憲法14条の主張と海外委託の歯科技工不当判決

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10月14日、東京・霞ヶ関の弁護士会館で、海外委託歯科技工の訴訟の東京高裁判決を受け、原告団の報告会と協議が行われた。川上詩朗弁護士は以下の報告と感慨を述べた。

  

<川上詩朗弁護士の報告と感慨>

  

 判決の結論については、法廷で言われたとおりである。 問題は判決の中身だ。我々は二つの柱で訴えてきている。 一つは海外委託による歯科技工は、禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利がある、という訴訟。  もう一つは、国賠訴訟であり、海外委託による歯科技工に対して国は何の対応もしていない。法の趣旨に照らして、海外委託による歯科技工が違法なのか、違法ではないのか。 つまり、許されるのか、許されないのかについての判断を裁判所は実はしていない。その前の入口論で、「法律上の争訟」にあたらない、としている。司法、立法、行政の中で、司法がそもそも扱える問題なのか、という問題なのだ。 しかし、問題があるとしたら、司法以外どこが解決すべきかである。それは、立法、行政の中で解決しなさい、ということを逆に言えば言っている。一審判決は、そのことを示していた。 あるいは、「確認の利益のない」としたのは、歯科技工業務の独占、法的地位についてである。歯科技工士は、歯科技工士法17条と1条に基づき、歯科技工業務を独占的に行うことができる利益を保障されている。 つまり、無資格者による歯科技工は禁止されている。 逆に言えば歯科技工士でなければ、歯科技工業務を行ってはならない。資格を持った歯科技工士が業務を独占しているのだ。この法的地位があり、法的に保護される利益なのだと我々は主張してきた。 しかし、一審判決は、それは違うよとした。歯科技工士の利益は一般的にはあるが、これはあくまで事実上の利益であって、法律上の利益じゃない、と裁判所は判断を下した。法律上の利益がない歯科技工士の立場は、一般的公益として、国民の安全、公衆衛生の保持を目的とするもので、個々の歯科技工士に対し、具体的な法律上の利益ではない。歯科技工業務を独占的に行う利益を保障したものとはいえない、と裁判所は理屈をつけた。今回の高裁の判決も基本的には、東京地裁の判決と同じである。結局、中身に入っていない入口論だ。 さらに、今回の判決が非常に不当なのは、我々は一審の主張に、新たな主張を加えた。それは何かというと、憲法上の平等である。一審の判決では、法律上の利益がないとされたので、また同じ判決を下される可能性が考えられたので、これにプラス憲法14条の主張を加えた。14条は法の基の平等だ。 つまり、日本の歯科技工士には、不平等、不利益な取扱いをされない地位があることを準備書面で主張した。「国から差別的扱いをされない」国内の歯科技工業務は非常に厳密な扱いで、制度を定め、罰則も定めて、歯科技工所への規制も強めている。国内では様々な規制を課している。 しかし、海外の歯科技工業務に対しては、規制がまったくない。これは不平等、不利益ではないか。国内の歯科技工士を不利益・不平等的地位に置かれない立場がある。それが法律的利益なのだと、憲法14条に基づいて主張した。これは、何も私の独創的主張ではなく、学説的な主張として出ているものだ。この主張に対する裁判所の判断が、まだなされていない。判決文の前段では、我々の主張の整理がなされているが、憲法14条に対する我々の主張はない。 つまり、我々の主張をきちんと取り上げていない。取り上げないために、憲法14条に判断もされていない。一審の「法律上の利益」が繰り替えされている。その意味で、判断の遺漏である。判決に重大な漏れがあったと、私は思っている。 何故、そうなったかはよく分からない。逃げたといえるのかどうか、分からない。いずれにしても、我々の主張に答え切れていない判決であった。その意味で、不当な判決であったと、言える。今後の対応として、上告するのかしないのか。 上告するとしたら、上告理由が求められる。憲法違反、憲法の解釈に誤りがある、ことが民法上では一つ上告理由となる。今回の判決が、憲法違反だとストレートに言えるのか、という問題だある。 また、上告受理申立制度がある。今までの最高裁の判例と異なる判決であるかどうか。 あるいは、法令の解釈に関する重要な事項を含むものがあると認められるもの。 実は、「法律上の確認の利益」についてのいくつかの判決が出ている。その最高裁の判決もはっきり確定されているものではなく、徐々に広げるようは最高裁判決が出ている。それは、水俣訴訟や原爆訴訟などの判決である。 つまり、解釈の幅を広げる方向の判決が出ている。憲法14条と歯科技工士法17条などを合体させた法的主張も、上告では考えられる。これらを今後、精査する必要がある。これまで裁判で風穴を開ける、という闘い方をしてきた。今後もそれを続けることが有益なのか。 あるいはもう少し幅の広い活動で、解決を目指していくことが有益なのか。それらを含めて判断をしていく必要がある。

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