歯科医療崩壊に終止符を打つことは不可能

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「持論」 ... 『石川保険医新聞』

第457号主張欄 (2010年5月号)

今次歯科診療報酬は2.09%のプラス改定となり、基本診療料の引き上げや歯周基本治療、麻酔、有床義歯など基礎的技術料が引き上げられ、歯科技工士の評価が新設された。長年にわたる、われわれの地道な改善運動が反映されたと評価できよう。

一方で、基本診療料などの引き上げのからくりは、その財源をスタディモデルの包括など医学的根拠のない包括化や、歯科疾患管理料やスケーリングなどの特掲診療料の点数引き下げなどにより捻出するというものであった。

このような改定では、歯科医療崩壊に終止符を打つことは、不可能である。

事実、0.42%のプラス改定であった2008年改定でも、中医協医療経済実態調査によれば、損益差額の平均値は、前回調査を下回る結果が出ている。

経費削減にも限界があり、近年、利益率が高い診療へとシフトする傾向が現れ始めた。

厚労省の2008年度薬事工業生産動態統計の年報によると、歯科用材料費全体で4.5%の伸びの中、歯科用充填材料は前年比で16%も伸びている。

保険で良い歯科医療は国民の悲願

直ちに低歯科診療報酬政策の改善求め、自治体請願に全力

これは、臼歯部の隣接面を含む治療に対して、本来なら金属を用いるべきところを、強度的に劣るレジンで安易に治療していると考えられる。

当時より、さらに歯科用金属が高騰している現在、逆ザヤを避けるために臼歯部の無理なレジン充填をしている可能性が危惧され、歯科医療の質の確保が難しくなってきていると指摘せざるを得ない。

 昨年度、保団連・保険医協会が「保険でより良い歯科医療を」運動に取り組んだ結果、全国の患者・国民から22万筆超もの請願署名が集まった。

多くの国民は、保険の適用範囲の拡大と自己負担の軽減を望んでいる。

一方で、政府の低歯科診療報酬政策により、良質な医療は保険では十分にできない現状にある。

 保険で良質な医療を保障し、歯科医療危機を打開するためには、保団連が主張するように10%以上の引き上げとともに、患者・国民との協働のもと「保険でより良い歯科医療の実現」が不可欠である。

 石川県保険医協会では、今年度、保険でより良い歯科医療の実現を求める自治体請願運動に取り組み始めた。

会員諸氏の協力をお願いしたい。

<石川保険医新聞 第457号より転載>

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