河邊臨床教室 関谷昭雄さん(愛知県)の症例で見解

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第98回河邊臨床教室が11月18日、東京駅の八重洲地下街にある八重洲倶楽部で開かれた。

愛知県名古屋市開業の関谷昭雄さんが症例を示して、腰原好さん(東京歯科大学名誉教授)の意見を求めた。

下顎無歯顎シングルデンチャーの症例

<患者さんの要望>

1) 総義歯が軽快に痛くなく、使えるようにしてほしい。

2) 夜間就寝時に外しているが、これはどうか。

3)  リンゴを食べると義歯がこじれる感じがして痛い。

4) ステーキ、あられ、ピーナットなどを食べられるようにしてほしい。

5) 義歯症の変色、変質がない材料を使ってほしい。

(写真下:左が関谷さん、右は腰原・東京歯科大学名誉教授)

<尋ねたい事項>

 1) 特殊な印象法はあれば教えて下さい。

(当院ではワックスデンチャーによる咬座印象法を採用している)

2) 老化による粘膜の変化への対応。

 本症例は、高齢者で老化にともなう顎提粘膜の菲薄化が除々に進行すると考えられるが、その対応について。

3) シリコン軟性裏装材について。

 

<関谷昭雄さんの挨拶>

無歯顎難症例の診断と治療であるが、河邊清治先生には色々と昔、勉強させていただいてきた。

臨床で素人を専門家にするための教育として、最低限のポイントとして、最低限の機能を教えた。

「あとは自分で勉強しなさい」言われた。

やはり、歯科臨床では総義歯が一番難しい。

「よい形態はよい機能を発揮する」というPMSテクニックを私は応用している。

つまり、総義歯を「形態」という観点からとらえ、合理的な術式によって総義歯に優れた形態を付与することが目的である。

PMSテクニックは治療順序が明確で最終補綴に対する見通しが極めて容易である。

私は開業医であるので、一番簡単な総義歯製作の方法はないだろうか、と考えてきた。

症例は下顎無歯顎シングルデンチャーである。

患者は78歳、男性。

以下、関谷さんは症例と他院で作製された義歯の診断結果、治療計画、治療計画を紹介した。

(従来法や各種理論の主な疑問点と問題にもふれた)

「80歳になって、このような患者さんで困ってしまった」

このように述べた関谷さんの言葉を受けて、意見を求められた腰原好さんは、以下の見解を述べた。

  

<腰原好さんの見解>

下顎無歯顎シングルデンチャーの症例

<患者さんの要望>

 

1) 総義歯が軽快に痛くなく、使えるようにしてほしい。

これは、疼痛への対策であると思う。

原因には二つある。

一つは、義歯と粘膜の間の不適合による。

また、上下の噛み合せによって、義歯が動かされる。

義歯の動揺によって痛くなる。

この二つの大きな原因がある。

義歯と顎提の不適合は、これには粘膜調整材を使ってやることが、一番いいであろう、ということを私は思う。

そして義歯の削合。

あるいはリライニングをするということである。

これが第一だと思う。

噛むことによって義歯が動く、ものに対しては二つある。

いわゆる咬合調整、咬合関係を調整する。

それには、上、下の歯をすり合わせたときの滑走運動の調整が必要だ。

もう一つは、物を介在させて咀嚼したときの調整。

これは一気にできないので、2回に分ける。

また、稼動部をどのように調整するかだ。

床縁が大きいものを小さくするとかである。

それは口唇の動き、頬粘膜の動き、舌の動きの三つの動きを見る。

舌を動かしたときに義歯が大きくて、持ち上がるのではないかとか、などをチェックできる。

そのように、原因を仕分けして義歯を調整していくことが大事であろうと思う。

 2) 夜間就寝時に外しているが、これはどうか。

寝る前に義歯を外すかどうかは、どちらでもいいが、外さないと気になって眠れないという患者さんもいる。

その場合は外さなければならないが、義歯は水の中に浸けてきれいに清掃にして保存した状態にして置くことがいいと思う。

また、朝起きたときに顎関節に違和感がある人。

朝に義歯を入れると慣れるまでに30分、1時間もかかる人は起きてすぐに食事ができない。

このような人は、寝る前に義歯をきれいにして、義歯を口に入れて置く。

義歯を外すと、粘膜面の安静が保て血行よく眠れる。

圧迫された粘膜が一夜明けると、回復されてよくなる、ということも言えると思う。

それは確かにそうである。

顎関節症のような人は、それができないわけである。

寝ている間に、顎関節症になる。

患者さんの要件によって、外したり外さなかったりするのがいいと思う。

 3) リンゴを食べると義歯がこじれる感じがして痛い。

それには、咬合力が歯槽骨内におさまるようにする。

これが基本的な問題である。

それには、関谷先生の症例にはいくつかの、気になる点があった。

非常に大きな人工歯を頬側部に使っている。

もう少し、咬合力を舌側に寄せなければならないのではないかなと思う。

噛むと外側の力が加わる。

このため、義歯が転覆するような力が働くので、人工歯を少し舌側に移動させたらどうかと思う。

さらに、極端に絵を描くが、こように、人工歯の咬頭の内側を削ると義歯が動かなくなる。(絵を描いて説明する)

咬合関係を内側に寄せるなど人工歯の位置を変える。

紙1枚、葉書1枚ほど開けるとちょうどよい。

平らでは噛みきれないので、咬頭をシャープにする。

床縁は丸くする。

尖っていると粘膜は潰瘍になり。

  (このほか、具体的に助言した)

 

 <取材後記>

「河邊臨床教室のミーティングに参加して、是非、指導を求めたい」とわざわざ上京した80歳を過ぎた真剣な表情の関谷さんであった。

木曜日の午後6時から9時までの参加であり、誘いのあった懇親会には出ず、そのまま名古屋へとんぼ返りで戻っていった。

ちなみに、関谷さんは朝日大学の非常勤講師、日本口腔インプラント学会、日本歯周外科学会の指導医・認定であった。

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