中国歯科医療研究会 国際医療交流へ (中)
日本アンチエイジング歯科学会の第1回中国歯科医療研究会が9月25日、東京・中央区日本橋の八重洲ホールで開かれた。
各講師が以下の内容で講演し、Q&Aのあと講師と参加者たちの名刺交換が行われた。
<中国の歯科医療と国際交流について>
田中健一さん(中国歯科医師免許取得)
私が2000年に北京へ行ったときに、1平米の土地を買うのに3万円であった。
現在は同じ土地が40万円となった。
「必ず上がるから買いなさい」と人から勧められたが、「上がるはずがない」と断ったが、判断が甘かったと思っている。
では、中国の医療について述べるが、中国では初めに値段交渉をしないとダメだ。
しかも、その場の即金払いである。
つまり医療費は先払いである。
1回救急車に乗ると2万円くらいかかる。
病院には1級、2級、3級のランクがある。
日本のように全国どこの病院へ行っても同じ、ということではない。
私は日本の医療制度は共産主義のだと海外で言っている。
また、医師の地位が相対的に低い。
専門医にならないと指名料が入らない制度だ。
医師は1つ星から4つ星までランクがある(医師、主治医師、副主任医師、主任医師)、ランクで治療費が違う。
中国では自分のランクを、一つでも上げるために切磋琢磨する。
日本では専門医になるインセンティブがない。
努力した分だけ報酬が出るのは、中国では当たりまえである。
私は中国では一番下の一つ星であり、大学を出た研修医の収入レベルだ。
免許は更新制であり、私は毎年9月になると、更新されるかどうかビクビクしている。
自分の免許は一生保証されていない。
また、雇用も毎年、更新制である。
昨年の評価に対して、今年の給与が決まり支払われる仕組である。
西洋医学、漢方医学、伝統治療などが混在する。
強いものはとことん勝つ、その意味で競争社会だ。
弱いものは徹底的に負けるという国だ。
私が勤めている北京天衛診療所では、一番高い給料の4つ星の医師と最低ランクのスタッフの給与の格差は1000倍である。
日本円で月給が1000万円の医師もいれば、最低は月給1万円だ。
指名料で3000万円〜5000万円(賄賂もある)の医師もいる。
これは医療収入であり、不動産に投資している医師は月の収入が億は下らない。
1億円として上と下の格差は1万倍となる。
地方へ行けば年収1万円の人が全国で2000万人いる。
私があくまで見たり、聞いたりした人口15億人の中国の人民の話である。
その15億の人のどこの面を切るかによって、話は違ってくる。
私はあくまで10年間滞在している北京の話をしている。
乗っている車は30万円の3輪車からBMW、ベンツ、ポルシェのオープンカーまである。
診療所の受付では見栄えがいいようにと、モデルを雇っている。
白衣を着ているが、医療の話は通じない。
医師指名料は医師に半分、病院に半分に分けられる。
指名できるのは、4つ星と3つ星の医師で、2つ星、一つ星は指名の対象にならない。
インプラント専門医がインプラント以外の治療をすると指名料は出ない。
有名病院の人気医師となると指名数は限られているので、前の晩から並びクーポン券(整理券)を手に入れる。
クーポン券はオクションとして売買の対象となる。
4つ星医師に診てほしいという要求は、爆発的に増えている。
富裕層は北京人口1300万人のうち、1000万元を超える人が50万人。
travel medicineは、風土病、潜水病、高山病を起こす際の対策で、普段我々には縁がない病気だ。
また、海外渡航時のワクチン接種。
障害をもった人の渡航。
全心疾患患者の渡航—酸素、透析、特別な薬の服用。
外国人の医療(保険、宗教、言語)をどうやればいいのか。
そのなかで、歯科はまだ途についたばかりの揺籃期である。
海外保険が認められるのか認められないのか。
アメリカのような歯科の日本とはまったく違う価格体系もある。
中国は毛沢東思想で、労働者と農民が中心になってきたので、医師の地位は低かった。
った。
医師は労働者、農民の奉仕する職業であるので相対的に低い地位から出発している。
専門医の制度を作ることによって、指名料が発生した。
病院には1級、2級、3級のランクがあるが、3級が一番よい。
上が3級の甲病院、ついで3級の乙病院とランクつけされている。
つまり全部で6ランクに病院は分けられている。
日本のように全国どこでも同じではない。
労働者は社長、部長、課長、平社員では保険が違う。
また、保険は社長は貢献度が高いので9割給付される。
平社員は貢献度が低いので6割給付である。
北京で保険に入っていれは、保険の適用は北京のみの適用である。
日本では薬は70%までであるが、中国はくすりが大事であると90%支給される。
医療費は日本のように全国統一ではなく、地域、病院、医師の余って異なる。
救急車は有料だ。
保険料は、雇用主10%、被保険者2%。
医療費は前払いである。
医学教育は、学校によって5年、6年、7年がある。
北京大学は8年教育である。
8年の学校を出ると二つ星をすぐにもらえる。
5年の学校は一つ星からのスタートだ。
中学校を出て徒弟制で2年学んで歯科医師になった人もいるが、病院の歯科には勤められない。
国家試験は2本建で易しい試験と難しい試験がある。
日本でもどうかと、国家試験の2本建を私が提案したが反響がなかった。
外国の人が、日本で歯科治療を受けるためにオファーを出したときに、課題はなにか?
日本が先鞭をつけた分野は何か?
日本の歯科治療の売りになる治療は何か?
アメリカでできる治療を日本でもできる、それでは魅力がないと私は思う。
それではインセンティブが何もない。
この技術に関しては、世界で評価されている治療であるのか?
つまり、この治療は日本で初めてやりました、とう治療があるのか?
また、保証をどこまでするのか?
アフターフォローの問題である。
北京から日本へ来るのに10万円を超えてしまう。
ホテル代も1万円を超えてしまう。
1年保証ではメリットがない。
5年、10年の保証ができるかどうかだ。
韓国やタイの価格と比較して治療費がどうかだ。
情報の開示では、学歴、専門医の峻別、症例数についての問題。
また、サテライトの構築—情報の共有、データ化であるが、出先機関をどこに置くかだ。
現地の出先機関の構築はタイなのか、中国の北京、上海、大連であるのか必要になる。
北京では、アメリカ、ドイツ、韓国、台湾、香港では国と組んで一つの出先機関を作っている。
また、患者のわがままで応えられるのかだ。
想定する仕組みとしては、現地での広報活動が必要だ。
日本の強みのアピールである。
わざわざ治療のために、日本まで来る必要性の認識のためだ。
事前診査、あなたはインプラントは無理ですという場合もあるので、自前かアウトソーシングかになるが、全身の既往、歯科の既往をチェツクできる仕組が必要だ。
渡航手続きでは、現地での手配をどうするのか。
現地でのコーディネート。
事後のフォロー、トラブル処理であるが、中国は日本より医療訴訟は多い。
論点であるが、経済学では"正の外部性"と言うそうだ。
travel medicineのメリットは、医療の国際化であり、日本の医療の売りが何であるかだ。
日本は国内だけで、医療を展開してきた。
医療を日本の商品をして外国に売り込む。
医療の国際化では、学ぶことが多くあると思う。
一方、"負の外部性"では医療の平等性がある、
(生活保護では月13万円+医療費がもらえる国である。
老齢年金が6万6000円)
一物二価の是非の問題であるが、日本人に1本15万円のインプラントを外国の人にいくらにするのかである。
外国人価格にするのか。
車は国籍に限らず、同じ値段のはずだ。
医療においてもそれができるかどうかだ。
韓国、中国などでの失敗症例を日本で受け入れられるかどうかだ。
また、大きな問題として、明確な役割分担に応じた利益の共有である。
旅行会社へどれくらい払うのかである。
9割歯科医院が取るようなことはありえない。
タイの医療機関の取り分は3分の1、3分の2が旅行会社や現地での広報。
それでも利幅があるので、やっていると述べていた。
私は病院で7割を取れるのなと思っていた。
若い世代は、将来に対する不安と、現状に対する不満がある。
それでも自分では動こうとしない。
我々は危機になると慌て、何時も諦める。
私は海外へ出たが常に苦労の現実で、髪の毛も抜けてしまった。
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