歯がないと顎の骨は廃用萎縮する

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日本アンチエイジング歯科学スポーツ運動部会スペシャルセミナー(上)

「スポーツ歯科の現状と展望」

        杉山義祥 部会長

 

 スポーツ歯科は、まだ、一般にはそれほど理解されていない。時代背景から、今後どのようになるかについても紹介したい。 医療は三次予防(リハビリテーション)、二次予防、現在は一次予防だ。二次予防は病気にならないように早期発見、早期治療、機能喪失の防止であるが、今の一次予防は、生活習慣病予防など、疾病にならないようにするにはどうしたらいいのかのヘルスプロモーションへと変わってきている。 背景として「健康日本21」が策定され、目標として早死にしないように、健康寿命の延伸、ベッドで寝たきりで長生きをしてもしょうがない、ということである。 また、QOLの向上などを目標として策定された。 その法的根拠となるのが、健康増進法であり、健康になるためには、国民にも責任があることから、自らの健康は自ら守ろうと、目標値がそれぞれ定められた。  また、文部科学省の、スポーツ振興基本計画がある。(子どもの体力の重要性について正しい認識を持つための国民運動の展開。学校と地域の連携による、子どもを惹きつけるスポーツ環境の充実 。このための基盤的施策 。教員の指導力の向上 。子どもが体を動かしたくなる場の充実。児童生徒の運動に親しむ資質・能力や体力を培う学校体育の充実。 運動部活動の改善・充実 。地域におけるスポーツ環境の整備充実方策。生涯スポーツ社会の実現のため、できるかぎり早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が50パーセントとなることを目指す。総合型地域スポーツクラブの全国展開。我が国の国際競技力の総合的な向上方策。ナショナルトレーニングセンター中核拠点施設の早期整備や競技別強化拠点の指定と支援。競技スポーツに打ち込む競技者のひたむきな姿は、国民のスポーツへの関心を高め、国民に夢や感動を与えるなど、活力ある健全な社会の形成にも貢献するものである。 スポーツ医・科学の活用。アンチドーピング活動の推進。プロスポーツの競技者等の社会への貢献の促進。体力の向上や、精神的なストレスの発散、生活習慣病の予防など、心身の両面にわたる健康の保持増進に資するものである。特に、高齢化の急激な進展や、生活が便利になること等による体を動かす機会の減少が予想される21世紀の社会において、生涯にわたりスポーツに親しむことができる豊かな「スポーツライフ」を送ることは大きな意義がある。競技スポーツに打ち込む競技者のひたむきな姿は、国民のスポーツへの関心を高め、国民に夢や感動を与えるなど、活力ある健全な社会の形成にも貢献するものである。) スポーツ歯科医学の目的は、子どもからお年寄りに至る全ての国民に対する"スポーツによる健康の保持、増進"への歯科医学的なサポートをすることである。 また、スポーツによる外傷、障害の予防、今、非常に着目されているのはパフォーマンスの向上はどうすればいいのか、さらにスポーツによる感染予防である。血液は感染物という取扱いである。 怪我をして出血したら、血は絶対に素手ではさわらない。これまでのスポーツ歯科では、マウスガードという連想があったが、今、変わりつつある。外傷予防、競技スポーツのサポートであったが、近年では国民の健康志向の進展にともない、生涯スポーツの方面にも広があり、アンチエイジングへの関わりも期待されるようになってきた。アクティブスポーツは、週に2回以上、1回30分のややきつめの運動という定義が、国際的にもなされている。アクティブスポーツの人口を国際的に見ると、日本は少なく遅れている。オーストラリアやニュージーランドはアクティブスポーツの人口が多い。 神奈川県の医師会の健康スポーツ医の集まりと体育協会で作製しているパンフレットで呼びかけている3033運動は、30分、週3回、最低3か月は続けることで、健康が少しは自覚できるのではないか、という運動方針である。 では、噛むことがどのようなことかであるが、口腔と親指が大脳のほとんどの運動野を占めている。大脳の辺縁で口腔で40%、親指を入れるとかなりの領域を占めるので、親指を動かすことも大事なことである。 東京歯科大学の石上惠一教授のマウスを水の迷路を泳がす実験であるが、咀嚼は大脳に影響を与えていることが明らかになった。歯が普通にあるマウスはすぐに迷路を覚えてしまう。だが、奥歯を噛めないようにしたマウスは、水の迷路をおよがしても、なかなか覚えない。出口にたどりつくにものすごく時間がかかった。歯にプラスチックを入れて、また噛めるようにしたマウスは、出口に早くたどり着けるようになった。 咀嚼は脳に大きな影響を与えている。入れ歯であっても確り噛めると、生活活動動作は高くなる。また、8020達成者は、自由の外出できる人が多い。若い人は、歯を失わないように、年をとった方は歯を抜かないようにしなければならない。歯はなくなってくると、運動習慣がなくなる。私の歯科医院の83歳の患者のレントゲン写真であるが、歯がたくさんあることは顎の骨の厚みで分かる。 一方、歯はない人の顎の骨はとても薄くなっている。歯がないと、顎の骨は廃用萎縮をする。

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