2013年9月23日 14:33
解剖学を学ぶ医療系専門学校生らを対象に徳島大学歯学部生の解剖実習を見学させる取り組みを、同学部の北村清一郎教授が15年にわたって続けている。
解剖実習が必須とされていない学生に、人体の仕組みを間近に見て知識を深めてもらうのが狙い。
県内外から見学に訪れた学生は1万288人に上り「教科書だけでは分からない解剖学の生きた知識が身に付く」と感謝されている。
大学・専門学校の看護師や助産師、理学療法士を養成する課程では、解剖学は学ぶが解剖実習はカリキュラムにない。
解剖実習には、解剖室などの設備のほか遺体の献体を受ける仕組みを整える必要があり、北村教授によると、医歯学科以外で人体の解剖実習を行っている大学・専門学校はない。
北村教授は「机上の勉強だけでは理解は浅いものになる。医歯学科以外の医療系学生にも解剖実習は有意義」と考え、1998年に解剖実習の見学受け入れを始めた。
徳島大で解剖実習見学を受け入れているのは北村教授だけで、教授によるとこれだけの受け入れ規模で15年間続けているのは全国でも少ない。
2012年度は、県内外の大学・専門学校の982人が見学。
約3時間かけて、学生や教員から説明を受けながら臓器や筋肉を観察したり実際に手に触れたりして人体の理解を深めている。
解剖実習の見学には、医療従事者としての心構えを養う役割もある。実習は、医学の発展のために無報酬で自らの体を提供する献体によって成り立つ。
見学する学生は解剖に先立ち、献体の意義について北村教授から講義を受けている。
01年から毎年、作業療法士などを目指す学生が見学実習している徳島健祥会福祉専門学校(徳島市国府町)の河野博史総括は「解剖見学を通じて献体者の真心に触れることで、医療に携わる覚悟が生まれる。医療人としての一歩を踏み出す上で欠かせない」。
北村教授は「解剖実習を歯学科生のためだけのものとするのではなく、多くの医療系学生に見学させることが献体者の意志にかなう。立派な地域の医療人を育てるため、今後も継続させたい」と話している。
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