歯科医療の大切さがきちん国民の中に浸透していない

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日本歯科医師会臨時代議員会(5月28日〉から

<日本歯科医師会大久保満男会長の挨拶>

何が起きてもおかしくない状況であるが、じっくりと腰を落ち着けて、課題を解決していきたいと思ったら、新型インフルエンザのような事態となった。私どもとしては、精一杯2か月間頑張ってきたつもりであるが、大阪、兵庫の先生方は大変ご苦労されたと思う。まだ、終息したわけではないとういのが専門家の意見で、ポツリポツリと普通のインフルエンザのように定着している。しかし、次にどのようなことが起こるのかわからない危機的な状況の中で、危機管理としての日本歯科医師会の態勢をしてきた。毒性はそれほど強くはなかったが、次に備える大きなトレーニングとなったと思う。反省を含め、後ほどご意見、批判をうかがいたい。私は3年前に、皆様のご支持で会長に就任した。その時は、まさに小泉改革の花盛りであった。すべてを市場原理に委ねるという新自由主義の路線で、正直、この国をどこえもっていくのかと暗澹たる気持ちで会長に就任した。しかしながら、この路線は絶対にダメだと思った。社会保障に対しては、この国をダメにしてしまう、とう強い信念のもとに、三師会ともども、この社会保障費削減に表されるような新自由主義の路線、市場原理に任せる路線は、結局は小さ過ぎる政府を生み出し、ダメになってしまうということをずうっと主張してきた。その結果が、非常に残念であるが、ずうっと主張してきたことは、胸を張って正しかったと言えることだと思っている。ただ事態は暗澹たるものである。昨年と今年の歯科大学(歯学部)の受験者数の激減という数字に表れている。社会の人たちが歯科、歯科医療どのように見ているのか、極めて残念であるが数字に出ていると私は考えている。本当に未来の歯科医療を考える時に、大変危機的な状況である。国立大学といえども、少子化ではあるが受験者数は減っている。17校の私立歯科大学の中で、定員を満たしたのは5校だけで、残りは全て定員を満たしていない。定員数を減らしても、なお定員に満たないところもある。早速、日本私立歯科大学協会と正式なテーブルではないが、この危機をどいいうふうに乗り越えていくのか話をした。まさに大学と歯科医師会が共有の危機意識を認識し、何とかこれを打開していかなければならない。歯科大学は立派な歯科医師を育てるために、死に物狂いの努力をしてほしい。私たち歯科医師会は、社会に出た若い歯科医師たちが、いい歯科医療を行うための基盤整理をするために、死に物狂いで頑張ると申し上げた。歯科医師の需給問題を含めて、歯科医師の質の問題も含めて、量と質の問題からこの問題を、本当に危機的な問題として、これから全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えている。しかしながら同時に、希望を捨ててはいない。わたしどもの常務たちが、厚生労働省のあらゆる審議会や色々な会合に出席しているが、実は会にでている方々が、高齢社会を迎えて、歯科医療は益々重要である、とおっしゃっていただいいることは事実である。たくさんの機関から連携をとろう、という動きが出てきている。残念ながら、歯科医療の大切さがきちんと、国民の中に浸透していないことが、私は一番大きな課題だと思っている。歯科医師会はこれまで、様々な形で歯科医療の大切さを国民に訴えてきた。しかし、それがきちんとした形で、国民の心に届いていなかった。ここ2年ほど、歯科医療が大切なのだというEBMが出てきた。それを確りとまとめて、総合的な歯科医師会の政策として国民に訴える。そのための「国民会議」を進めたいと、日本を代表するオピニオンリーダーの方々を選び、私がお一人おひとりを口説いて、この会議に参加をしていただくことから始めたい。7月の終わりころには、何とか第1回の会合を開きたいと思っているが、忙しい方々ばかりであるので、引き受けてくれるかどうかも含めてもう少しお待ちをいただきたい。経済情勢から影響を受けて、受診者は減少すると心配をしていたが、昨年12月以降、思っていたほどは減ってはいない。このことは、少しずつではあるが国民に歯科医療の大切さが浸透しているのかと思われる。このような動きをとらえながら、望んでいる本当の歯科医療の大切さを、確りと国民に向かって伝えたい。もう一つ社会保障の機能強化という局面の中で、歯科医師会として、つまり歯科医師のプロフェショナルの集団として、日本の歯科医療をこのような方向へ持っていきたいのだという、歯科医療のあるべき姿を検討するために、国民会議とは別個に委員会を立ち上げたい。あるべき歯科医療の姿を、自ら描いていく。同時に、それを国民会議にお示しをしたい。この委員会は6月に立ち上げたい。以上を会長公約として申し上げたい。こういう歯科医療となれば、国民は幸せになれるのだと伝える。その時に、その幸福を実現するためには、医療制度はどうあるべきか、そこを経ずに結果だけをお伝えしても理解されないと思う。歯を残す、きちんと義歯を入れて噛めるようにする。専門的なこともあるので、そのプロセスを、分かりやすく示す。私たちの考え方を、単なる歯科医師のエゴではなく、国民の目を通した形で外部に発表することも必要である。したがって、国民会議と歯科医療のあり方委員会はどこかでリンクする。また、目の前に平成22年度の診療報酬改定も迫っている。夏以降、三師会で大変厳しい現実があるが、何とかもう一度プラス改定を勝ち取りたい。少なくとも、前回の改定率0.42%は上回る改定を勝ち取りたい、という運動が始まる。22年度の診療報酬改定に向けての対策本部の設置を理事会で決定した。あるべき歯科医療の中期、長期の中に、短期の診療報酬改定対策本部をリンクさせながら、私は議論をしていきたい。少なくとも、歯科医療のあるべき姿を"具現化する診療報酬改定"にもっていきたい。つまり、様々な委員会が別個にあって、答申が出てそれでおしまいという運営の仕方ではなく、それらが必要ならすべてを横に少しずつリンクをさせながら、ある成果が出たら別の委員会にリンクする。それによって、歯科医師会としての総合的な考え方を立ち上げていく。大変、困難な課題であることは、百も承知であり、執行部一丸となったこの困難な課題に向かって頑張りたいので、ご協力をお願いしたい。また、レセプトオンライン義務化については、担当者から方向は後ほどあるが、自民党議員たちには、このような問題点があるので、一貫して撤廃を求めて反対しているのだ、と訴えてきた。自民党の先生方は、ご理解をいただき、大変大きな力となっている。しかし、我々の力が大きくなればなるほど、逆の反作用つまり、改革を遅らせるな、という動きがあることも事実である。両方のまさにせめぎ合いである。自民党の公約のなかに、はっきりと撤廃を謳っていただく。

 

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