歯科医師の成田訴訟次回公判は7月21日(火)

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訴訟の経緯とポイント

1)原告の要旨

2)被告の要旨

3)原告の再反論

Ⅱ、訴訟の役割

1)国・厚労省の指導監査行政の建前と実態の乖離を明らかにする

2)指導監査の法的な位置づけを明確にする:行政手続き法・情報公開法

※勝手な解釈や運用の歯止め

3)医師・歯科医師の人権と尊厳を守る運動の提起

※指導監査を巡る自殺、精神的抑圧の防止

4)国民不在の「低医療費政策」に果たす指導監査の役割とその改革

※医療崩壊を加速させる指導監査の実態

Ⅲ、運動の広がり

1)多く個人・団体からの支援の声とカンパ

※「保険医への指導を正す会」の発足

2)指導監査を巡る訴訟の全国的な広がり

※岡山・山梨・兵庫・高知・福島など保険医取り消し訴訟・指導に関する訴訟

3)指導監査の透明性・公平・公正を目指す運動の前進

※弁護士帯同・録音の実現等

Ⅳ、今後の争点と課題

1)指導監査を巡る全面的な課題

a)今後の争点

b)指導監査問題の介護福祉分野への波及

c)法的な整備:健康保険法・指導大綱等

2)医療崩壊・国民の医療を守る課題

3)医師・歯科医師の人権と尊厳

Ⅰ、訴訟のポイント

1、原告の要旨

 指導監査を巡っては、その目的・方法・判定・処分にわたって数々の問題がありますが、今回の訴訟は①個別指導における選定理由の事前の非開示と②不当な「自主返還」の2点について訴訟を起こした

 行政手続き法・情報公開法及び健康保険法や指導大綱などに違反し、そのために精神的な苦痛を受けたとして国家賠償(国家賠償法1条1項)という形で行った

1)選定理由の開示について

a)行政手続き法による指導の「任意性」の確保

①指導による多大な負担

②「除外規定」の適応の有無

③特殊性の強い指導

原告が利害関係を有している

b)非開示の理由について

「情報提供者との信頼関係や指導業務に支障を来す怖れがある」について

①    具体的な根拠となる事実が示されていない

②事後には選定理由を一般に開示されている

行政手続き法35 条1項、憲法13 条・31 条に違反

2)自主返還について

①適正な診療が行われている

②不当利得はない

返還義務はない原告に対して返還を求めるものであり、違法

3)事情

健康保険法による指導の特殊性

①指導を受ける義務がある

②本来の目的である「療担規則等を理解していただき、保険診療の質的向上と適正化を図る」から逸脱し「不正不当を摘発」自体が指導の目的であるかのような運用

③監査との連動し、保険医停止など不利益処分につながる

④過重な負担を強いる(持参物・カルテ・休診)

⑤運用の問題;被疑者扱い、「中断」、「監査への移行の示唆」、「自主返還」

⑥保険医停止などの不利益処分につながり、暗黙の強制力となっている

⑦報復的な対処:原告への自主返還

2、被告の要旨

1)選定理由の開示について

a)行政手続き法第35条1項は選定理由の開示を法的に義務づけられてはいない。

b)選定理由は十分推察でき、あえて選定理由を開示する必要はない

c)個別指導は監査に先立つ不正不当を取り締まるものであり選定理由には「情報によるもの」も含まれ選定理由を開示すると「証拠の隠滅」「情報提供者の割り出し」「情報者との信頼関係」を損ない公平性を保つことが出来ない

※「情報提供は国民の正義により行われているものである」

2)自主返還について

a)部位間違いは重大な過誤であり、不正不当を指摘することは監査に先立つ指導においての責務であるし、返還させることも当然である

b)訂正要請を受理しており、指導の任意性は確保されている

3、原告の再反論

第1 選定理由の不開示について

1)選定理由の開示を受けることが国賠法上保護された利益である行政指導にあたっては、相手方行政指導への協力を行うかどうかの判断の任意性を保証するために、行政指導がなされる理由についても可能な限り示されるべき(行政手続き法35 条1項)

健康保険法に基づく指導の性格

a)指導を義務づけられている

b)監査への移行が制度の運営上予定されている→保険医停止処分などの不利益処分が予定されている

c)高圧的・威圧的対応、監査への移行の示唆、被疑者扱いなど運営上の問題が多い

d)対象保険医の負担が非常に重たい→膨大な持参物、カルテ(初めての初診から30名分;チェックに少なくとも96時間要する)カルテ指定3日前(現在前日指定も多い)休診を余儀なくされる

●指導内容への協力についての任意性を確保する上で、選定理由の開示は非常に重要な意味を持つ

2)社会保険事務局長の裁量に逸脱・濫用があること

a)被告の弁明①個別指導の趣旨・内容・責任者を示している②指導綱に選定理由の基準が示され、周知徹底されている③「高点数」である選定は推知できる

b)① 「高点数」の推知は出来ない②個別指導からの逸脱、個別指導を不正不当の摘発として位置づけ③情報報公開法の適用除外にあたらない:指導は「監査、検査、取締」ではない④「証拠隠滅、あるいは情報提供者の割り出し等をおこなうおそれ」「情報提供者との信頼関係を失うおそれ」「当該事務の・・の適正

な遂行に支障を及ぼすおそれ」という被告の主張はおよそ現実からかけ離れたものである

●以上の理由で選定理由を非開示とした社会保険事務局長の判断は著しく裁量を逸脱し、違法である

第2 自主返還の指示について

(事実関係)原告「自主返還の撤回」申し入れ→社会保険事務局長回答なし

a)不当利益なし、「返還」を求める必要性はなし

b)通常は審査支払機関との調整でおこなわれている事項を「不正不当な重大な過誤」としている

c)不当な労力を課す(カルテ5000枚分のチェック)

d)「自主返還」と「改善報告」が一体となっており評価判定につながる→不当な自主返還も事実上拒否できにくい状況

 ※評価判定が国側の一存で決まる。客観的な基準がない

Ⅳ、今後の争点と課題

1)指導監査を巡る全面的なとりくみ

a)具体的な争点

①指導と監査の混同

※一般指導と「監査に先立ち不正不当を摘発する」監査に先立つ指導の混同

※一般指導(新規指導・高点数理由の指導)について監査に先立つ指導と同等の取り扱いをしている(被疑者扱い)

※監査に先立つ指導は行政指導の範疇を超えるものである

②経済制裁的な目的の打破;

※「高点数」理由の繰り返し指導

※「高点数」の抑制が指導における改善の内容

③「情報提供」による指導・監査のあり方

※利害関係の一方の当事者のみの情報

※正当な弁明・情報の提供の機会を奪う:保険医取り消し裁判での例

④指導・監査判定の透明化

※客観的な基準なく、技官・国の一存で決まる仕組み

※判定に様々な恣意性が入る:今回の再指導判定・自主返還

⑤自主返還の違法性

※行政指導における実質的な強制返還命令

※「改善報告書」「評価判定」「監査への移行」と密接に関連

b)介護福祉分野への拡大

c)法的な整備:健康保険法・指導大綱等

2)医療崩壊・国民の医療を守るとりくみ指導の目的の逸脱、指導内容改革

a)低医療費政策の打破:経済制裁的指導の打破

b)医学的臨床的根拠に基づく医療

3)医師・歯科医師の人権と尊厳のとりくみ

a)頻発する指導監査を巡る自殺や精神的抑圧

c)自殺予防支援

Ⅴ、訴訟の今後の日程

a)被告・国側の準備書面提出 7月17日(金)

b)弁護士との協議      7月18日(土)午後6時

c)次回公判         7月21日(火)

 

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