歯科技工士離職率は25歳未満で79%

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<衆議院文部科学委員会>

平成二十二年十月二十七日(水曜日) 午前九時一分開議

 委員長田中眞紀子君文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

(厚生労働省医政局長)大谷 泰夫君 

田中委員長 次に、川口浩君。

 

川口(浩)委員 民主党の川口浩でございます。

 先日、大臣の所信演説を拝聴させていただきまして、高等教育卒業後に夢を抱きにくいこの経済状況の中におきましても、キャリア教育、各種団体との連携、またリーディング大学院構想など、国民の皆様に希望と夢を抱いていただけるものだと確信をいたしまして、これを即時に実行するべきことが最も重要なのかなと感じております。

 さて、私は、歯科医師、介護支援専門員として長年現場で生活をしてまいりました。二十年の在宅歯科診療そして介護施設への訪問診療を通じて感じましたことは、人はだれでも最後まで自分の口から食事をしたいと強く願っているということです。そして、寝たきりにさせないためには、歯科診療は不可欠であり、それが介護者の負担を軽減すると考えます。

 現在も議員活動の合間に診療を続けさせていただいておりますが、私も高齢になるにつれまして患者さんも高齢となり、寿命を全うされる方もふえてまいりました。治療途中の患者さんの御家族の方から、向こうの世界に行って食事に困らないように、預けてある入れ歯を早く一緒に持たせてあげたいというような御連絡もちょうだいいたします。御本人そして御家族の食に対する思いの重さを感じ、現在も診療を続けております。

 そこできょうは、疲弊が著しいとされます歯科界の状況について質問をさせていただければと思います。前段は御意見としておとめ置きいただければと思います。

 まず歯科技工士に関してでございますが、我々がとりました型をもとに、入れ歯、継ぎ歯、詰め物、矯正装置の作成、修理や加工をする仕事を彼らは担っております。ところが、その歯科技工士は、資格取得後、二十五歳未満では何と七九%、二十五歳から二十九歳の間では七四・九%の離職率となっております。

 これは、歯科技工士養成校において実施されているカリキュラムに弾力性を持たせ、実技の修得はもとより、歯科医学の概論、生理、細菌、歯科保存学等の知識を盛り込んだり、また、技工の作業のIT化は国際的にも加速度的に進んでおりまして、CAD・CAMなどの工学的要素を加えるなど、若者が夢を抱けるように、海外市場をも視野に入れた国際化の対応や、魅力のある業務のあり方に関する検討が必要だと思います。

 また、歯科技工士国家試験のあり方にも検討が必要ではないでしょうか。歯科技工士の国家試験は、国家試験といいながらも、実技試験があるために、昭和五十九年から当分の間、地方自治法の第一号法定受託事務として、各都道府県で個別の日程、内容で行われておると聞いております。歯科技工士の全国統一国家試験の早期実現、それに伴う教育年限等の見直しの検討が必要と考えております。

 また、反対に歯科衛生士は、平成十九年度、五千七十二名の就職者に対し求人は何と六万一千百六十九人であり、求人倍率は十二・一倍に達しております。有資格者を掘り起こし、再度研修を行い、生活スタイルに合った多様な働き方ができるような、さまざまな方面での基礎調査が必要ではないでしょうか。

 歯科衛生士は、平成十七年度より三年制以上の教育となり、生活習慣予防、在宅療養、摂食・嚥下等の認定研修プログラムが加わり、在宅医療、介護施設などでの活躍が期待されております。人員基準等に歯科医師、歯科衛生士を明記し、職域を広げていただくことを検討すべきではないかと考えております。今後、掘り下げて検討をしていただければと思います。

 さて、今も私は在宅高齢者の診療を行っているというお話をさせていただきましたが、寝たきりの方々をつくらず、最後まで自分の口から食事をするという観点からも、このように、歯科衛生士、歯科技工士の確保は大変重要だと考えております。歯科医療を支える歯科衛生士、歯科技工士に対して、在宅歯科医療サービスを実施する上で国としてどのような対応を実施しているのかをまずお聞きしたいと思います。

 

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 高齢化の進展に伴いまして、高齢者などへの在宅歯科医療や口腔ケアの重要性が増しております。これに対応できる歯科衛生士及び歯科技工士の養成、人材確保を行っていくことは極めて重要というふうに考えております。

 このため、歯科衛生士につきましては、平成二十年度から、在宅での歯科医療や口腔ケアの対応について、歯科医師や歯科衛生士を対象とする講習会事業を実施いたしまして、平成二十二年度からは、歯科衛生士養成施設の教員を対象とする講習会の事業というものを実施しております。

 また、歯科技工士につきましても、平成八年度から、高齢化の進展の中で多様化する歯科補綴物の作成に対応できる歯科技工士を養成するために、歯科技工士養成施設の教員を対象とする講習会事業を実施してきたところでございます。

 これらの事業を通じまして、今後一層、在宅歯科医療のニーズに合わせた歯科衛生士及び歯科技工士の養成あるいは人材確保に努めてまいりたいと考えております。

 

川口(浩)委員 次は、需給問題についてお尋ねをします。

 まず、医師数の不足解消のために、現在、医学部の学生数を増員して対応している状況について質問をさせていただきます。

 医師不足が叫ばれておりますが、その一方、原因は、医師の地域の偏在、診療科目の偏在が問題であるとの御指摘もあります。また、医学部の新設は、法科大学院、そして、過剰が指摘されております私ども歯科医師と同じ状況を招くという懸念もございます。平成二十年度から医学部の定員増が行われてきており、先日の発表では、来年度も九十名程度の増員が見込まれるということですので、来年度以降も毎年千三百人を超える入学定員増が行われるということになります。これは、学校にしてみれば十校から十三校分になるのではないかと思います。

 医師不足対策としての定員増は、研究枠、地域枠そして歯学部からの定員振りかえ枠で対応しつつ様子を見ることとし、むしろ、偏在対策や医師派遣のシステムに力を入れる時期に来ているのではないかと考えます。

 このような中、医学部の新設が認められるかのような報道もなされてはおりますが、たしか、過去に二度の閣議決定で医学部、医科大の新設はしない方針が打ち出されているはずでございます。この医学部新設は認めないという方針は現在も変更されていないとの認識で間違いないのでしょうか。

 医学部新設に対してどのように考えているのか、文部科学大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

 

高木国務大臣 歯科医師の立場から、かなり詳しい現場の状況についてもお話がございました。

 今お話がありました件については、医学部の新設の件でございます。今の深刻な医師不足に対応するためには、政府の医師確保対策に基づきまして、平成二十年度より医学部の入学定員の増員を図ってきております。来年度につきましても、厚生労働省の必要医師数実態調査の結果や新成長戦略、これは平成二十二年六月十八日閣議決定をされておりますが、これらを踏まえて、今年度と同様の枠組みで増員を図る予定であります。

 医学部の新設につきましては、閣議決定、これは昭和五十七年でございますが、抑制方針がございます。これに基づき約三十年前から認められておらずに、医療界、大学関係者にもさまざまな意見があると私は承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、本件については、今後の医師養成に関する取り組みについて検討する中で、さまざまな御意見を伺って、厚生労働省の調査の分析や、あるいは医療提供体制に係るグランドデザイン、この論議を見据えながら慎重に検討してまいりたいと考えております。

川口(浩)委員 一方で歯科医師の需給問題がございまして、現在、一律二八%の入学定員の削減を推進されておりますが、国民から信頼される確かな臨床能力を備えた歯科医師を養成するためには、将来的な統廃合も視野に入れつつ、すぐれた入学者確保が困難な大学、国家試験合格率の低い大学などの定員見直しが必要ではないでしょうか。

 そこでまずは、すぐにできることとして、一律の削減ではなく、調査結果を国民の皆様方に幅広く公開し、国民目線に立った解決策を早期に打ち出すべきと考えますが、大臣のお考えをお聞かせいただけますか。

 

高木国務大臣 歯学部の入学定員につきましては、昭和五十七年の閣議決定を受けまして、ピーク時の昭和六十年度と比較しまして二八%削減を目標に、平成二十二年度までに二二・八%減の七百六十九名の削減を図ってきました。

 さらに、確かな臨床能力を備えた歯科医師を養成するためには、今の歯学教育という観点から、平成二十年の七月には、歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議を立ち上げております。平成二十一年一月には、入学定員を充足できない歯学部等については入学定員の見直しを検討することを提言する、第一次の報告を取りまとめられたところでございます。

 私どもは、これを受けまして、今後、第一次報告の対応状況に関するフォローアップを行いたいと思います。今年度末を目途に、その結果を、御指摘ありましたように、国民に公表する予定であります。

 文部科学省といたしましては、大学間での入学定員の充足率あるいは国家試験の合格率に格差が生じている状況を踏まえ、質の高い歯科医師養成の観点から、個々の大学に応じた入学定員減への対応を促してまいりたいと思っております。

川口(浩)委員 この問題は、長年言われておりますが、なかなか解決のめどがつきにくい問題でございますので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 最後に、ネグレクトの問題について若干お尋ねをさせていただきます。

 長年にわたり学校医として歯科健診に携わってきた経験から、児童虐待を早期に発見するのは歯科医師の役割だと常日ごろ思っておりました。私の診療所でも、親の脱いだスリッパを素早く片づける子供とか、全く子供に話をさせない親が訪れた際には、ちょっと注意をして観察をしております。

 平成十四年に東京都の児童相談所、乳児院に措置されました虐待児百四十七名について歯科健診を行いましたところ、一般児に比べ、二歳児の平均虫歯数は七倍、十一歳では二・七倍でした。特に治療率が低かったとの報告があります。一方、ある調査では、虐待の疑いがある子供を診た経験を持つ歯科医のうち、通報に至ったのは一割弱との報告もございます。

 原因の一つには、児童虐待防止法に歯科医の文言が明記されていないため、通報するべきとの思いに至らず、疑念を抱きつつも通報をしないのではないかと考えます。

 歯科医が、児童虐待、特にネグレクトの早期発見に果たす役割は大きいと感じております。歯科医師会との連携を図り、また、児童虐待防止法等の改正にてその重要性を訴えてまいりたいと思っておりますが、だれもが平等に教育を受ける権利を有する、未来ある子供たちの虐待を未然に防ぐための教育政策について、文部科学大臣のお考えをお聞かせいただきます。

 

高木国務大臣 まず、子供たちの虐待を防止するための学校における対応につきましては、まず一番目に、学校の教職員は、職務上児童虐待を発見しやすい立場にあることから、その早期発見、対応に努める必要があります。児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期発見の観点から児童相談所等の関係機関へ通告すること、これがまず第一。

 二つ目には、児童虐待に係る通告を行った児童生徒について、通告後に、市町村または児童相談所に対して出欠状況等の定期的な情報提供の適切な運用に努めるとともに、新たな虐待の兆候や状況の変化等を把握したときは適宜適切に情報提供または通告をすること、これについては、ことし三月二十四日に文部科学大臣政務官通知を出しておるところでございます。

 特に、先生御指摘のように、改めて学校歯科医の役割を認識をしております。健康診断等において口腔の疾病、異常の有無を検査しており、例えば口腔内に不自然な外傷があるかないか、こういったものをチェックをするなど、虐待の早期発見に努めるなどの取り組みを行っておるところでございます。

 私どもとしましては、学校及び学校の教職員の果たすべき役割は極めて大だと思っております。これまでも、教職員用の研修教材「児童虐待防止と学校」のCDを作成をいたしまして配付するなど、取り組んでおります。

 今後とも、関係機関の連携を強化しつつ、学校における児童虐待防止の取り組みの向上を図ってまいりたいと思います。

 

川口(浩)委員 この問題はなかなか根が深い部分がございますので、ひとつよろしく御指導をお願い申し上げます。

 最後に、平成二十二年四月三十日に医政局長から都道府県知事あてに出ております「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」という通達の中に、薬剤師、リハビリテーション関係職種、管理栄養士、臨床工学技士、診療放射線技師以外の、「医療スタッフ以外の職種(歯科医師、看護職員、歯科衛生士、臨床検査技士、介護職員等)」と明記されております。

 これは、歯科医師、歯科衛生士は医療スタッフではないという誤解を受ける内容であり、各医療機関の連携とともにチーム医療を推進していこうとしている歯科界にとってはちょっと納得できかねる内容でございますので、早急に訂正を御検討いただけるようにお願いをさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

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