歯茎から新型万能細胞(iPS細胞)を作製

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大阪大学歯学研究科の江草宏助教らは、京都大学の山中伸弥教授と沖田圭介講師との共同研究で、歯科治療の際に切り取った歯茎から、新型万能細胞(iPS細胞)を作製した。皮膚から作るより作製効率が7倍以上と高かった。インプラントや入れ歯に必要なあごの骨の再生医療などに将来役立てたいとしている。研究の成果は9月14日付の米科学誌プロスワン(電子版)に掲載された。

  

<参考>

歯科補綴学第一教室には、材料系、顎機能系、インプラント系組織再生工学系の4つの研究班があります。 組織再生工学系研究班では、顎口腔組織の再生医療をめざした研究を進めています。間質幹細胞の分化機構に着目し、その分化過程には遺伝子サイレンシングの機構が存在することを示しています。また、この分化過程にエピジェネティクス機構が関与している可能性を検討しています。

近年、再生医学の領域は飛躍的な進歩を遂げており、生体機能の一部を喪失した場合、無機的な材料によって回復する時代から、機能的な自己組織によりこれを再生する時代へ移っている。歯科補綴医療はこれまで歯科材料を用いた置換治療に依存して発展してきたが、これに再生医学を取り込んだ次世代の顎口腔機能の再建治療をめざした研究が行われつつある。組織再生工学系研究班では「フロンティアバイオデンティストリーの創生」の一環として、顎堤、舌、咀嚼筋などの顎口腔組織の再生をめざし、幹細胞治療に着目した基盤研究を展開している。幹細胞治療とは、本来乏しいはずのヒト組織の再生能力を自己の細胞を用いて引き出すための戦略である。そのためには、成体に存在する幹細胞を体外で培養増幅し、同時に生理活性物質あるいは遺伝子操作による分化の効率化を行い、これを再生の足場と共に欠損部位に移植して組織再生を促す技術が必要である。しかしながら、用いる成体幹細胞の分化方向を確実かつ効率的に運命付けるためには、成体幹細胞の分化機構について解明しなくてはならない問題が多く残っている。これまでの我々の取組みに加え、成体幹細胞分化へのエピジェネティクス機構の関与を示す知見をもとに研究を進めている。

  

<参考>

大阪大学の研究倫理審査委員会は5月19日、歯周病やインプラントの治療、抜歯の際に切り取った歯茎の組織から新型万能細胞(iPS細胞)をつくる同大大学院歯学研究科の江草宏助教らの研究を承認したと発表した。歯茎の組織は切除して、捨てられたものを使用。江草助教は「患者の負担を最小限にiPS細胞ができれば、再生医療に大きな貢献をできる」と述べている。人での成功例の報告は国内で初めて。マウスでは皮膚の細胞から作製するよりも7〜10倍効率良くつくれるという。

江草助教によると、同大歯学部病院を受診した患者に同意を得た上、歯茎の組織から細胞を分離して培養した。iPS細胞を開発した京都大の山中伸弥教授の技術を使ったもので、この細胞からiPS細胞をつくり、マウスに移植して万能性を確認した。「研究成果を顎骨の再生医療などにつなげたい」抱負を述べた。 

 スタッフ 職名 氏名 E-mail(@以下はdent.osaka-u.ac.jp) 教授 矢谷 博文  准教授 中村 隆志  講師 瑞森 崇弘  講師 石垣 尚一  助教 山田 真一  助教 中野 環  助教 江草 宏  助教 楠本 直樹

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