第95回 河邊臨床教室 定例講演会が6月20日、東京歯科大学の水道橋校舎2階の血脇ホールで開かれた。
今回のテーマは『MI時代の下顎67欠損補綴』についての考察。
患者さんに良質な歯科医療を提供するために、はじめての補綴はどうすべきか、を討論した。
「補綴物と細菌」
石原和幸さん(東京歯科大学教授)
「補綴物と細菌」という演題をいただいたが、デンチャー(義歯)をやっていないので、細菌の話をする。
口の中に存在する細菌は、500種類を超えている。
これが、毎年、毎年増え続けている。
ほとんどが細菌であるが、カビの類も存在する。
カンジタはカビ類で、その細胞の構造は我々の体の細胞の構造に近い。
誤嚥性肺炎にカンジタが関わっているが、年をとるとともにカンジタは口腔内で増えていく。
原因はデンチャーだ。
カンジタはデンチャーに付着しやすい。
また、歯周病原因菌は歯周ポケットにいるので、歯がなくなればいなくなるのか?
少なくはなるが、デンチャーを装着していても、歯周病原因菌は口腔内に存在する。
舌背にも歯周病原因菌は存在する。
カンジタは粘膜にもついているが、若者には少ない。
しかし、20歳くらいの若い人を対象に調べたが、ほとんどの人はカンジタがいなかったが、一人だけカンジタが多かった。
それは食生活などの関係であっいたが、普通はデンチャーの入れる年齢にならなければカンジタは増えない。
(バイオフィルムついて説明、省略)
細菌はペリクルを構成する特定のたんぱく質にレセプターとアドベジンの関係で理路整然と結合するようになる。アドベジンは細菌細胞壁の表面に存在する特別なたんぱく質。細菌は宿主細胞やペリクルのレセプターに結合してから、細胞表面や歯の表面でコロニーを作るようになる。何かに結合しないとコロニーが作れない。ペリクルのたんぱく質のレセプターに付着してコロニーを作り始めるのが、初期定着菌群と呼ばれる特定の口腔の常在菌。
バイオフィルムは水が通るが、抗菌剤や洗口剤は通さない。
菌同士が集まると組成が変わる。
菌も人間も同じであり、大人しい人たちも集まれば性格が変わり、悪さもするようになる。
このために、バイオフィルムは物理的に取った方がいいという根拠となる。
(市販義歯洗浄剤にはそれほどの効果がない、という指摘が注目された)
<講演のポイント>
1)要介護者の口腔内から日和見病原体がたくさん検出される。
しかし、カンジタは65歳の健常者も要介護者の同じ量だ。
これは義歯に付着している。
また、要介護者にはMRSAのほか緑膿菌、ブドウ球菌もいる。
MRSAと緑膿菌は65歳の健常者からは検出されなかった。
2) カンジタは、義歯基底面、人工歯、舌背、頬粘膜、口蓋に付着している。
3) C,albicansは唾液でコートしたハイドロオキシアパタイト、レジンに付着する機能力をい持つ。
4)プラークの形成—付着のメカニズム
静電気的相互作用 阻水結合 レクチン結合
線毛 粘着性多糖性 共凝集
5)抗生物質感受性変化のメカニズム
薬剤のバイオフィルムへの浸透化性の変化
増殖速度の低下
Quorum sensingによる遺伝子発現の変化
6)Quorum sensingとは?
菌の密度の増加
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