歯科医療 「私の視点} 井出 徹さんに聞 く上)

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井出デンタルクリニック井出 徹さん

(東京都中央区銀座2−7−6 新銀二ビル2F)

ある患者さんに「歯が抜けていて気になりますか?」と聞いたことがあります。私は気にならないだろうと思って聞きました。患者さんは「前は気になっていたのですが、今は気にならなくなりました」と言うのです。私もそうだと思います。「この後、どうします」と聞いてみました。患者さんが、言いづらそうにしていたので「この歯は、このままにしておきましょう」といって治療は終了しました。色が合う人工歯を選んで、スーパーボンドで留めてあげたのです。 見かけは、取り敢えずそれで済みます。その人工歯で食べられないか、というと食べられます。その後、若干スプリントも使いました。段々、訴えていた肩こりも解れてきて「噛みしめ」も少なくなってきました。今、その患者さんは何の訴えもないので、来ていませんが、夫婦で通院していましたから、何かがあれば来ると思っています。身体に良くない「噛みしめ」が続くと、歯に亀裂を生じることがあります。歯に亀裂が生じると歯が欠けたり、亀裂に細菌が入り込んで、むし歯の原因にもなります。また、身体に良くない「噛みしめ」は、顎の関節にダメージを与えることもあります。上顎の骨や下顎の骨の隆起にもつながります。

上下の歯を持続的に接触させたり、長時間の噛みしめをしたりすると歯の周りの組織にストレスが加わり、歯周病にもなりやすいのです。あるいは筋肉が疲労して、顎の付近の疼痛、疲労感、さらには頭痛の7〜8割を占める緊張型頭痛も起こります。歯科の最大の目標で、何を医科的に考えるべきかといえば、咀嚼だと思います。物がちゃんと飲み込めることです。人はできれば、長生きで元気であることが、望まれています。歯科はむし歯と歯周病に、あまりにも限局されてしまっています。筋運動が悪くなる要因、きちんと口腔ケアがなされていないこと、あるいは口腔リハビリ的なことの二つの要因があると思います。歯ブラシの問題は、3割あるいは4割かもしれません。歯が欠ければインレー、クラウン、足りなければブリッジ、パーシャルデンチャー、さらには総義歯にする。一方、医科では口腔ケアをしている方は、オペをしても治りがいいようだと理解されている。また、口腔リハビリは介護の現場で見直されています。口腔の構造的な問題が重要であるのですが、歯が抜ければインプラントになります。そこには構造的な問題があるはずですが、軽視されています。ストレスとは、建築から出た言葉だそうですが、人間も構造体ですから、歪みがあれば建物のようにやがては壊れてしまうはずです。このため顎の関節の問題が無視されています。無理な「噛みしめ」があれば、顎の骨にインプラントを入れても上部構造は壊れてしまいます。だからジルコニアは、対合歯を壊してしまいます。力のコントロールをしていなければ、当然無理な力が加わりインプラントの上部構造は壊れます。患者さんを救うために本音で行こうではないか、という声もあります。また、体の姿勢の問題もあります。筋肉の問題もあります。一つの骨の構造体で二つの関節があるのは、身体で唯一なのが顎の関節です。バランスが取れていなければ、不具合になるのが当然のことです。現在、顕微鏡を覗きながら、歯科治療が行われていますが、無理な噛みしめで、歯に亀裂ができたことも明らかにされています。顎の関節がまともに動いていないのに、インプラント治療へ向かいます。車の車軸がずれているのに、それを直すこともなく高いタイヤの交換ばかりしている。世の中ではそんなことありえないと思います。しかし、歯科ではおかしなことが行われています。車軸がずれているとしたら世の中の人は、No!を突きつけると思います。歪んだ車軸を修正せず、タイヤの交換ばかりしているのが歯科治療の実態であったら、それは患者さんのために放置することはできません。

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