河邊臨床教室 『MI時代の下67欠損補綴』(下)

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第95回 河邊臨床教室 定例講演会が6月20日、東京歯科大学の水道橋校舎2階の血脇ホールで開かれた。

今回のテーマは『MI時代の下顎67欠損補綴』についての考察。

患者さんに良質な歯科医療を提供するために、はじめての補綴はどうすべきか、を討論した。

司会は愛知 徹也さん(河邊臨床教室副会長、歯科医師)が務めた

「下顎6・7欠損を再考する」

腰原好さん(東京歯科大学名誉教授)

下顎6・7欠損を患者がきらう理由

初めての義歯の場合が多く、期待に比して使用感が悪い。

痛い、違和感がある、異物感がある、動く。

また、噛めない、食べ物が入る、会話がしにくい。

このためトレーニング用のデンチャーの役割さえ持つ。

下顎6・7欠損はなぜ難しいのか、支台歯となる歯が片側にしかない。

遊離端欠損である。

歯根膜と粘膜との沈下量の差が大きいのでバランスが得にくい。

義歯の維持、安定が得難い。

圧迫、沈下、動揺、浮き上がり、離脱、転覆する。

また、大きな咬合力が作用する。

欠損に比して義歯が大きい。

残存歯に負担がかかるので、肩持ち梁の力となる。

さらに予後不良になりやすい。

下顎7番欠損は放置していても支障がないと思うが、6番欠損は

対合歯は傾斜してくるし、隣の歯は隙間を埋めるように始動してくる。

そこで早期に処置しておいた方が歯列の乱れが起こらない。

歯列が乱れれば、食べ物が挟まるようになってしまう。

1本義歯に満足しない患者にブリッジにするか、インプラントにするかである。

  

<質疑>

質疑では、歯根破折のことや骨吸収の問題などが取り上げられた。

インプラントでも歯槽骨の吸収はあるのか? という質問に対して、椎貝達夫さん(東京歯科大学臨床教授)は、「私の長期間の症例でも、たかが22年だ。インプラントの周囲に感染を起こさなければ大丈夫であり、正しく埋入しることだ。インプラント埋入時に歯周病に罹っているはどうかの、事前の診査が必要だ。インプラントの表面は乾燥していても、基本的に開放層だ。そこで細菌感染のリスクが非常に高いと考えた方がいい」と述べた。

また、下顎6・7欠損のノンクラスプデンチャーについても質問もあった。

酒井勝衛さん(河邊臨床教室会長、歯科医師)は、クラスプ緩くなったので見えないとことは金属のレストにしたと述べた。

司会の愛知さん(河邊臨床教室副会長、歯科医師)は、「ノンクラスプデンチャーは歯科業者が軟らかいからいいのだ。痛くないのだという話が先行している。そのように思う。希望的感想で、軟らかいから患者さんにいいのだ、というような話で入ってきた、それを鵜呑みにするのかどうかと思う」と指摘した。

酒井さんは、7番欠損を1本義歯にした症例を紹介したが、6番がその後、歯根破折をしたので、6番を抜歯したことで結局、6・7欠損の症例となった。

5番のクラウンにレスト、クラスプをかけたが、4番との間に段差があったので、4番にもクラスプをかける。

患者さんは快適な義歯だと喜んでいるという。

会場の一般の参加者からは、「歯根破折の話が出たが、根管治療後、何年くらいで歯根破折になるのか」と質問があった。

愛知さんが以下の考えを述べた。

「最近、歯根破折、歯そのものが破折してしまうことが非常に問題になっている。歯の破折は治療していない歯ではなく、削って詰めた歯、あるいは歯の神経を取ってしまった歯だ。

神経を取り根っこの治療をし、そこの歯科材料を詰め、金属の土台を埋める。それがメタルコアであり、失ってしまった歯の代わりの土台にクラウンを被せる。

そのような歯の破折が多い。

これは習慣性の歯軋り、食いしばりが最近、多いと言われている。

その原因は、コンピュータの普及でストレスもあり、無意識に

歯を食いしばってしまう。

それが、旧来なら歯の破折にならなかった歯まで、次々と破折をしてしまっていると言われている。

このことから、歯科治療が原因だけで、歯根破折が起こっていると思われない。

古来から行っている根管治療であるので、最近は歯根破折が起こりにくい歯科審査材料の開発が行われている。

寝ているときばかりではなく、仕事中の食いしばりも無視できないと思われる」と述べた。

また、椎貝さんは、「昭和40年代国試浪人からの流れで、根管拡大を確りやるように、教育されてきたが、根管を繰り返すうちに、根管を潰していのではないかと思う」

さらに、愛知さんは、「歯科の器具の進歩によって、専門的に言えばリーマー、ファイルによって、それが国際規格で統一された。それで確実性の高い治療ができるようになったと言われている。

それは、歯科医師が真面目に考え、細菌に犯された歯の根を最大限除去した。

リーマー、ファイルという器具は、手で用いるのではなく回転する器具に装着して歯の根を拡大した。

歯の根を大きく削れば、その中にある細菌は取れる。

歯の根がきれいになればそれでいいが、歯の強度は弱くなった」と説明した。

椎貝さんは、「日本の歯科医療は世界一だと思う。ダメな歯をあれだけ、きれいにする。昔は抜歯対象であった歯を残している。

アメリカなら、お金がかかるので全部抜歯だ。

日本の歯科医師は、だめだろうな、と思う歯も残してる」と強調した。

 

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