【争点】 O歯科医師にカルテ開示義務違反があるか

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【概要】

本件は,O歯科医師が開設するH歯科クリニックでインプラント治療を受けたA(当時45歳男性)が,O歯科医師に従前の診療経過に関する説明およびAのカルテの開示を求めたにも関わらず,O歯科医師がこれを拒否したと主張して,O歯科医師に対し,診療契約の債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を求めたところ,慰謝料として20万円が認定された事案である。

キーワード: インプラント治療,カルテ開示義務,カルテ開示手続,証拠保全判決日:東京地裁平成23年1月27日判決

【争点】

O歯科医師にカルテ開示義務違反があるか

【裁判所の判断】

Aは,H歯科クリニックにおいて,インプラント体の埋入及びインプラント二次手術を受けた後,手術部位から出血し,縫合処置を受けることを余儀なくされるなどしたため,O歯科医師に対する信頼を失い,平成21年2月9日以降,H歯科クリニックへの通院を中止し,同年4月6日には,O歯科医師に対し,口頭で,診療経過の説明及びカルテの開示を請求するに至ったものと認められる。

以上のような経緯に照らせば,Aには,O歯科医師の診療行為の適否や,他の歯科医院に転院することの要否について検討するため,O歯科医師から診療経過の説明及びカルテの開示を受けることを必要とする相当な理由があったものと認められる。

したがって,O歯科医師は,上記のような状況の下では,診療経過に伴う付随義務あるいは診療を実施する医師として負担する信義則上の義務として,特段の支障がない限り,診療経過の説明及びカルテの開示をすべき義務を負っていたというべきである。

しかるに,O歯科医師は,本件訴訟が提起されるまで,このような義務を何ら果たしていなかったのであるから,このような義務違反について債務不履行責任ないし不法行為責任を負うものと解するのが相当である。

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