咬合圧を均等化することが二次印象の大きな目的

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咬合圧を均等化することが二次印象の大きな目的

河邊臨床教室 第88 回定例講演会(中)

総義歯に要求される要素は、維持、支持、安定がある。それらを目指して、印象採得を行うが、印象に関する質問が出ているので、腰原先生に一次印象に関する所作並びに注意点をお答え願いたいと思う。 

<東京歯科大学腰原 好名誉教授の講演要旨>

要点だけを申し上げるが、まず、印象材の選び方であるが、流動性のよいものを選ぶ。また、粘膜との親和性よいものである。ユージノール系の印象材は避けた方がいい。次に親水性のある印象材を選ぶ。粘膜からは粘液が出てきるので、それを拒否するような印象材はよくない。近年、シリコン系の印象材にも親水性のあるもがあり、それは粘膜、軟組織の印象にいい。

また、窩洞部との圧力のバランスがとれた印象材がいい。歯科医師によっては、今日はこの患者には硬めの印象材を選ぶということもある。口唇、舌、頬によって印象材が解けたりして変形するので、硬めの印象材なら変形しないわけである。周りの軟組織の力に対して、適当な圧のバランスが取れることである。加圧をすると軟組織からの反発があるが、圧に対して戻ってくるまで硬化したら変形してしまう。硬化までの適当な時間が必要である。以上のようなことを念頭に、印象材を選択しなければならない。無歯顎では床の大きさと模型上の設計である。義歯安定を図ると酒井先生が述べていたが、いっぺんにやるには余程の名人でない限りよい印象も採れない。そこでそれぞれ、例えば総義歯作りでは、四つの印象を採るステップがある。まず、第一印象であり、研究用模型、診断用の模型、義歯設計用の模型、義歯床の範囲はこれくらいでいい、ということもある。顎提が非常良い場合は、第一印象が最終印象になることもある。それでだめなときには、二次印象、咬合印象となる。

<酒井会長の講演要旨>

診断研究用模型印象を見ながら、窩洞組織の状態や歯槽骨の状態など患者さんの口腔内を触診する。ここで各個トレーを用いるのである。明確な技工指示書を歯科医が書いているのか? 

<歯科技工士 戸田篤さんの講演要旨>

チーム医療の大切さは、17年間の河邊歯科勤務時代に学んだ。現在は院外歯科技工の立場であるので、患者さんと接触することはないので、歯科医師との間では、技工指示書や添付された患者さんの顔写真が重要である。アンケートのなかでは、明確な技工指示書を歯科医師からいただいてますか、という質問があった。歯科技工士の目から見ると、書いていただいているが、少し足りないところがある、という歯科技工士の声である。また、歯科技工士と歯科衛生士の接点は思った以上に少ない。院内であれば毎日、お互いが顔を合わせているが、院外技工では接点が少ない。我々院外歯科技工士は、患者さんと話をしたことも、患者さんの悩みを聞いたこともない。患者さんお容貌も知らない。

義歯装着後の笑顔も、歯科診療の場にいないと見ることができない。一方、歯科衛生士さんは、その場にいて患者さんのことを知る機会がある。逆にいうと我々歯科技工士たちは、歯科衛生士さんたちから情報を得たい、知りたいと思っている立場である。そこで、患者さんの写真を歯科衛生士さんが撮って、技工指示書に添付してもらえると助かるな、と私は思いる。我々は模型上で義歯の形を作ればいい、という仕事であるが、実際は患者さんを知ることによって、責任感とともに義歯が完成したときの喜びを味わえると思っている。また、模型印象を歯科衛生士が扱うのであれば、コミュニケーションが歯科衛生士ととれたらいいと思う。一次印象についてであるが、同じものはないのだということを歯科技工士は認識すべきである。どのような印象材を使うのか。各個トレーについても、無圧的トレーなのか、加圧的トレーなのか、あるいは部分加圧トレーなのかを確認し、対応できなければならない。既製のトレーと各個トレーの違いであるが、各個トレーはその患者さん特有のものであり、各個トレーはより精密で正確は印象を採るための道具だと思う。それは、印象材を含めて、歯科医師の技工指示がないと歯科技工士にはわからない。

<酒井会長の講演要旨>

二次印象とは顎提の状態により、無圧的印象か、あるいは加圧的印象なのか、さらに部分加圧印象がある。これから紹介する症例は、顎提並ぶに歯槽粘膜が良好なために、両顎とも無圧的印象とした。現実的には無圧にはできないが、その方法を用いた。そこで、二次印象の注意点を腰原先生お聞きしたい。

<腰原名誉教授の講演要旨>

二次印象は、人によっては精密印象としており、これで義歯を仕上げる場合が多いと思う。各個トレーを作り、義歯を作る目的は、咬合力、咬合圧に対して義歯に加わる圧力を分散させる。あるいは咬合圧を均等化することが、二次印象の大きな目的である。当然、各個トレーを作っているので、研究用模型で得られた咬合床の範囲が決まる。咬合圧は、印象材の流動性にヒントがある。同じ印象材でも、トレーの厚みが大きいと圧力が加わる。粘膜とトレーの間に間隙がないと、どのように流動性がある印象材を使用しても圧力が加わってしまう。その意味で言われているのは、スペーサーの量である。各個トレーと模型との間は、パラフィンワックス1枚、1.5ミリ位の量を必要とする。歯科医師は年中患者さんを診ているので、口腔内の状況が分かる。この分かることを模型を通して、歯科技工士さんどのように正確に伝えるかである。各個トレーの穴空けていたが、この目的は圧力を無圧に近い状態にする。圧力の調整が必要である。

(明日につづく)

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