歯科の『領域の拡大』という命題

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「院長からの視点・論点から歯科医療・医業を語る」

「元気の出る歯科医院の経営」シリーズ(1)

松尾通さんに聞く日本アンチエイジング歯科学会の事務所(東京・渋谷区円山町5—4−201)での取材に応じて、松尾通理事長(松尾歯科院長)が以下、考えを述べた。 — 現在の不況下で感じることは?松尾 私は色々な業種の人たちとお付き合いがあり、話をする機会が多いが、景気がいいと言う話は聞いたことがない。一部例外で、業績がいいという人もいるが、押し並べて景気は下降している。また、政治も混迷しているが、日本だけの問題ではなく、世界経済の中での日本と考えるべきであり、世界同時不況の影響であり非常によくない。その意味で、歯科界も人並みと考えれば気が楽になる、と思っている。また、歯科は経済の影響を受けやすい業種であり、景気がよくなると少し遅れて上向き加減となる。景気が悪くなると、少し遅れて下降することは、これまで歯科界の方々が経験したことである。正確には、インプラントの出荷量を見てみると、昨年の秋口から少し黄色の信号が灯り、落ち込んできている。特に今年の夏以降、よくない状態が続いているが、これは地域差や個人差もあり、場所によっては、「非常に忙しい」、「インプラントは絶好調だ」という声を聞く。また、東京都内では最近の傾向として、「患者が来ない」、「患者が来ても保険でほとんど処理し、自由診療はほとんどない」と言っている。3、4、3の原理のとおりであり、歯科医院も2極化、3極化している。つまり、上昇の3、平行の4、下降の3の形で歯科界進んで行っている、ということだと思う。—では、上昇の3に入るためには?松尾 歯科医院の院長のポリシーもあると思う。「私は、上昇の3に入らなくともいい。下降の3は困るが、平行4で十分だ。むしろ、自分のペースでゆっくり、診療をしたい」という歯科医師もいる。そこで、上昇の3を目指すのかどうかは、難しい判断であり、選択の問題だと思う。また、このような時期に、歯科医院を拡大すればいい、という問題でもない。扇と同じで広げれば、パタリと倒れやすくもなる。今日、一つの流れとしては、M&Aをやっている人たちも出てきている。潰れそうな歯科医院を買収して、傘下の医院を増やしていく人たちも出てきている。資本主義は常にそのようなもので、倒産、あるいは再建を繰り広げていくものである。また、上昇の3は、規模の拡大ばかりではなく、健全経営とも置き換えられる。例えば、新規開業ではユニット5台の計画を3台に縮小する。医院の規模も、20坪〜25坪にし、スタッフも少なくする。その規模でも、歯科医師が自分で納得し、やりたいと思う歯科診療は行える、ということだと思う。— 松尾歯科医院の受付の方は、みんなが大学を出ているそうであるが、どのような考えなのか?松尾 受付の人は、単に受付をするのではなく、院長の私の代わりをしている。私の代わりに、患者さんに話をし、応接をしているのだ、という考え方をすると、受付の人は非常に大切な人であり、その役割は重要である。院長の秘書業務、TC(トリートメント・コーディネーター)の役割、医院の交通整理的役割を含め、マネジャーの立場の役割であり、自主性を発揮して医院を運営している。

<取材後記>

不況時こそ、人材は大きい。人材育成問題については、改めて取材をする予定である。ところで、松尾通さんは、同業の歯科医師の目には、どのように映じているの?声を総合すると、以下である。

1)     松尾先生のすごさは、まず、人脈の広いさ、パイプの太さである。その人脈は歯科界ばかりではなく、色々な業界とのパイプが多いことである。

2)     そのパイプの中で、松尾先生自身が考えたことを具体化し、人脈に繋げていることである。

つまり、コネクションが抜群にうまい。

3)     歯科界の中だけのコーディネーターはいるが、他の業界とのコーディネーターは、他にいない。

4)     常に新しいことを考えており、そのアイディアを、具体な形にしていく実現力を合あせもっている。

それは、日本歯科東洋学会、日本歯科人間ドック学会、日本アンチエイジング歯科学会などで如何なく発揮されてきている。いわばその行動、活躍の軌跡は、歯科の『領域の拡大』という命題に貫かれている。その意味で『歯科界の活性化』、「元気が出る歯科医院経営」を体現している歯科医師である。

山本嗣信

 

<参考>

日本歯科東洋学会:松尾通・三代目会長(1995/4〜2001/3)

学会を全国組織に育て上げ、会員増強に大きく貢献し、公認された集団に発展するように尽力した。

 

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