かみ合わせを維持 人間のアルツハイマー病との関係

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歯が認知症を抑制 奥羽大の赤川学長ら解明

福島民報

奥歯のないマウスは、記憶力が低下するなどアルツハイマー病の症状が悪化しやすいとの実験結果を広島大や名古屋市立大、本県の奥羽大のチームがまとめ、3日、発表した。

研究に携わった奥羽大の赤川安正学長(63)らによると、人間の場合でも認知症患者の歯の喪失を防げば、症状の進行を抑えられる可能性があるという。

こうした実験は世界で初めてで、脳科学の英国誌「ビヘイビラル ブレイン リサーチ」の9月1日号に掲載される。

実験には、人工的にアルツハイマー病を必ず発症するようにした特別なマウスを使った。

左右の臼歯(奥歯)を抜き、かみ合わせをなくしたマウス(A群)と、臼歯を抜かず、かみ合わせを維持したマウス(B群)の2つに分け、抜歯から4カ月後の学習・記憶能力の変化を比較した。

この結果、かみ合わせを維持したB群の全てのマウスは能力に変化がなかった。

一方、かみ合わせをなくしたA群は、10匹のうち6匹で能力の低下が見られた。

さらに詳しく調べると、能力が低下したマウスは、脳で記憶をつかさどる海馬という部位の神経細胞の数が、変化のなかったマウスより少なくなり、細胞の大きさ(面積)も小さくなっていた。

ただ、チームは当初、歯を失うことでアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβタンパクが増加し、神経細胞が少なくなる、との仮説を立てていた。しかし、実際には能力が低下したマウスと、そうでないマウスのタンパク量に目立った差はなかった。今後、さらに研究を続ける。

アルツハイマー病をめぐっては、歯を失うことで発病のリスクが2.8倍高くなるとの疫学調査があり、歯の有無と病気に密接な関係があることが知られている。ただ、その仕組みは分かっていなかった。アルツハイマー病になるマウスを使った今回のような実験は世界でも例がないという。

奥羽大の赤川学長は、歯や顎が失われた場合に入れ歯やインプラントなどで補う「歯科補綴(ほてつ)学」が専門。

広島大に在籍していた6年前から、広島大病院の大上博史歯科診療医、アルツハイマー病の基礎研究を行っている名古屋市立大の道川誠教授らと研究を進めてきた。

赤川学長は「奥羽大の学生も加えながら、研究を続けていく。将来的には、かみ合わせを維持することが、人間のアルツハイマー病とどう関わるのかも突き止めたい」と話している。

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臼歯失いアルツハイマー悪化=発症に別原因か、マウス実験—広島大など

時事通信 7月4日(木)0時20分配信

臼歯を失ってかみ合わせが悪くなると、神経細胞の減少などが起きてアルツハイマー病の症状が悪化することを、広島大などの研究チームが3日までにマウスを使った実験で突き止めた。論文は英専門誌に掲載される。

歯を失うとアルツハイマー病になる可能性が高まることは知られていたが、脳にどんな影響を与えるかは詳しく分かっていなかった。

広島大病院の大上博史歯科医師らは、アルツハイマー病のマウスを使い、臼歯を抜いたグループと、残したグループで学習・記憶能力を比較。臼歯を残したグループは7匹すべてが4カ月後も学習内容を記憶していたが、抜歯した10匹中6匹は記憶をなくしていた。

それぞれの脳を調べたところ、アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質アミロイドベータ(Aβ)の沈着量に差はなく、記憶を担う海馬と呼ばれる部分の神経細胞は、抜歯グループだけが減少していた。

また、抜歯グループで記憶を維持していた4匹と、維持しなかった6匹を比べたところ、Aβの沈着量と海馬の神経細胞の数に差は見られなかったが、6匹は神経細胞の面積が大きく減っていた。

いずれの実験でもAβの沈着量に差がなかったことから、大上さんは「Aβの増加がアルツハイマー病を進行させるという従来の説と違う仕組みがあるのではないか」と指摘。「発症前から歯を失うことを避ければ、認知症予防にも役立つだろう」と話している。 

研究チームには広島大のほか、奥羽大や名古屋市立大の研究者も参加している。

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