レセプト1件当たりの手数料は、約64円

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平成22年11月25日社会保険診療報酬支払基金「組織の統合、競争の促進についての定量的な検証」(平成22年11月25日厚生労働省保険局)に対する意見標記については、今後、内容を精査する必要があるものの、現時点で暫定的に問題点を列挙すると、次のとおり。なお、審査支払機関の統合又は競争の是非については、関係者間で厚生労働省検討会等を通じて成案を得るべきであり、「まな板の鯉」である支払基金としては、コメントを差し控えたい。1 基本的な問題点○ 47国保連合会を支払基金に統合する場合には、「全国規模の1法人」である「専門の審査支払機関」となるのに対し、支払基金を47国保連合会に統合する場合には、「都道府県単位の47法人」である「保険者団体」となる、という視点が欠落。【第7回資料6】○ 支払基金は、「全国規模の1法人」である「専門の審査支払機関」として、厚生労働省に代わり、① レセプト電算処理システムの開発及び運用② 電子点数表の作成及び公表③ 医薬品の適応外使用の事例に関する取扱いの検討④ 診療報酬改定を始めとする医療保険制度改正に係る円滑な対応など、医療保険制度に貢献する公的な役割を果たしている、という点を看過。【第7回資料6】2○ 支払基金は、「全国規模の1法人」である「専門の審査支払機関」として、レセプト電算処理システムの開発及び運用について、① 記録条件仕様② 標準仕様③ 基本マスター④ 医療機関マスター等を作成して国保中央会等にも提供する役割を果たしている、という点を看過。【第7回資料5】2 具体的な問題点1 職員定員の削減(1)組織を統合すると、管理部門を縮小することが可能である、と考えるならば、「全国規模の1法人」である「専門の審査支払機関」の方が、「都道府県単位の47法人」である「保険者団体」よりも、管理部門を縮小する余地は大きい、と考えなければ、論理的に矛盾するのではないか。(注)全国規模の1法人においては、都道府県単位の47法人と異なり、全国規模又はブロック単位で管理業務を集約することが可能。(2)医療保険制度に貢献する公的な役割については、47国保連合会を支払基金に統合する場合には、引き続き、支払基金で引き受けることが可能であるものの、支払基金を47国保連合会に統合する場合には、新たに、厚生労働省等で引き受けることが必要。そのための経費を勘案すべきではないか。(3)レセプト電算処理システムの開発及び運用については、47国保連合会を支払基金に統合する場合には、支払基金において、既存の組織体制を活用することが可能であるものの、支払基金を47国保連合会に統合する場合には、国保中央会等において、新規の組織体制を整備することが必要。そのための経費を勘案すべきではないか。32 コンピュータシステムの開発及び運用(1)被保険者の加入する保険者と被保険者の利用する医療機関とが同一の都道府県の圏域内に所在しないレセプトの割合については、被用者保険が地域保険を大幅に上回るところ。【第7回資料6】したがって、47国保連合会を支払基金に統合する場合には、1のコンピュータシステムを改修し、レセプト件数の増加という量的な問題に対応すれば十分。

これに対し、支払基金を47国保連合会に統合する場合には、47のコンピュータシステムを改修し、地域保険と異なる被用者保険の構造という質的な問題に対応することが必要。

そのための経費を勘案すべきではないか。(2)コンピュータシステムの機器更新のための経費の水準が支払基金と47国保連合会との間で大幅に異なるものと想定することは、不自然でないか。(3)レセプト電算処理システムのうち、支払基金及び国保中央会がそれぞれ独自に開発している部分は、画面審査システムに限定され、その他の部分については、支払基金が開発して国保中央会等にも提供しているところ。【第7回資料5】これについては、47国保連合会を支払基金に統合する場合には、支払基金における既存の業務を勘案すれば十分。

これに対し、支払基金を47国保連合会に統合する場合には、国保中央会等における新規の業務を勘案することが必要。そのための経費を勘案すべきではないか。(4)これらの点にかんがみると、コンピュータシステムの改修のために必要な経費の見込みを公正に比較しているかどうか、疑問。(5)なお、支払基金においては、コンピュータシステムを本部で一元的に開発して全支部で一斉に導入。このため、2年ごとの診療報酬改定を始めとする医療保険制度改正に際しても、その施行に間に合うよう、レセプト電算処理システムの基盤となるデータベース等を更新して国保中央会等にも提供するなど、短期間で円滑に対応することが可能。43 事務所の確保○ 試算の前提としては、47国保連合会を支払基金に統合する場合にも、審査支払業務以外の業務を実施する47国保連合会が存続。したがって、47国保連合会を支払基金に統合する場合には、国保連合会が審査支払業務以外の業務を実施する事務所の借上げのために必要な経費を見込むことは、不要でないか。4 審査の不合理な差異の解消○ 「全国規模の1法人」である支払基金は、全国規模の保険者が存在するという被用者保険の構造に対応し、地域間での審査の差異の見える化を通じて地域間での審査の不合理な差異の解消に取り組む基盤。【第7回資料6】(注)支払基金においては、「レセプト交換による支部間差異の調査」及び「レセプト交換による支部間差異の追加調査」を実施してその結果を公表。【第4回資料3−1及び第8回参考資料2−3】○ したがって、審査の格差の縮小について、支払基金を47国保連合会に統合する場合と47国保連合会を支払基金に統合する場合とを同様に見込むことは、不合理でないか。5【参考】47国保連合会の審査支払関連部分を支払基金に統合して全国規模の1法人とする場合の手数料の見込み(粗い試算)標記については、支払基金が47国保連合会のレセプト(後期高齢者医療制度分を含む。)を取り扱うものと仮定し、未定稿の「支払基金サービス向上計画」(案)に盛り込まれた平成27年度におけるレセプト件数の見込み及び事務費収入で賄われる支出に係るコスト構造の見込みを基礎として粗く試算すると、次のとおりである。1 レセプト件数○ 平成21年度実績では、47国保連合会のレセプト件数(併用分を除く。)(935,160千件)は、支払基金のレセプト件数(併用分を除く。)(805,440千件)の約1.16倍となっている。○ このため、レセプト件数(906,344千件)については、約2.16倍に相当する約1,958百万件と仮定する。2 経常的なコスト(1) 審査業務分○ 審査業務分のコスト(54,861百万円)については、レセプト件数に応じて増減する部分のほか、レセプト件数にかかわらずおおむね一定となる部分も想定される。○ このため、支払基金の審査委員定数(4,479人)に47国保連合会の審査委員定数(3,497人)を加えると、審査委員定数が約1.78倍に相当する7,976人となることにかんがみ、審査業務分のコストについては、約1.78倍に相当する約977億円と仮定する。6(2) 請求支払業務分○ 請求支払業務分のコスト(10,719百万円)については、審査業務分のコストと同様に、レセプト件数に応じて増減する部分のほか、レセプト件数にかかわらずおおむね一定となる部分も想定される。○ このため、請求支払業務分のコストについては、審査業務分のコストと同様に、約1.78倍に相当する約191億円と仮定する。(3) 管理業務分○ 管理業務分のコスト(6,931百万円)については、レセプト件数にかかわらずおおむね一定となるものと想定される。○ このため、管理業務分のコストについては、おおむね同額の約69億円と仮定する。(4) 合計○ 審査業務分、請求支払業務分及び管理業務分を合計すると、経常的なコストは、年間で約1,237億円と見込まれる。3 一時的なコスト○ 支払基金が47国保連合会のレセプトを取り扱う初年度に向けては、サーバの増強、市町村等に対して診療報酬を請求するためのプログラムの改修など、コンピュータシステムの開発が必要となる。○ そのために必要な経費は、約100億円と概算される。○ これを5年間で均等に償還するものと仮定すると、一時的なコストは、年間で約20億円と見込まれる。(注)そのほか、事務所の改修又は移転に必要な経費等も想定されるが、これらを見込むことは、困難。4 レセプト1件当たりの手数料の見込み経常的なコストと一時的なコストとの合計額をレセプト件数で除すると、レセプト1件当たりの手数料は、約64円と見込まれる。

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