保団連 さらなるプラス改定を行うよう求める

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2011 年 12 月 22 日 全国保険医団体連合会 会長   住江 憲勇小宮山洋子厚生労働大臣と安住淳財務大臣は、21 日の夜、2012 年度の診療報酬改定率について、薬価・材料価格を 1.375%引き下げる一方、診療報酬本体を 1.379%引き上げ(医科+1.55%、歯科+1.70%、調剤+0.46%)、総枠で 0.004%増の改定率とすることで合意した。改定幅をめぐっては、国庫負担・企業負担軽減を求める財務省や財界から診療報酬本体でのマイナス改定を求める声が広がる中で、保団連も参加するドクターズデモンストレーション 2011 や保険で良い歯科医療を求める取り組み、日医・日歯など医療関連 40 団体で組織する国民医療推進協議会など、多くの医療団体、医療従事者から、「医療崩壊を阻止するためには、診療報酬引き上げが必要」との声が大きく出された。こうした中で、民主党「歯科医療議員連盟」は、12 月8日に薬価引き下げ分も含めたネットでのプラス改定の実施を求める要望書を提出。また民主党「適切な医療費を考える議員連盟」は、12 月 14 日にネットで3%以上の引き上げを求める決議を採択した。12 月9日には、財務省が 2.32%の引き下げ(診療報酬本体約▲1%、薬価▲1.23%、医療材料▲0.09%)を厚生労働省に求めていたことから見れば、診療報酬本体を 1.55%(5500億円)引き上げるとともに、0.004%増であっても総枠でのプラス改定を決定したことは、不十分さはあるがこれまでの運動の成果であり、民主党「歯科医療議員連盟」、民主党「適切な医療費を考える議員連盟」をはじめ、診療報酬引き上げに賛同いただいた与野党国会議員に感謝するものである。しかし、小泉「構造改革」以来、2002 年,2004 年,2006 年,2008 年の4回連続のマイナス改定によって地域医療は瀕死の重傷に陥っており、2010 年改定を含めても 2000 年対比で累積 7.35%のマイナスとなっている。 2010 年改定では、0.19%の診療報酬引き上げによって一部の大病院にはカンフル剤としての効果があったものの、医科診療所の再診料引き下げ等によって、多くの医科・歯科診療所や有床診療所、中小病院にとっては実質的に5回連続のマイナス改定となった。 11 月2日発表の中医協医療経済実態調査でも、個人立を含む医科診療所全体の損益差額は、前回調査に比べて 10.3 万円減少。率にして8%も減っており、損益率も 12.5%から10.8%になっている。また、個人立の歯科診療所の損益差額も、前回調査の 120.2 万円に比べて 20.7 万円も減少しており、率にして 17.2%も減っている。医療経済実態調査は、極めて不十分な調査だが、その結果からも、すべての医科診療所と歯科診療所の医業経営の指標である損益差額が減額し、損益率が悪化している窮状が浮き彫りとなっている。  東日本大震災によって、東北地方ではさらに地域医療の崩壊が進んでいるが、東北以外の地域でも地域医療の崩壊がまだまだ進んでいる。 地域医療崩壊からの復旧・復興を図るためには、2012 年診療報酬改定において地域医療の担い手である医科・歯科診療所、有床診療所、中小病院に対する診療報酬を大幅に引き上げることが重要である。 そもそも、診療報酬引き上げは、医療機関の必要経費を補填するとともに、公的医療の範囲や質・量を規定し、医療の再生産に資するものだが、その役割は、それだけにとどまらない。平成 22 年版厚生労働白書では、『とりわけ、医療・介護分野については、経済波及効果及び雇用創出効果がある。このため、...成長と雇用の創出が期待される』ことを明らかにするとともに、『社会保障を持続可能なものにするとともに、その充実を図り、不安を取り除くことで、消費を促し、経済を活性化させることも期待できる』と明記している。なお、長期収載医薬品を薬価改定幅とは別に一定程度引き下げることが 21 日の薬価専門部会で了承されたが、10%の引き下げ(総枠で▲0.59%)とも言われており、これを加えれば実質改定率は総枠でマイナスとなってしまう。政権与党の民主党は、「民主党政策集INDEX2009 医療政策(詳細版)」において『累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけました。総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げていきます』と明記し、これを公約に掲げて政権についたのであり、政府と民主党には、この公約を実現する責務がある。また、前回改定では、急性期の入院医療に財源がシフトされ、地域の第一線医療を担う診療所、中小病院の多くが実質的にマイナス改定となった。急性期医療を含めた評価の向上、勤務医等の負担軽減・処遇改善が引き続き重要なことはいうまでもないが、東日本大震災の教訓からも、地域の第一線医療を担う医科・歯科診療所、中小病院の役割は、大変重要である。こうしたことから全国保険医団体連合会は、地域医療崩壊からの復旧・復興をはかり、経済を活性化させるためにも、地域の第一線医療を担う医科・歯科診療所、中小病院の報酬を引き上げるとともに、補正予算対応を含めて、さらなるプラス改定を行うよう求めるものである。
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