スタディーグループ紹介 「横浜歯科臨床座談会」

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「我が国の歯科界で最古のスタディーグループ」

 

"食事指導をやれば、歯科に広がりがある"

 

丸森英史代表に聞く

 

昭和14年に発足した横浜歯科臨床座談会は平成23年7月の例会で621回を数えた。

我が国で最も古いスタディーグループと思われる。

代表の丸森英史さん(丸森歯科医院・横浜市中区住吉町)に取材した。

— スタディーグループとしては、一番古いのですね?

丸森 そのようですね。

 横浜歯科臨床座談会は昭和14年以前からあったのですが、どこかで線引きをすべきだと創始者の榊原勇吉さんがその返(昭和14年)でいいだろうと言ったので発足年としたそうです。

— 横浜歯科臨床座談会の設立の経緯について

丸森 一番初めは歯科器材などの勉強会で、歯科材料や器材の使い方のをきちんと学ぼうと歯科業者(メーカー)から話を聞き、試したりしていました。

それからしばらくして、歯科大学の先生を呼んで色々な歯科医療についてのデモンストレーションをしていただきました。

関根永滋先生(東京歯科大学教授、東京歯大学長:1908〜1976)は東京歯科大学の歯科保存学を創設された方ですが、榊原勇吉先生の診療所で関根先生から臨床実習を受けました。

さすがの関根先生も治療を人に見せることは、それまではなかったので、手が震えていたそうです。

— その後の経緯について

丸森 榊原勇吉先生の子息の榊原悠紀田郎先生(元愛知学院歯学部教授、平成20年6月10日に逝去)が2代目代表となり、私の父丸森賢二(昭和41年代表に)が3代目代表で、武居秀昭先生、今村嘉男先生と受け継がれ、そして、平成2年から私が(丸森英史)が代表を務めいます。

— 会の目的について

丸森 会の目的は「自分の臨床を向上させる」ことです。

そのために会員が症例報告し、真摯にディスカッションすることが活動の柱になっています。

特異な症例報告だけでなく、日々の臨床観察や工夫、臨床での問題発見、経過報告が求められます。

— 会員数は

丸森 100名ほどです。

歯科医師、勤務医を含め、歯科衛生士、歯科技工士も含まれています。

門戸を開放していますので、格別入会資格もありませんので、推薦人もいらず、どなたでも会に参加できます。

興味あるなら、どうぞいらしてくださいという姿勢です。

唯一の資格は会費を払ってくださいです。

— 会の特徴は

丸森 会の目的と同じで、「自分の臨床を向上させる」ことで、基本的にためになる話を聞きに来るより、自分の症例を発表することです。

実質的に勉強したい人が来るので、歯科衛生士さんは、自分の指導例を発表して、みんなの意見を聞く。

発表をした人が一番、得をする会です。

発表のためにまとめることも大変だし、人の意見を聞いて自分の欠点も見えてくる。

自分でいいと思っていたことが、人からダメと否定されることもあります。

あるいは、気付くかなかっことに気付き、自分の臨床のステップアップとなります。

それが会の主旨です。

1人40分発表し、あとの20分でディスカッショウをしています。

— どのような発表が多いですか?

丸森 エンドの症例が多いですね。

あとは補綴関係です。

また、ペリオの発表では歯科衛生士さんも関係しますから、むし歯予防研究会でやっています。

歯科医師と歯科衛生士が一緒に発表する場合もあります。

歯科医師は今、元気がないので、むし歯予防研究会の方が隆盛です。

むし歯予防研究会では、歯科医師は忙しいと言って、症例を出す数が減っています。

例会は水曜日の午後6時から9時まですが、午後6時に例会に来るためには、5時ごろ家をでなければなりません。

歯科衛生士さんと歯科診療所を5時に出るためには、歯科診療を4時に終わりにしなければなりません。

今、世間は午後6時から患者さんが来るというパターンが多くなっていますので、月1回の例会ですが、それが難しくなっています。

第2水曜日がむし歯予防研究会、第4水曜日が横浜歯科臨床座談会です。

— 分科会があるのですが、どのような会ですか?

丸森 今、一番分科で活気があるのは、食事指導勉強会です。

20年以上開いてきましたが、2011年5月で100回となりました。

初めは私たち自身も半信半疑だったのですが、食事と歯肉のかかわりも、多くの症例を経験することで今では確信をもって「食事が変われば歯肉が変わる」と発表できるまでになりました。

— 食事指導勉強会には、どのような経緯があるのですか?

丸森 私の父の丸森賢二が、「むし歯予防は歯ブラシだけではない。育児に根ざしたむし歯予防にスタートがある、と指摘し実践してきました。

3歳までに甘いもの漬けにしなければ、あとの口腔管理は本当に楽だ。その中で上手にブラッシングをすれば、歯でそんなに苦労はしないはずだと指導をしていました。

ところが、親が子どもたちをみんな甘いもの漬けにしてしまっている。

むし歯は歯の病気なのですが、結局は食事の問題なのです。

食生活をちょっと踏み外して、色々な問題を引き起こしています。

30年ほど前に、むし歯予防研究会では、むし歯はできる子は、家庭生活に問題があるので、そこを是正しなければならない、と提唱してきました。

むし歯予防だけではなく、歯周病についても同じであり、食生活の習慣に起因しています。

これは子ども歯周病ばかりではなく、大人の歯周病にも対応できる問題です。

甘くて、脂っこいものは美味しいので、多くの人は好んで食べています。

そのために歯垢が溜まりやすくなります。

食事指導勉強会は100例会を記念して、その成果やノウハウを来年、2月発表します。

500名くらい入るホールを借りて開催します。

http://www.shokuji-shido.com/

— 今後の課題は?

丸森 食事指導に尽きます。

歯科界が生きる道は、これしかないと思っています。

食事指導をやれば、歯科に広がりがあると思っています。

歯科疾患も生活習慣病です。

ストレスの解消、運動療法もありますが、食習慣の改善が基本だと思います。

歯科医師と歯科衛生士と連携して、食事指導の価値を如何に患者さんに伝えていくかです。

具体的なノウハウをみんなで共有していくことです。

色々な人たちが食事指導の価値を共有していけば、色々な知恵や技術も生まれてくると思います。

— 歯科界全体の底上げですね

丸森 そうです。

歯科の未来がここにあります。

限りない深い広いがりを感じています。

つまり、歯科医療の重要性を食事指導で訴えることができると確信しています。

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