを用いて、病院をA~Eに格付けている。

(以下省略)

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