専門的口腔ケアと多職種間の口腔ケア連携の課題

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2011 年 9 月 12 日全国保険医団体連合会1 口腔ケアについて  近年、高齢社会の中、口腔ケアは不顕性誤嚥、誤嚥性肺炎や口腔内常在菌、歯周病菌による末梢血管の閉塞を防止するのに有効との認識が広まっている。

「口腔ケア」という用語は、単なる歯磨き、歯磨き介助から、咀嚼・嚥下機能の回復、構音・会話障害の改善、そして歯科医師、歯科衛生士の専門的口腔ケアまでを含む概念として使われ、主に①口腔衛生状態の改善(看護師や施設職員による歯磨き介助などの日常的口腔清掃)、②口腔機能の向上(歯科衛生士、看護師、介護士、言語聴覚療法士など専門職種の関与によって行う摂食・嚥下機能の回復や構音障害の改善、食支援など)、③歯科疾患の医学的管理(歯科の診査・診断などを経て行われる専門的口腔ケア)など、主に3つの目的で行われている。2 医療・介護等での口腔ケアの状況  入院患者の死因の中で大きな要因を占める肺炎は、誤嚥性肺炎であるといわれ、徹底した口腔ケアによって入院患者や施設入居者の「発熱・誤嚥性肺炎」「窒息事故」の減少が検証されている。このため、最近では、病院、施設をはじめ、在宅でも口腔ケアや嚥下機能訓練が注目をされ、実践が始まっている。 急性期病院の入院患者やガン患者では、周術期の口腔衛生管理、呼吸器感染症の予防、口腔粘膜の保湿、慢性期病院では、摂食・嚥下障害のある入院患者の口腔清掃、誤嚥・誤飲の防止、舌苔の除去、義歯の清掃、食支援などが言語聴覚士、看護師の重要な業務の一つになりつつある。 歯科疾患を併発している患者には専門的口腔ケアが必要である。

これは歯科医師、歯科衛生士が行い、歯科医師の歯周病、う蝕、欠損、嚥下障害の診査・診断を経て、その指示のもとで医療器械・器具、薬品を用い、病態の改善や医学管理のために専門的口腔ケアが行われている。   この処置は軽微な侵襲や出血を伴う場合もあり、単なる口腔清掃や清拭や歯みがきではなく、口腔内常在菌や歯周病菌の減少を目的としている。 口腔内常在菌や歯周病菌は、口腔から誤嚥により肺へ入り込むばかりでなく、歯周ポケット等から血管内にも迷入し、末梢血管閉塞や脳血管閉塞、心筋梗塞、心内膜炎、ビュルガー氏病などを引き起こす一因に挙げられている。 寝たきりの高齢者では「歯がない、義歯で噛めない」などの咀嚼機能を改善すると、軟便、便秘、下痢、低栄養の改善や免疫力の向上、あるいは褥瘡の改善ができることが明らかになっている。 脳血管障害や認知症、パーキンソン氏病のほとんどの患者には、必ず摂食・咀嚼・嚥下機能障害がある。 阪神淡路大震災では震災関連死 922 名中最も多かったのが肺炎 223 名(24%)と報告されている。

その多くは誤嚥性肺炎ではないかと指摘もされ、今回の東日本大震災でも、高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐ上から、被災者の口腔ケアはとりわけ重視されなければならない課題となっている。3 口腔ケアの抱える課題  日本の高齢者の大半は歯科疾患を持っている。

歯科疾患をそのままにして、看護師や介護職員が口腔の清掃をやったとしても、その効果は上がりにくい。 口腔ケアを成功させるには、事前の口腔内の病態の把握と定期的な評価が欠かせない。 歯科医師や歯科衛生士の訪問診査・診療そして専門的口腔ケアを患者の最も近くにいる医師や看護師がコーディネートし、看護師や介護職員が日常的な口腔ケアを行えば、質の高い口腔ケアを患者や入居者に提供することが出来る。 歯科訪問診療は介護施設で比較的多く行われるようになっているが、病院、在宅では歯科疾患の病態が深刻な場合でも、訪問診療や専門的口腔ケアは、ほとんど行われていない。 また、歯科医師からの在宅支援歯科診療所の申請は極端に少なく、要介護者からの訪問診療の要請も少ない。

在宅歯科訪問診療を受けている要介護者は4%にも満たない。 高齢者や要介護者の退院時には、病院の医師、看護師が介護職員へ口腔ケアの方法を伝達し、歯科医師や歯科衛生士、訪問看護師には患者の病態や歯科治療の必要性について説明し、ケアマネジャーにはケアプラン作成に必要な情報を提供するなどのカンファレンスが必要だが、実際にはほとんど開催されていない。 これを解決するには、退院時カンファレンスを行うだけでなく、要介護の認定を受けた後に、歯科医師の診査、診断を受け、これをもってケアマネジャーがケアプランに組み込めるようにすれば、在宅での訪問診療と口腔ケアの普及を推進することができる。 会話・構音や咀嚼・摂食・嚥下障害のリハビリなどの口腔機能向上のための機能的口腔ケアは介護施設、通所リハ、慢性期病院、リハビリテーション病院で行われるようになったが、これを担当する言語聴覚士や歯科衛生士などのマンパワーが不足しているので、介護保険の「口腔機能向上加算」などの算定がほとんどされないままである。 介護職員が口腔衛生・口腔機能の改善方法を歯科医師からトレーニングを受け、入居者の口腔機能維持管理に懸命に取り組む施設が増えるには、介護報酬の大幅な改善抜きには実現できない。 歯科衛生士が、病院や介護施設などの施設で歯科衛生士法に定められた3つの役割(歯科予防処置、歯科診療補助、歯科保健指導)を発揮できるように条件の整備を行い、療養病床や介護老人保健施設等に、歯科に関わる管理責任者として歯科医師並びに歯科衛生士が配置されることが望まれる。

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