医科2割、歯科3割の医療機関が手書きでレセプトを作成

カテゴリー
記事提供

© Dentwave.com

Q.オンライン請求の義務化って何ですか? A.レセプトをインターネット回線を用いて請求する方法に限定することです。

 レセプト請求の方法は、①手書きのものを提出、②コンピューターで作成し紙に印刷したものを提出、③コンピューターで作成したデータをCD-Rやフロッピーディスクなどの記録メディアで提出する−3通りがあります。 これに加え2007年4月から④インターネットなどの回線を使ってオンラインで請求する方法が加わりました。 この①②③④の方法を、2008年4月以降は、原則的に④の方法に限定し、それ以外は認めないというのが「オンラインの義務化」です。以後段階的に実施され、2011年4月以降は、ほとんどの医療機関に義務づけられます。

どんな問題があるの?

 問題点 患者さんの診療情報が漏れてしまう... 

 オンライン請求の場合、医療機関から審査支払機関に送られたデータは、審査後、保険者に送信されます。それと同時に中身が匿名化され、政府に情報提供されることになっています。 同じ電子情報として、氏名、住所などが登録されている住基ネットでは、インターネット上への流出など、情報漏洩事件が続発しています。 電子情報は紙情報と違って、大量収集や他の情報との関連付けが容易なことから、仮に漏れた場合の影響は計りしれません。もし、精神科や産科・婦人科の受診歴や病名が悪用されれば、犯罪につながってしまう恐れさえあります。

 問題点 町のお医者さんは「辞めるしかない」... 

 オンライン請求に対応するために必要な専用コンピュータの購入、オンライン接続の準備、入力できる職員の雇用や業者への委託、保守・運用に関わる費用はすべて医療機関の負担となります。 現在でも医科で2割、歯科で3割の医療機関が手書きでレセプトを作成しており、全国保険医団体連合会がアンケートを行った結果、1割を超える医師が「辞めて引退する」と答えています。 医師不足が叫ばれ、大きな社会問題となる中、地域医療を担うベテラン医師の引退に拍車をかける、オンライン請求の義務化は問題です。 また、今回の義務化は、国会での立法が必要な制度変更を省令改正で行うなど、手続き的にも法律による行政の原則違反に該当することが問題視されています。

 問題点 医療費の給付減らしに診療情報を利用?!... 

 オンライン請求で集められた患者さんの診療情報は、2011年度までに厚生労働省が全国規模で収集し、分析します。 一方、2008年4月から実施されている保険者による健診(特定健診)の情報も、国が全国的に収集するようです。そしてそれらを連携させて活用するとしています。 この活用の第一の目的は、国や保険者が負担する医療費の給付を減らすことです。 政府の規制改革会議では、国が集めた診療情報をもとに、健康保険が受けられる範囲を「標準的医療」として狭くし、その範囲からはずれる医療は患者さんの全額自己負担にする方向も示しています。同時に、そのうえで混合診療を全面的に解禁するよう要求しています。 つまり、健康保険による診療を制限して、患者さんの負担を増やす...あわせて民間保険市場を拡大しようという意図も見えます。 そうなると、日本の「健康保険で良い医療」が受けられるという制度が改悪され、国民は安心して医療を受けることができなくなってしまうのです。

 問題点 オンライン請求の義務化は誰にメリットがあるの?... 

①国や保険者が医療費の給付を減らすことができる。②標準的医療と保険外負担による混合診療を導入することで、民間保険の市場が拡大。③通信回線・機器が必要となるため、一部のIT業界に大きな利益をもたらす。 このように、国や保険者の負担軽減や一部の企業のメリットにつながることはあっても、患者さんや国民には自己負担が増える危険、情報が漏洩する危険、身近で必要な医療が受けられなくなる危険...デメリットばかりです。

記事提供

© Dentwave.com

この記事を見ている人がよく見ている記事

新着ピックアップ