歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼす

カテゴリー
記事提供

© Dentwave.com

歯周病は、歯の周囲のハグキなどの組織に細菌が感染して起こる慢性的な感染症です。歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多い、という疫学調査が複数報告されています。

 なぜ、糖尿病の人は歯周病になりやすいのでしょうか。まだこの詳細な仕組みは解明されていませんが、血糖値が高い状態が続くと、体の免疫機能が低下してさまざまな感染症にかかりやすくなったり、糖分を多く必要とする歯周病菌が増殖しやすくなるためではないかと考えられています。

 さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化する、という逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。

 

 この関係が明らかになってきた背景には、歯周病が、糖尿病だけではなく、その前段階と言える「肥満」とも密接な関連があると分かってきたことが挙げられます。

ある調査では、肥満の人に歯周病が多いということも報告されています。

肥満の人は歯周病にかかりやすい。

 肥満の人の内臓脂肪には「TNF-α(腫瘍壊死因子)」という物質がたくさん発現しています。この物質は、白血球の一つ、「単球(マクロファージ)」からも分泌されて、炎症反応を活発化させるのに重要な役割を果たしていることが分かっています。

 つまり、肥満の人は、常に体内が炎症状態にあると言えるのです。こうした場合に何らかの感染症にかかると、さらに全身の炎症がひどくなるとみられています。歯周病も感染症なので、より炎症が悪化するというわけです。なぜこうしたことが起こるのか、はっきりとは分かっていませんが、私が診ている患者さんの中にも、「風邪のときにハグキの腫れがひどくなるようだ」と話す人もいます。

 歯周病菌が、歯とハグキの間の溝である「歯周ポケット」から簡単に血液中に入り込んでいくことも大きな問題です。歯周病菌が血液中に多量に存在すると、致命的な感染症を起こすこともあります。歯周病菌は動脈硬化にもかかわる!?。

 それに加えて、歯周病菌の死骸が「内毒素」と呼ばれる多量の毒素をまき散らすことが、血糖値にも悪影響を及ぼします。血液中の内毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めます。TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。

 

 インスリンの働きが悪くなると、血糖値が下がりにくくなります。つまり、歯周病も肥満も、TNF-αの分泌を活発にすることで血糖値のコントロールを悪化させ、結果的に糖尿病の発症につながる可能性があると考えられるのです。

  実際、私たちのグループで、歯周病を合併した糖尿病の患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られています。

 ただし、覚えておいていただきたいのは、現在の歯周病治療は、その進行を抑えることしかできないということです。歯肉炎と呼ばれる状態であれば、口腔ケアによってハグキを元の状態に戻せますが、歯周炎になってしまうと、ハグキの状態は元には戻りません。

 歯周病菌は歯周ポケットと呼ばれる歯とハグキの間の溝にはびこるので、薬を飲んでも薬剤はなかなか歯周ポケットに出て行きません。

したがって、予防に努めることが重要です。口腔ケアも自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。このため、健康な人でも、半年に一度は歯科医を受診し、歯のケアを受けるようにしてください。

 

 

 

------------------------------

 

------

 

富山新聞から引用

内科、歯科がタッグ 糖尿病と歯周病治療

歯周病の治療を受ける患者。糖尿病の改善につながる=金沢市内 金沢市の医師会と歯科医師会が、糖尿病と歯周病の患者を連携して治療する事業に乗り 出した。地域医療を担う内科医と歯科医が患者のデータを共有するのは全国初の試み。糖 尿病の「第6の合併症」とされる歯周病を治療することで血糖値が改善することが確認さ れており、両会は患者のメリットが大きいとして、全県への拡大を目指している。 金沢市糖尿病地域連携事業として、内科医が糖尿病患者の歯周病を確認した場合に、地 域の歯科医院で治療するように勧める。逆に歯科医が診察した歯周病患者で糖尿病が疑わ れる場合は、地域の内科医院で検査や治療を受けるように勧める。

 内科医と歯科医はこれまで交流が希薄なケースもあったため、金沢市医師会と同市歯科 医師会で「診療情報提供書」の統一書式を設け、スムーズに紹介できる仕組みを整えた。 患者の糖尿病や歯周病の状態、双方で投与している薬、血糖値などのデータを、内科医と 歯科医の両者で共有できるようになった。

 連携事業の効果を実証するため、金沢市医師会と同市歯科医師会は糖尿病患者6人の歯 周病治療を調査した。治療から半年で歯周病が大幅に改善し、うち4人は血糖値が低下し て糖尿病も良くなった。2人は別の要因で治療を中断した。口の中の炎症を抑えることで 、血糖値を上げる要因となるインスリン抵抗性が低下したとみられる。この結果は日本口 腔診断学会雑誌で発表し、注目を集めた。

 連携事業を担当する金沢市医師会の竹田康男副会長は「歯周病治療で血糖コントロール ができることは有意義なことだ。患者にとってもメリットが大きい」と強調。金沢市歯科 医師会の加藤成俊会長は「連携事業で糖尿病の早期発見にもつながる。両方の治療が大切 ということを多くの医師と患者に知ってほしい」と連携の広がりを望んでいる。

記事提供

© Dentwave.com

この記事を見ている人がよく見ている記事

新着ピックアップ