是か非か住民間に溝−草津の医療観察病棟

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2013年10月20日

傷害など重大な事件を起こしながら刑事責任を問えない触法精神障害者が入院治療し、社会復帰を目指す「医療観察病棟」の運用が11月1日、草津市で始まる。

住宅が広がる周辺地域では建設計画が持ち上がった2010年以降、建設にかかる公金の差し止め訴訟が起こり、病棟の是非をめぐって住民間で論争が続き、深いしこりができた。県には対立の解消に向け、開所後も丁寧な対処が求められる。

「このままやっていても裁判の結果は分かっている。取り下げないと、不利になりますよ」。

病棟の周辺地域となる大津市の青山学区内に住む40代の女性は今夏、同じ学区内の男性から、公金差し止め訴訟から身を引くよう促された。

女性は昨年8月、大津地裁に提訴した原告団に千人の住民の一人として加わった。

一年以上にわたる裁判は判決の見通しがつかない中、既に病棟は完成間近になった。

訴えの意味はなくなるとして、今年7月下旬、男性の訪問を受けた。

女性は取り下げに応じなかったが、原告団によると、男性ら複数の住民が同様の戸別訪問を繰り返し、訴えを取り下げた原告住民は多数に上る。取り下げへの署名を求める用紙を配布され、「訴訟を続けているとブラックリストに載ってしまう」と不安をあおられた家庭もあるという。

戸別訪問したある男性は、「提訴当時の雰囲気に流されて署名したが、裁判の長期化で原告団から抜けたいという人の相談を受け、取り下げられるということを説明した。ブラックリストに載るなどといった話は一切していない」と反論。

「こうした裁判によって、地域が荒れてしまうことが心配だった」とも語った。

県は、計画が持ち上がって以来、34回の住民説明会を実施してきた。

しかし、病棟周辺に広がる新興住宅地には子どもが多く、保護者らを中心に施設から入所者が逃げ出さないかなど、安全性を問う声が根強い。

住民との議論が平行線に終わり訴訟に至ってしまった経緯もある。

11月の開所後も国と県、市、住民が意見交換する「地域連絡協議会」を年一回以上開き、施設の運営や入所状況などを報告して不安解消に努めるという。県の担当者は「理解を深めていくため、丁寧に説明する姿勢は今後も徹底して取っていく」と話す。

 (中尾吟)

<医療観察病棟>草津市笠山の県立精神医療センター内に建設される。鉄筋2階建て2696平方メートル。

予備も含め23床のベッドを備え、医師、看護師ら40人が応対する。医療観察法に基づき、国が都道府県に整備を奨励しており、草津市は全国で30施設目。

建設費13億円は全額が国が負担する。

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